柳谷智宣のAI ウォッチ!
「Claude Cowork」で面倒な手作業から解放されよう! PCの中のファイルを直接触るAIエージェントの活用術
想像以上に何でもしてくれるAIの“同僚”[前編]
2026年8月18日 09:00
「Claude Cowork」は、質問に答えるだけでなく、ファイルを読み、情報を整理し、計算や調査を行い、ExcelやPowerPointなどの成果物を完成させるところまで引き受けてくれるAIエージェント機能だ。
2026年1月12日にリサーチプレビューとして登場し、4月9日にはすべての有料プランで一般提供が始まった。さらに7月7日には、従来のデスクトップ版に加えてWeb版とモバイル版のベータ提供も始まっている。
これまでもチャットAIに「決算の領収書はどう整理すればよい?」と聞けば、整理方法を文章で教えてくれた。しかし、領収書を1枚ずつ読み取り、Excelへ転記し、集計式を設定し、確認が必要な行を色分けする作業は人間(ユーザー)に残ったままだ。回答をもらった時点では、仕事はまだ1ミリも進んでいない。
その点、Coworkは実際のファイルを直接操作できる。「このフォルダーの領収書を読み取り、決算準備用のExcelを作って」と、仕事そのものを渡せるのだ。1月のローンチからずっと触ってきているが、7月に決算のまとめに使ってみて、その便利さに驚かされた。今回は「Claude Cowork」の活用術を紹介する。
AIが自分のPCの中のファイルを直接触るのがCoworkの本領
Claude Coworkは、開発者向けAIエージェント「Claude Code」と同じエージェント型の仕組みを、ターミナルを使わない一般ユーザー向けに提供したものだ。プログラミングの知識はもちろん、黒い画面にコマンドを打ち込む作業も必要ない。
通常のチャットでは、ユーザーが質問を入力してAIが回答を返すというやり取りを繰り返す。一方のCoworkでは、完成させたいものを伝えるのが特徴だ。Coworkは依頼を分析して作業計画を立て、必要に応じて複数のサブタスクへ分割し、コードやコマンドを実行しながら仕事を進めていく。規模の大きい作業では、複数のサブエージェントを並行して走らせることもある。
Coworkから返ってくるのは、数式の入ったExcelブック、編集可能なPowerPoint資料、書式を整えた文書、Webブラウザーで開けるHTMLといった成果物そのものだ。手順を教わっても実行するのは自分だが、ファイルが返ってくれば、残る仕事は中身のチェックだけになる。この差は想像するより大きい。
そして、Coworkがほかのチャットサービスと決定的に違うのが、自分のPCの中にあるファイルをAIが直接読み書きできる点だ。
ブラウザーの画面へ1枚ずつアップロードし、返ってきたテキストをコピーして手元のExcelへ貼り直す、という手間が不要になる。スキャンした領収書をまとめて保存したフォルダーを指定するだけで、集計済みのXLSXファイルを作成できるのだ。
作業する場所がクラウドなのか、ローカルなのかはしっかりと理解しておく必要がある。
現在のCoworkは、既定でAnthropicのサーバー上にある隔離環境の中で動く。リモートセッションと呼ばれる方式で、AIが計画を立てる処理も、コードやシェルコマンドの実行も、すべてクラウド側で進むようになっている。隔離環境はセッションごとに作られて終了時に破棄されるため、ほかのセッションや別の組織と状態を共有することはない。
また、セッションと作業用のファイルはClaudeアカウントへ保存されるので、デスクトップ版で始めたタスクをスマートフォンから開いて進捗を確認したり、途中で指示を追加したりできる。Google ドライブやGmail、Slackなど、コネクター経由のクラウドサービスだけで完結する仕事なら、ノートPCを閉じても処理は続行される。定期実行の「スケジュール済みタスク」も、PCを起動しておく必要はない。
問題は、手元のPCの中身にはクラウドから直接手が届かないことだ。
ここを橋渡しするのがデスクトップアプリの「Claude Desktop」となる。クラウド側で動いているCoworkが手元のファイルを必要とすると、そのPCのClaude Desktopに読み書きの依頼が飛ぶ。アクセスできる範囲は、ユーザーがあらかじめ接続を許可したフォルダーの中だけだ。
つまり、Web版やモバイル版だけでできるのは、クラウド上のデータを使う仕事に限られる。
ローカルファイルの読み書きに加え、Chromeを操作させる機能、画面を見ながらアプリを直接クリックする「コンピュータ使用(Computer Use)」、リアルタイムに動くライブアーティファクト、ローカルのMCPサーバーを含むプラグインは、いずれもそのPCでClaude Desktopが起動していないと実行できない。アプリを閉じたり、PCがネットワークから切れたりすると、セッション自体は動き続けるものの、ローカルファイルにアクセスする工程だけが止まってしまうのだ。
利用を始める手順そのものは簡単だ。
デスクトップ版でもWeb版でも、メッセージ入力欄のモードセレクターで[Cowork]を選び、実行してほしい仕事を入力するだけでよい。通常の会話に戻したいときは[チャット]を選ぼう。チャットとCoworkは同じホーム画面を共有しているので、切り替えのために別のアプリを開く必要はない。
ローカルファイルを使う場合は、デスクトップ版の「Claude Desktop」でアクセスを許可するフォルダーを追加する。この追加操作はデスクトップ版でのみ行え、Web版やモバイル版の画面からは登録できない。
ここで注意が必要なのは、便利そうだからと、デスクトップ全体やドキュメントフォルダー全体を指定してはいけないということだ。
Cowork専用の作業フォルダーを作り、処理したいファイルのコピーだけを入れるのが安全だ。今回は、決算作業をするので「決算2026年」というフォルダーを用意した。Coworkは許可されたフォルダー内のファイルを作成、変更、移動できるので、重要なデータはバックアップしてから渡すと安心できる。
ただし誤解しやすいのが、手元のファイルを扱うのだから内容はPCの外へ出ない、と思ってしまうことだ。
Coworkの頭脳にあたるモデルはクラウド上で動くため、Claude Desktopが読み出したファイルの中身は、処理のためにAnthropicのサーバーへ送られる。フォルダーへの接続を許可する操作は、そのフォルダーの中身をAIへ渡す操作だと考えた方がよい。機密性の高い書類を扱うときは、この前提で範囲を決めよう。フォルダーを追加するときに表示される[許可][常に許可]は、そのフォルダーへ立ち入ってよいかを決める設定になる。
これとは別に、立ち入りを許可した後の個々の操作をどこまで自動で進めさせるかを決める設定もある。ファイルの書き込みや外部サービスの操作を実行する前に確認を挟むかどうかで[手動で承認][自動承認][すべての承認をスキップ]の3種類から選ぶ。いずれもチャットボックスのモードセレクターからいつでも変更できる。
ちなみに「自動承認」は、読み取りツールは承認され、書き込みツールはClaudeが判断するハイブリッドな設定となっており、便利だがPro/Maxプランのみでしか利用できない。
「手動で承認」では、ファイルの書き込みや外部サービスの操作などを行う前にCoworkが停止し、ユーザーへ許可を求める。「自動承認」では、Cowork自身が操作ごとに安全性を確認し、問題がないと判断したものを進める。ただし、この安全チェックを挟む分だけ利用枠を多く消費する。「すべての承認をスキップ」を選ぶと、自動的な安全確認も行われなくなる。
なお、ファイルを完全に削除する場面では、どのモードでも必ず許可を求める「削除保護」が働く。新しいフォルダーへのアクセス許可や許可済みフォルダー内のファイル削除、スケジュール済みタスクの作成といった操作も、自動承認では通らず、必ずユーザーへ確認が来る。
新しい仕事を試すときや、メール送信、顧客情報、重要なファイルを扱うとき、お金に関係する作業では「手動で承認」を選ぶ方がよいだろう。処理が途中で止まるのは面倒だが、Coworkは現実のファイルやサービスを操作できる。速さよりも、意図しない処理をその場で止められることの方が重要だ。
そして、もう1つ注意したいのが利用枠だ。
Coworkは、ファイルを何度も読み、コードを実行し、必要に応じて処理をやり直すため、通常のチャットより利用枠を消費しやすい。しかも、チャットや「Claude Code」と同じ枠を分け合っている。単純な質問や文章の推敲は通常のチャットで済ませ、複数工程を自律的に進めてほしい仕事だけをCoworkへ渡すのが現実的な使い分けとなる。
領収書を読み込ませたら決算準備の大半が片付いた
では、実際に使ってみよう。
筆者は経理作業が大の苦手。もちろん税理士には依頼しているが、最低限の情報はこちらで整理して渡す必要がある。先日、会社の決算作業があったので、ここぞとばかりにCoworkに頼んでみることにした。
まずは紙の領収書のスキャンだ。これは、定番ドキュメントスキャナーの「ScanSnap」を利用して一気に取り込む。ここでは特にOCR処理などはしなくてよい。なお、通常、一度に取り込んだデータは1つのPDFにまとまるが、今回は1枚ずつ別のPDFファイルで保存する設定にした。紙の領収書だけで約400枚あったが、作業時間は20分ほどだった。
続いて、Webから経費となるデータをダウンロードする。例えば、Amazonで購入した商品の領収書や、クレジットカードの履歴だ。
クレジットカードやネットバンクによっては、一気にダウンロードできることもあるが、1商品ずつや1カ月ずつ、ちまちまとダウンロードしなければならないこともある。特にAmazonは1回の買い物ごとに、印刷機能でPDFにする必要がある。これもCoworkに任せてしまえばよい。
「Claude in Chrome」をインストールし、Claudeのコネクターを有効にした状態で「ビューカードの利用履歴CSV、2025年7月~2026年7月の13カ月分をダウンロードして」や「Amazonにログインし、2025年7月~2026年7月に購入した商品の領収書PDFをダウンロードし、『領収書』フォルダーに1つずつ保存してください」と入力してみよう。すると、Coworkがブラウザーを操作し、自動でデータを収集してくれる。ただし、Anthropicは、金銭や個人情報を扱うサイトでのブラウザー操作を推奨していない。カード会社やネットバンクのサイトを扱うときは「手動で承認」に切り替え、画面を見ながら進めたい。
領収書が集まったら、Excelにまとめてもらおう。その際も「まとめて」ではなく、具体的にどうするのか、イレギュラーがあったらどうするのかを指定すること。この作業指示は手を抜いてはいけないところだ。
今回は、Excelの項目を指定し、処理できたファイルは「処理済み」フォルダーに移動することにした。そうすれば、フォルダーに残ったファイルは未処理なので、それだけ手動対応すればよいということになる。もちろん、掲載画像はダミーデータを使った仮想の決算資料だ。
「領収書」フォルダーの領収書を読み込み、日付、支払先、摘要、勘定科目、金額、支払元、証憑(ファイル名、ページ数)、備考を抽出してください。結果を「2026年決算_経費売上.xlsx」へまとめてください。重複や経費ではない可能性がある書類は備考に要確認と記載して。処理したファイルは「処理済み」フォルダーに移動してください
日本の領収書はサイズもフォーマットもばらばらだ。しかし、Claudeのマルチモーダル機能は凄い。領収書が少々くしゃくしゃになっていようが、印字がかすれていようが、何なら手書きでも、ほぼ完璧に認識してくれる。従来のOCRとはけた違いの精度だ。
スキャン時に問題があったファイルは残してくれるので個別に確認する。どこをチェックすればよいのかは指示してくれるので対応も簡単だ。また、スキャンはできたが勘定科目がわからないもの、本当に経費かどうか怪しいものにも注意書きを付けてくれるので、Excel上でチェックしていけばよい。少々の手間は残るが、手入力するのと比べれば圧倒的な時短になった。これは快適すぎる。
売上も、請求書や銀行のデータを収集させ、分析させ、決算用のデータを作成できる。発行した請求書と銀行の履歴を突き合わせることも可能だ。売上なのかわからない入金に関してはきちんと質問してくれるので、ミスも防げる。優秀すぎて痺れる。
次は、売上フォルダーの情報から、「売上」シートを作成してください。こちらも同じく、不明点は確認できるようにしておいてください。
最後に「決算資料のためのシートを作成し、情報をまとめてください」と指示すれば完了だ。これで、だいたいの利益や次の税金などを把握することができる。
なお、ここまでの数字はAIが読み取って整理したものだ。
文字の読み違いや勘定科目の判断ミスがまったく起きないとは限らないし、何を経費として計上できるかは事業の内容によっても変わる。出てきた表はあくまで下ごしらえと考え、最終的な確認は人間が行いたい。税理士に依頼しているなら、原本と一緒に渡して目を通してもらい、自分で申告するなら金額の大きい項目と要確認と記載された行だけでも、元の領収書と突き合わせておくと安心できる。
実際、Coworkがまとめた表を税理士に送ったところ、5カ所ほど質問が来ており、最終的な決算表の数字は少しずれていた。「AIがあれば税理士は要らないかも」と考えるのは時期尚早なので注意することだ。
とはいえ、準備さえ整えてしまえば、ドキュメントスキャナーで紙をまとめて読み取り、あとはCoworkへ処理を頼むだけで決算準備の大部分が終わるのはうれしいところ。紙の山を前にして手が止まることも、Excelへ何時間も転記し続けることもなくなった。従来はずるずると1週間くらい税理士に迷惑をかけながらメールのラリーをするところが、1日で作業が完了してしまった。決算時期は憂鬱だったが、もうそんなことはなくなりそう。これだけでも、生成AIの恩恵はプライスレスだ。
皆さんにもこの解放感と新時代の到来を体感してほしい。
人間の役割は、すべてのファイルを自分で開いて転記する作業者から、AIへ仕事を割り振って結果を確認する責任者へと変わりつつある。試しに、嫌いなタスクをCoworkにお願いしてみることをおすすめする。パソコン作業であれば、想像以上に何でもしてくれるので驚くこと請け合いだ。
著者プロフィール:柳谷 智宣
IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。
・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/


















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