柳谷智宣のAI ウォッチ!
「GPT-6 Astra」に3Dアプリ制作、Excel操作を任せたら「最後までやりきる力」がうらやましくなった
ユーザーに寄り添い、何でもできる「GPT-6 Astra」のつかいかた[特別編]
2026年9月17日 09:00
現地時間2026年9月3日、OpenAIが新モデル「GPT-6 Astra」を発表し、注目を集めている。コーディングやPC操作、調査などを組み合わせ、複数工程のタスクを最後まで進める能力を強化したモデルだ。文章を生成するだけでなく、必要な情報を集め、ファイルを作り、実際にアプリを操作するといったところまで任せることができる。
今回はAstraを使い、Webブラウザーで遊べる3D脱出ゲームや、実在する家具の寸法を調べて配置できる3D家具配置アプリを作ってもらった。さらに、手元のPCでExcelを直接操作させ、600件の受注データをルールに従って処理する高度な課題にも挑戦してみた。その実力のほどはいかに。
通常チャットでは「6 Pro」、Workでは「GPT-6 Astra」と表示される
「GPT-6 Astra」は有料プランで利用できる。ただし、Plusでは「Work」と「Codex」が対象で、通常のチャット画面からは選択できない。個人ユーザーが普段のチャットでもAstraを使いたい場合は、Proプランが必要となり、月額100米ドルと200米ドルのどちらでも利用できる。(なお、執筆現在、200米ドルプランは新規受付を一時停止している)
筆者はProプランを契約している。さっそく通常のチャットで試そうとしたところ、少し戸惑った。モデルの一覧を見ても「GPT-6 Astra」という名前が見当たらないのだ。
筆者の環境では、入力欄にある[思考量]を開くと[6 Pro]と表示された。通常チャットでは、この「GPT-6 Pro」にAstraが使われている。同じAstraでも画面によって表示名が異なるのは少々わかりにくい。
筆者も普段の原稿作成や調査で「6 Pro」を使ってみたが、従来のモデルよりもじっくり考えていることが体感できた。条件の拾い方や論点の掘り下げが細かくなり、同じような依頼でもアウトプットの質が上がり、内容も厚くなることが多い。複数の資料を読み合わせたり、長い原稿の構成から見直したりする仕事では、特に違いを感じる。
その代わり、ネックになるのが待ち時間だ。「5.6 Sol」よりずいぶん長く待たされる。短い質問をテンポよく繰り返すより、多少待ってでも完成度の高い答えが欲しい仕事で使う方が、Astraの持ち味を生かせそうだ。
ちなみに、Plusユーザーだとしても「Work」でチャットすることは可能だ。モデル周りの環境が異なるので挙動が同じとは限らないものの、Astraの賢さを体感することはできるだろう。
簡単な指示だけで、遊べる3D脱出ゲームが完成
では、WorkでAstraの実力を試してみよう。
作ってもらうのは、閉鎖された研究施設から脱出する3Dゲームだ。5~10分ほどで遊べる内容にし、専用ソフトをインストールせず、Webブラウザーで開ける形を指定した。
ChatGPTの画面上部で[Work]に切り替え、新しい会話で[GPT-6 Astra]を選ぶ。Astraでは、どの程度時間をかけて考えさせるかを設定できるので、今回は最も多くの推論時間を使う[最大]を選んだ。次のように依頼し、施設の構造や謎解きの内容、画面のデザインはすべてAstraに任せた。
ブラウザーで遊べる3D脱出ゲームを作ってください。閉鎖された研究施設から脱出する内容で、5~10分程度で遊べるものにしてください。鍵やスイッチなどの仕掛けを入れ、遊び方がわかり、最後までクリアできる状態にしてください。HTMLファイル1つにまとめ、ブラウザーで開くだけで遊べるようにしてください。
36分44秒で「LAST SIGNAL」というタイトルの3D脱出ゲームが完成した。「last_signal.html」という1つのファイルを開くと、青緑色の光に照らされた研究施設が現れる。床や天井のパネル、扉の案内板まで描かれ、暗い廊下の奥へ進んでみたくなる雰囲気に仕上がっていた。
一発出しの状態でもクオリティが高い。キーボードでもマウスでも操作でき、滑らかに移動できる。画面をドラッグして周囲を見回すことも可能で、立体的な空間を探索している感覚がある。テーブルやドアを探し、アイテムを手に入れ、謎を解いて脱出を目指す。
クオリティの高さの例として、初めて遊ぶ人への案内が充実しているのには感心した。画面には操作方法に加え、「中央通路の西側にある保守室へ」と、その時点の目的も表示される。マップや記録帳、ヒントも揃っており、プレイヤーが迷ったときに頼れるようになっていた。
こちらは「遊び方がわかるように」と頼んだだけで、目的の表示場所やヒントの出し方までは指示していない。Astraが実際に遊ぶ場面を考え、必要な画面や機能を補ってくれたのだ。大まかな依頼から、見た目も遊び方も整った1つの作品にまとめる力を感じた。
自力で作ろうとすれば、3D画面の表示方法を調べるところから、移動操作や鍵の管理まで、覚えることは山ほどある。それを思うと、小一時間でこのゲームが手元に届くのはすごい。自分が作りたいゲームを、コードを1行も書かずに遊ぶ側に回れたことが新鮮だった。
実在する家具の寸法を反映した3D配置アプリを作ってみる
次は、引っ越し後の家具配置を試すWebアプリを作ってみよう。
物件の図面を眺めるだけでは、ソファやベッドを置いた後にどれだけの空間が残るのか想像しにくい。自分が使う家具の大きさで、位置や向きを変えながら比べられると便利だ。
今回は、洋室12畳の1Kを描いた架空の物件チラシを用意した。配置するのは、レグザの55V型テレビと、IKEAのテレビ台や2人掛けソファ、コーヒーテーブル、セミダブルのベッドフレームの計5点だ。製品の寸法を調べるところから、アプリの制作まで、まとめて任せてみる。
添付した物件の図面をもとに、引っ越し後の家具配置を試せるWebアプリを作ってください。置きたい家具は、レグザ 55E770S(55V型テレビ)、IKEA FJÄLLBO テレビ台、IKEA VALNÄS 2人掛けソファ、IKEA UGGLERUM コーヒーテーブル、IKEA FÅGELFJÄLLET ベッドフレーム(セミダブル)です。メーカーの公式情報から実際のサイズを調べ、図面の居室(1K)と同じ縮尺で配置してください。通り道やドアの開閉、ベッドの乗り降りや収納・窓の前のスペースも考えた配置案を作り、家具を自分で動かしたり回転させたりできるようにしてください。家具同士や壁との間隔、採用した寸法と確認元も見られるようにし、わからない寸法は推測せず確認してください。ブラウザーで使えるHTMLファイル1つにまとめてください。
最初にできたのは、チラシの画像を使い、その図面に家具を重ねて配置する2Dアプリだった。家具の位置や向きを変えられ、家具同士の間隔も確認できるが、表示が簡素すぎる。引っ越し後の部屋を思い描くには、もう少し家具の見た目を作り込んでほしいところだ。
そこで、チラシの画像を使わずに間取りを描き起こし、UIもよりリッチにするよう追加で依頼した。家具がひと目でわかる表現や3D化も指示し、図面にない寸法は、記載された寸法をもとに算出・推定してよいと伝えた。
改良版では、平面図と3D表示を切り替えられるようになった。ソファのクッションや脚、ベッドのヘッドボードなどが立体で表現され、家具の種類も見てわかる。位置関係を平面図で確かめつつ、立体で部屋の様子を眺められると、そこで暮らすイメージも膨らませやすい。
家具の大きさには、指定した製品の寸法が反映されていた。例えば、VALNÄSの2人掛けソファは幅2060×奥行き940mm、FÅGELFJÄLLETのベッドはフレームを含めて幅1320×長さ2070mmで配置されている。実際に使う家具を前提に、置いた後の余裕や動線まで考えられるのがありがたい。
正直なところ、最初に出てきた2D版を見たときは少し肩透かしだった。それが、要望を大まかに伝えたところ、Astraは元の画面を小手先で飾るのではなく、間取りそのものを描き直し、平面図と3D表示を切り替えられるアプリへと抜本的に作り直してくれた。
これまでのAIでは、指示が足りないと既存の成果物を部分的に直すだけで終わることも多かったが、今回は「何を直してほしいのか」だけでなく、「最終的に何が欲しいのか」までくみ取ってくれた印象がある。細かな仕様をこちらで詰め切らなくても、意図を汲みながら完成形に近づけてくれるのがすごい。ユーザーに寄り添うような手触りは、Astraを使っていて特に印象に残ったところだ。
600件の受注を扱うExcelの課題は全8問に正解した
最後は、面倒なExcel作業をどこまで任せられるかを試した。
用意したのは、架空の通販会社の出荷業務を題材にした、自作の「引き当て問題.xlsx」だ。600件の受注に対し、国内5カ所の倉庫から商品を割り当て、欠品数量や出荷件数、配送料などを求める複雑なものだ。
「引き当て」とは、注文に対して、どの在庫から何個を確保するか決めること。この問題では、受注IDの順番に処理し、配送先ごとに決められた優先順位に従って倉庫の在庫を使う。前の注文に商品を割り当てると、次の注文で使える在庫が減り、複数の倉庫から分けて出荷すれば、それぞれに配送料が発生する。処理する順番やルールを1つ取り違えるだけで、その後の計算もずれてしまう。
受注データはID順に並んでおらず、在庫や配送先、料金の情報は別々のシートに収まっている。全8問の最後には、特定の倉庫の初期在庫を2倍にした場合に、欠品がいくつ減るかを求める設問も入れた。複数のシートを読み合わせ、業務のルールに従って計算する表を作る必要がある。
今回は、Windows版のChatGPTアプリでWorkを開き、「Excel操作テスト」というフォルダーを指定して新規プロジェクトを作成し、その中にExcelの問題ファイルを保存した。その上でAstraにプロンプトを投げた。どの関数を使うかや、計算用のシートをどう組み立てるかはAstraに任せている。
Excelで開いている「引き当て問題.xlsx」を解いてください。「ケース」シートのルールを読み、Excelの画面を操作して計算し、「設問」シートの黄色い回答欄を埋めてください。計算の途中経過も確認できるように残し、30分を目安に、解けたところまでを「引き当て問題_回答.xlsx」という名前で別に保存してください。解き方はおまかせします。
プロンプトを入力すると、最初に「ChatGPTにExcelの使用を許可しますか?」という確認が表示された。PC上のアプリをAIが操作する「Computer Use」の許可を求める画面だ。Excelの使用を許可すれば、ChatGPTが画面を確認しながら、クリックや文字入力で作業を進められるようになる。
しばらくAIがExcelを操作し、22分後に処理が完了。回答ファイルが作成された。そのファイルを確認すると、黄色い回答欄は8問とも埋まっており、すべて正解だった。在庫を順次減らす処理や配送料の計算に加え、初期在庫を変えた場合の比較まで正しくできていた。
ブックには「引当計算」や「集計・検算」のシートも追加されていた。受注ID順に並べた600件の注文について、各倉庫の在庫や割り当てた数量、欠品、配送料などをExcelの数式で計算している。注文ごとの明細も、別に計算した結果と一致した。
「集計・検算」には、在庫がマイナスになっていないか、引き当てた数量と欠品数量の合計が受注数量と合うかを確認する欄まであった。途中経過を残すよう頼んではいたが、検算の項目までは指定していない。計算式を組むだけでなく、結果の確かめ方まで考えて表にしていたのは頼もしいところ。
ゴールを明確に指示することができれば、もはやAIに計算方法を考えるところからExcelの操作や保存まで任せ、結果と根拠を同じブックで受け取ることができる。
やり方がわからない仕事こそ任せてみよう
Astraは処理に時間がかかり、Workでは仕事の規模や設定によって利用枠の消費も変わる。調査してからアプリを作る仕事や、複雑な条件に従ってデータを処理する仕事など、自分で1つずつ進めるには手間のかかる場面で使いたい。作業方法を調べて覚える時間も含めて考えると、まとまった仕事を任せる価値を感じやすいだろう。
依頼するときは、図面や元データ、業務のルールなどを渡し、何を完成させたいのかを伝えよう。家具配置アプリのように、できたものを見てから要望を足し、使いやすくしていくこともできる。作る手間を考えて諦めていたアイデアを、実際に使えるものにしてしまうAstraの「最後までやりきる力」が頼もしく感じるのと同時に、この万能感は末恐ろしくもある。とはいえ、便利であることは間違いないので、ぜひ皆さんも触ってみてほしい。
著者プロフィール:柳谷 智宣
IT・ビジネス関連のライター。キャリアは26年目で、デジタルガジェットからWebサービス、コンシューマー製品からエンタープライズ製品まで幅広く手掛ける。近年はAI、SaaS、DX領域に注力している。日々、大量の原稿を執筆しており、生成AIがないと仕事をさばけない状態になっている。
・著者Webサイト:https://prof.yanagiya.biz/






















