クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
単なる事実やデータは保護されない
~第2章:著作権で保護される作品を教えて!~
2016年7月22日 07:00
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“タイトルや見出しは著作物じゃない”の続きとして、今回は“単なる事実やデータは保護されない”というテーマを解説する。
タイトルや見出しは著作物じゃない
著作物として保護されないものの他の例として、単なる事実の報道があります。
著作権法10条2項(著作物の例示)
事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項1号に掲げる著作物に該当しない。
(※『前項1号』とは『小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物』を指す)
え? 新聞記事やテレビのニュース報道って、著作物じゃないんです?
いえ、勘違いしやすいのですが、新聞記事やテレビのニュース報道のほとんどは著作物です。
どの事実を選択するか、紙面上の配置、用語の選択、言い回しなどに、創作性が認められるからです。
著作物に該当しないのは、例えば人事異動や死亡記事など、事実だけを羅列した記事です。
ああ、そういうことか。
事実の羅列というと、例えば数字がズラッと並んでる新聞の株価欄なんかはどうですか?
単なるデータは、著作物ではありません。
また、グラフのように具体的な表現でも、表現方法に選択の余地がほとんどない場合は、著作物にあたらないことが多いです。
グラフって著作物じゃないんですか!?
実験データを一般的な手法に基づき表現しただけのグラフに、著作物としての創作性はないという判例があります。
ただし、データの集合体で、選び方や並べ方に創作性があれば、編集著作物として保護されます。
著作権法12条(編集著作物)
編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
2 前項の規定は、同項の編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。
編集著作物ですか。
普通の著作物とは違うんですか?
例えば辞書や新聞、雑誌などは、個別の文章やイラストが著作物であるのと同時に、全体が編集著作物でもあります。
あ、なるほど。
二重の意味で著作物なんですね。
職業別電話帳『タウンページ』は、電話番号やお店の名前は著作物ではないですが、職業別の分類方法などに創作性が認められれば編集著作物です。
ところが、50音別電話帳『ハローページ』は、創作性がないので著作物ではないとされています。
『タウンページ』は著作物だけど、『ハローページ』は著作物じゃない、と。
その辺りに境界線があるんですね。
そうですね。
ただし、どうやって分類するか? どういう配列にするか? という方針自体は、著作物ではないのですよ。
あ、もしかしてアイデアと表現の違いですか!
よくわかりましたね。
あとは、データをコンピュータで検索しやすいように分類したり階層づけしたりして体系的に構成したものは、データベースの著作物として保護されます。
著作権法12条の2(データベースの著作物)
データベースでその情報の選択又は体系的な構成によつて創作性を有するものは、著作物として保護する。
2 前項の規定は、同項のデータベースの部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。
いろんな著作物があるんだなあ……。
次回予告
今回の続きとして次回は“〈コラム〉権利のない著作物もある”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!