レビュー

エンタープライズのネットワーク管理ツールを無償で使用できる「Net StreetDancer」

SNMP経由で各種デバイスの設定バックアップやメンテナンスが可能

「Net StreetDancer」無償版 v13.08

 「Net StreetDancer(以下、netSD)」は、Ciscoなどの業務用ネットワークデバイスのメンテナンスを容易にするためのネットワーク管理ツール。108,000円(税抜き)からの製品版に加え、10ノードまでのネットワークデバイスを管理でき、製品版と同等の機能が無償で利用可能な無償版が提供されている。64bit版を含むWindows XP/Vista/7/8に対応しており、編集部にてWindows 8.1上での動作も確認した。開発元である(株)ロジックベインのWebサイトからダウンロードできる。

 多くの業務用ネットワークデバイスはコンソールサーバー経由で接続し、デバイスごとに異なる言語体系で設定のバックアップを始めとする日々の業務を行わなければならない。「netSD」はこの点に着目し、一連のメンテナンスをWebブラウザー上の一貫した操作で実行可能にするツールだ。具体的にはWindows上にJavaやPerlをセットにしたプログラム群をインストールし、Webブラウザー経由でアクセスする。

 あらかじめ設定しておけば、ネットワークデバイスへの自動ログインや、日々のメンテナンスの自動化なども可能なため、職場などで多数のネットワークデバイスの管理を求められるユーザーに有用なツールとなる。また、コンソールサーバーのようにシリアル接続を用意するといった手間がかからないのもメリットのひとつだ。

 ただし、「netSD」がサポートしているのは、前述したCiscoやAllied Telesisのルーターやイーサネットスイッチなど、主に業務用として用いられるネットワークデバイスばかりだ。今回は筆者が利用しているYAMAHAのルーターRTX810が対応しているので、こちらで動作を検証した。

 「netSD」のインストール後は、最初に管理対象となるネットワークデバイスの登録を行う。登録可能なデバイスは、ネットワークデバイスの監視や制御に用いられるSNMPプロトコルに対応し、かつ「netSD」が対応しているものに限られる。そのためRTX810は正しく登録されたが、非対応のレーザープリンターは検出されたものの『一致するアダプタがありません。』と登録に失敗してしまった。なお、これらの検出情報はExcel形式でインポート・エクスポートすることも可能だ。

 次に“クレデンシャル”と呼ばれる、「netSD」がネットワークデバイスにログインするためのユーザー名やパスワードを設定する。通常は複数のIPアドレス(ネットワークデバイス)で同じユーザー名およびパスワードを用いるダイナミック形式を選択するが、セキュリティ対策として異なるパスワードを設定している場合は、1つのIPアドレス単位で操作するスタティック形式を選択すればよい。

初回はスタートアップウィザードが自動実行し、ネットワークデバイスの追加やクレデンシャルの設定を求められる
クレデンシャルは、主にネットワークデバイスに対するユーザー名やパスワード、管理者への移行コマンドなどを設定する

 登録したネットワークデバイスに対しては、バックアップした以前の設定と新しい設定を比較することで実現する世代管理や、インベントリ管理が可能になる。また「netSD」はターミナルプロキシ機能も備えており、前述したクレデンシャルの設定情報をもとにネットワークデバイスへのTelnet/SSHによる自動ログインが可能だ。操作内容も記録されるため、トラブル発生時にログを見直すといった原因究明も容易になるだろう。

登録済みのネットワークデバイスに対しては、設定のバックアップや管理だけでなく、さまざまな操作が可能になる
任意の端末エミュレーターでlocalhostにアクセスすると、「netSD」経由で各ネットワークデバイスへのTelnet/SSHによる自動接続が可能になる

 なお、「netSD」を公開しているロジックベインは、この他にも2つのネットワークアプリケーションを無償公開している。その1つである「LogCop」無償版は、Unix系OSが記録するログ情報“Syslog”を収集するために、WindowsをSyslogサーバーにするツールだ。無償版では最大5台(IPアドレス)までのデバイスに対応し、イベントフィルターは1つのIPアドレスに対して1つと制限されている。対応OSが64bit版を含むWindows Server 2008/2008 R2とサーバーでの利用が前提だが、完全日本語化されたSyslogサーバーは少ないため貴重な存在だ。

各マシンのサービス状態などをSNMP経由で監視する「サーバ監視ソリューション」無償版 v8.0.10

 もう1つの「サーバ監視ソリューション」無償版はSNMPプロトコルを用いて、デバイスのリソースやWebサーバーなどのサービス状態を監視するというものだ。64bit版を含むWindows XP/2003/Vista/Server 2008/Server 2008 R2/7/8/Server 2012に対応する。なお、本ソリューションはSNMPのサービス情報を独自拡張するツール「Windows SNMP-L」と「SNMPc」の組み合わせで動作する。前者は継続的に無償利用可能だが、後者は約1カ月の評価版となるので、利用の際は注意してほしい。

 各ツールは、いずれもエンタープライズ領域に含まれるものばかりだ。しかし、所有しているネットワークデバイスや使い方によっては、個人でも有用なツールに様変わりする。いずれのツールもデバイス数に関する制限以外は製品版と同等の機能を保持しているので、対応デバイスや環境を保有している方は一度試してほしい。

ソフトウェア情報

「Net StreetDancer」無償版
【著作権者】
(株)ロジックベイン
【対応OS】
64bit版を含むWindows XP/Vista/7/8
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
13.08(13/11/01)
「LogCop」無償版
【著作権者】
(株)ロジックベイン
【対応OS】
64bit版を含むWindows Server 2008/2008 R2
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
12.11(13/11/01)
「サーバ監視ソリューション」無償版
【著作権者】
(株)ロジックベイン
【対応OS】
64bit版を含むWindows XP/Server 2003/Vista/Server 2008/Server 2008 R2/7/8/Server 2012
【ソフト種別】
フリーソフト(「SNMPc」は約1カ月の評価版)
【バージョン】
8.0.10

(Cactus:阿久津 良和)