【第13話】
「Google Chrome」とRetinaディスプレイの意外な接点
(12/06/19)
本コラムの第7話『美しいフォントの定義』にて、擬似的な仕組みに頼らずにフォントを美しく描画するには、超高解像度なモニターが必要であると説明した。このとき筆者自身は、その環境がパソコン上で整うのはまだまだ先のことだろうと考えていたが、ここ数日に飛び込んできたいくつかのニュースは筆者の考えを否定するものだった。
Apple社は先週の6月12日、2,880×1,800ドットを誇る“Retinaディスプレイ”搭載のMacBook Proを発表した。これは従来機種と比べてドット密度が4倍にもなるため、iPhoneやiPadと同様の美しいフォント描画を期待できる。また、高度なスケーリング機能を搭載しており、標準の設定では1,440×900ドット相当の画面を2,880×1,800ドットで描く。
そのため、Retinaディスプレイに対応するアプリケーションであれば、フォントだけでなくユーザーインターフェイスやアイコンも4倍美しく描画される。Google社はさっそく「Google Chrome」をRetinaディスプレイへ対応させるべく動き出しており、開発版よりも前の段階にあたる“Canary”版を公開している。
Retinaディスプレイのシステムは、Apple社製品のハードウェアスペックが固定されているように、統一された規格があってこそ成り立つ。Windowsでも同様のシステムを導入することは可能であろうが、ハードウェアスペックが一定ではないため、システムが複雑化し、それに対応するアプリケーションの作成も難しくなってしまう。
そこで思い出すのが、Windows 8に搭載される予定の“Metroスタイル”だ。Metroスタイルのアプリは専用サイト“Windows ストア”を通してのみユーザーに提供され、デザインなどのガイドラインが定められている。つまり、Metroスタイルを統一規格として利用すれば、WindowsでもRetinaディスプレイのようなシステムを構築する近道になりえる。
偶然ではあるが、先週公開された「Google Chrome」の開発版がMetroスタイルに暫定対応しており、上述した“Canary”版の技術と合わせれば、“Windows版Retinaディスプレイ”もそれほど夢物語ではないように思える。Apple社は今回発表したMacBook Proをブレイクスルーと位置づけているが、将来的にはWindowsにとってもブレイクスルーとなるかもしれない。