#モリトーク

第81話

ChromeとOperaの拡張機能

 Google社は先週、「Google Chrome」用の拡張機能を公開・インストールできる条件について、より厳しくする方針を発表した。来年1月以降、すべての拡張機能が“Chrome ウェブストア”のシステムで管理され、それ以外の方法でインストールした拡張機能がブロックされるようになる。その目的は、悪意のある拡張機能を排除することだという。

ユーザーが意図しない拡張機能をブロックする「Google Chrome 25」

 バージョン25以降の「Google Chrome」は、外部のアプリケーションによってインストールされた拡張機能を自動でブロックする仕組みになっている。今回の新方針はそれをさらに強化し、その対象を拡大したものだと考えればよいだろう。

 簡潔に言えば、“Chrome ウェブストア”以外の個人サイトやブログで公開されている拡張機能が利用できなくなるということだ。その具体的な例を確認してみよう。

「Google Chrome」用の拡張機能「動画ゲッター」

 本コラムの第28話でも取り上げたことがある「動画ゲッター」は、“Chrome ウェブストア”のシステムに依存せず、外部のWebサイトで公開されている「Google Chrome」用の拡張機能だ。“Chrome ウェブストア”で公開されている拡張機能のインストールは数クリックで完了するが、「動画ゲッター」のような拡張機能をインストールするには、そのCRXファイルをいったんローカルに保存し、その後に拡張機能の管理画面へドラッグ&ドロップする必要がある。

 こうしたタイプの拡張機能が来年1月以降、「Google Chrome」上で原則的に利用できなくなるため、その開発者は“Chrome ウェブストア”でそれを公開するか、または“Inline Installation”と呼ばれる仕組みを導入しなければならない。ちなみに、「動画ゲッター」の作者は今後の予定をTwitter上で明かしており、今年中に“Chrome ウェブストア”での配布へ切り替えるとのこと。

 「Google Chrome」の方針転換は、悪質な拡張機能の排除を目的としているものの、その対象が必ずしも悪質であるとは限らない。たとえば「動画ゲッター」の場合、使い方によってその行為が違法ダウンロードに該当してしまう危険性もあるが、拡張機能そのものやその機能は健全かつ有益だ。

 そのため、閉鎖的な環境を嫌う開発者の有益な拡張機能が消滅してしまう可能性もあり、それを危惧する「Google Chrome」ユーザーも少なくないだろう。そこで思い出してほしいのが、「Opera」の存在だ。

「Opera 17」上での動作も確認できた「動画ゲッター」

 「Google Chrome」と「Opera」は同じWebレンダリングを搭載しており、その拡張機能も基本的に互換性がある。そして、Opera社はそのことを積極的にアピールしており、実装予定のブックマーク機能について言えば、その拡張機能用APIが「Google Chrome」のそれと共通であることもわかっている。

 「Opera」は上級者に好まれる傾向があり、そのユーザーは悪質な拡張機能をそれなりに見分けられるはずだ。そうであれば、「Google Chrome」にブロックされた拡張機能の受け皿として「Opera」が存在してもよいだろう。Webコンテンツ用OSへと舵を切る「Google Chrome」がセキュリティのために閉鎖的な方針を打ち出すなら、「Opera」には純粋なWebブラウザーとしてオープンな姿勢を期待したい。

(中井 浩晶)