杜のVR部

第40回

CEDEC 2015で完成度が高いOculus Riftのローンチタイトルを体験

納得の完成度。VRでゲームはさらに面白くなる!

 8月26日から28日の3日間、パシフィコ横浜では、国内最大級のゲーム開発者向けイベント“CEDEC 2015”が開催された。ゲーム開発に関する国内外のさまざまな知見が共有される場だ。今年のCEDECは、VRに関する講演も多く開催され、Oculus Rift、Project Morpheusも体験ブースが設けられた。

 Oculus Riftは製品版プロトタイプである“Crescent Bay”を使い、来年第一四半期の発売に合わせて発売されるローンチタイトルを展示。Project Morpheusに関しては技術デモである「サマーレッスン」等を展示しており、こちらはすでに第36回で紹介している。今回は、Oculus Riftのブースで展示されていたコンテンツ「AirMech」「EVE: Valkyrie」「Lucky’s Tale」の3つのゲームを紹介したい。いずれもCrescent Bayのコンテンツとしては国内初展示のものだ。

ついに登場したローンチタイトルの魅力

 展示に使用されていたCrescent Bayは開発者版として全世界に出荷されているDK2と比べ、ハードウェアの完成度も高い。昨年9月に発表されて以来、ハードウェアとしての性能に関して正式な発表はないが、2K程度の解像度と90fpsという高いフレームレートで描画される映像は非常に自然で滑らかだ。

製品版プロトタイプのCrescent Bay

 そして、ローンチタイトルに予定されている3作品は、これまで体験してきたOculus Riftのコンテンツの中では段違いにゲームとしての完成度が高い。酔いなどのネガティブな要素はほぼ感じられず快適にプレイできる。その上で、VRで遊ぶゲームとしての面白さが加わり『そのまま長く遊んでいたい』と思わせる体験ばかりだった、ということは強調してお伝えしておきたい。リアルタイムストラテジー、スペースシューティング、3Dアクションと、どのゲームもVRではなくモニターで遊ぶこともできそうなゲームばかりだ。しかし、VRで遊ぶことでその面白さは格段に向上することは間違いない。VRと非VRとでどちらを遊びたいかと聞かれたら、筆者は間違いなくVRで遊びたいと言うだろう。

 さっそくどんな体験だったかレポートをお送りしよう。

リアルタイムボードゲームとも言える新たな面白さを味わえるRTS「AirMech」

 「AirMech」はCarbon Gamesが開発しているリアルタイムストラテジー(RTS)だ。PC版は現在開発中だが、Ubisoftから2015年春にPS4/Xbox One版が提供されている。3vs3のマルチプレイに対応しており、プレイヤーは変形メカを操作して闘いながら、味方とともに敵の本拠地を攻撃する。今回Oculus Riftで体験できたデモでは、プレイヤーが操作するのはロボとヘリコプターに変形できるメカ。ロボでは地上の敵に攻撃ができ、ヘリコプターでは空の敵に攻撃するとともに味方の砲台などを輸送し配置できる。

 戦場はプレイヤーの眼下に広がっており、プレイヤーはボードゲームの上でコマ(ミニチュア)を動かしているような感覚で、ゲームをプレイできるのが最大の特長だ。その臨場感もさることながら、敵があらゆる方向から攻めてくるため、常に振り返ってゲームをしなければならないという360度をフルに活用した設計が秀逸。

ミニチュアのように味方と敵が交戦する
ポジショントラッキングが効いているため、顔を近付けるとミニチュアが拡大する。まさにボードゲーム感覚だ

 今回のデモでは簡単なチュートリアルの後に、渦巻き状のステージの真ん中に自分の本拠地があり周囲を敵の基地が取り囲んでいるようなステージでの戦いを体験できた。敵の進軍がかなり激しく防戦一方になってしまったが、ある方面で戦っていると背後から攻められている音がするため急いで振り返って急行するという展開が繰り返される。あらゆる方向を見て自分のキャラを動かしながら、常に気を抜かずに戦わなければならない体験はまるでリアルタイムにド派手に動くボードゲームをプレイしているようで、これまでになかった体験ができた。

 なお、プレイヤーがいるのは自軍の本拠地にある司令室のような部屋という設定で、本拠地上空でホバリングしている時に上を見上げると自機が見えたり、本拠地が攻撃されると部屋が徐々に壊れていくといった演出も凝っている。

見上げると自機が見え、本拠地にいるという設定を実感できる

 なお、本作は戦場を見下ろしている自分自身が歩いて移動することはない。あくまでも頭の動きのみになるため、きわめて酔いにくい点も注目だ。一つ、体験しすると陥りがちなのが、視界の外に自分の操縦する機体が出てしまった時に、どこにあるかわからなくなってしまうということだろうか。ある種ラジコンを見失ったような状態でリアルなのだが、ゲームを楽しむ上では不要なリアルさとも言える。音で方向を知らせるなどの改善が必要と感じた。

「AirMech」CEDECでのプレイ動画

宇宙空間にいるとしか思えない体験ができる大作スペースSTG「EVE: Valkyrie」

 宇宙を舞台にしたオンラインゲーム「EVE Online」を提供するCCP Gamesが2年前から開発を進めているのが、同ゲームの世界観をそのままにVRゲームにしたスペースSTG「EVE: Valkyrie」だ。

 Oculus Rift向けのゲームとしてはすでに長い期間開発されていることもあり、極めて完成度が高い。Unreal Engine 4を使って制作されており、その特長をフル活用している印象。とくにグラフィックの美しさには息を呑んだ。

 デモでは、大型船から発進して味方艦隊の中を飛行し、敵艦隊の襲撃を受けるシーンを体験できた。宇宙空間そのものの演出から、一体一体の宇宙戦艦の細部に至るまで美しく描き込まれており、それだけでずっと見ていたいほどに美しい。

ついつい見とれてしまうグラフィック

 そして、敵艦隊襲撃後の敵戦闘機とのドッグファイトはスペースSTG初心者にはかなり難しい。武器はオートロックできるミサイルと無数の弾を連射できる小銃があるが、敵戦闘機も自機と同じように高速で移動するため、小銃掃射を全然当てることができず、ミサイルのオートロックに頼ってしまった。体験しているとまるでスター・ウォーズに登場するパイロットのような気分になるのだが、なかなか映画の中のようにカッコよくは飛べないことを痛感させられる。

ドッグファイトは難しい
オートロックでミサイルを発射!

 なお高速で宇宙空間を激しく飛び回るゲームだが、移動中に頭をぶんぶん振り回すなどの不自然な視界移動をしなければ酔うことは一切なく、まさに宇宙空間にいるとしか思えない体験ができることは補足しておきたい。

「EVE: Valkyrie」開発元によるデモ動画

ふわふわの狐と一緒に冒険する3Dアクションゲーム「Lucky's Tale」

 インディデベロッパーのPlayfulが開発を進めている「Lucky's Tale」は3Dアクションゲームだ。プレイヤーは主人公であるキツネのラッキーを操作し、コインを集めながらゴールを目指す。こう説明してしまうと、いわゆる3Dアクションゲームと同じに聞こえてしまうと思うが、このゲームでプレイヤーは“ラッキーと一緒に冒険する”という位置付けだ。

主人公であるキツネのラッキー。かわいい

 ゲーム中、ラッキーはプレイヤーの方を振り向くなどプレイヤーがただのカメラではなく人格があるように振る舞う。また、プレイヤーがステージ内のブロックに向かって頭を突き出すとブロックが崩れるなど、“プレイヤーがゲーム中に確かに存在する”ことが感じられるゲームデザインになっている。

ブロックに頭突きすると崩れる。プレイヤーがこの世界に存在することの証明だ

 また、カメラの動きは第三者視点で後方からついていくのだが、ラッキーのふわふわした動きに合わせて少し後ろから、まるでラッキーを追いかけるようについていく。いわゆる一人称視点と第三者視点の中間のような不思議な感覚だが、確かに一緒に冒険している気分になってくる。

 ともすればただの3DアクションになりがちなVRで遊ぶ3Dアクションゲームの可能性を見せてくれる一作だ。なお、こちらのゲームもふわふわした動きにかかわらず、酔いは感じられない。

「Lucky's Tale」CEDECでのプレイ動画

 CEDEC 2015で体験できた製品版ローンチタイトルを3点紹介した。さて、次に国内で開催されるイベントといえば9月17日から20日まで開催される東京ゲームショウだ。Oculus VR社は、昨年の4倍の展示スペースで大々的なブースを構えるとのこと。いよいよ来年に迫っている製品版発売に向けて、プロトタイプであるCrescent Bayではなく製品版そのものが展示されることにも期待したい。

(もぐらゲームス:すんくぼ)