週末ゲーム

伝奇系学園ノベルゲーム「あやかしよりまし逢魔」「あやかしよりまし祓」

少年マンガ的な王道展開が熱い! シリーズ続編と外伝を併せて紹介

(11/06/10)

「あやかしよりまし逢魔」「あやかしよりまし逢魔」

「あやかしよりまし祓」「あやかしよりまし祓」

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、選び抜いた良作を毎週紹介していく。今回は、本連載の第284回で取り上げた伝奇系ノベルゲーム「あやかしよりまし」の続編「あやかしよりまし逢魔」と、外伝にあたる「あやかしよりまし祓」を併せて紹介する。

「あやかしよりまし」シリーズとは?

1作目と続編の主人公で、人には見えない“妖”を見る力をもつ“稲生 修一郎”と、彼の分身とも言うべき存在で守護霊獣の“吽狛(うんこま)”1作目と続編の主人公で、人には見えない“妖”を見る力をもつ“稲生 修一郎”と、彼の分身とも言うべき存在で守護霊獣の“吽狛(うんこま)”

 「あやかしよりまし」シリーズは、普通の人間には見えない“妖(あやかし)”が見える右目をもった少年“稲生 修一郎(いのう しゅういちろう)”を主人公にした物語だ。妖とは一般に妖怪と呼ばれる超自然的な存在のこと。妖怪というと恐ろしいイメージをもってしまいがちだが、本作では人間に害を与える妖怪以外にも、妖がらみのトラブルから守ってくれる狛犬型の守護霊獣“吽狛(うんこま)”や、スケベだが憎めない性格の猫又“又三郎(またさぶろう)”、家事を手伝ってくれる小人一家、雨の日のお供はもちろんいざというときの武器としても活躍する傘の妖“傘化け(かさばけ)”など、さまざまな妖怪が登場し、作品の大きな魅力となっている。

 シリーズ1作目では、修一郎の家に迷い込んだ“座敷わらし”の女の子が取り持つ不思議な縁によって訪れた、謎の妖をつれた少女“御堂 紗都梨(みどう さとり)”との出会いと、それによりもたらされる事件が描かれた。

1作目と続編のヒロイン“御堂 紗都梨(みどう さとり)”。続編では彼女に演劇のペアチケットを渡そうとする修一郎だが、うまくいくのだろうか1作目と続編のヒロイン“御堂 紗都梨(みどう さとり)”。続編では彼女に演劇のペアチケットを渡そうとする修一郎だが、うまくいくのだろうか

稲生家に住み着く“妖”たち。おとなしい妖ばかりで、なかには家事を手伝ってくれる妖も稲生家に住み着く“妖”たち。おとなしい妖ばかりで、なかには家事を手伝ってくれる妖も

正当な続編となる「あやかしよりまし逢魔」

1作目に比べてバトルシーンも大幅に増えている。カットインを随所に盛り込むことで緊張感やスピード感を演出1作目に比べてバトルシーンも大幅に増えている。カットインを随所に盛り込むことで緊張感やスピード感を演出

 「あやかしよりまし逢魔」は1作目の続編にあたる作品で、前作の数週間後が舞台。人とは違うモノが見えてしまうことで周囲に馴染めず、他人への興味を失いがちだった修一郎のその後の変化を、中学校のクラスメイトや陸上部の仲間との交流を通して描きながら、修一郎自身も忘れてしまった過去にスポットライトを当てつつ物語が進んでいく。

 1作目からの続投となるヒロインの紗都梨や、修一郎の姉で絵本作家として一家を支える快活な女性“稲生 楓(いのう かえで)”といったお馴染みのキャラクターに加え、“妖”のことを“魔”と呼ぶ盲目の青年“鏡(かがみ)”や、紗都梨のクラスメイトで謎の妖が憑いた少年“木葉 勇(きば いさみ)”といった気になる新キャラクターたちも登場する。

修一郎の姉の“稲生 楓”とその守護霊獣“阿狛(あこま)”。後ろ手に構えているのはほうきの妖“箒神”だ修一郎の姉の“稲生 楓”とその守護霊獣“阿狛(あこま)”。後ろ手に構えているのはほうきの妖“箒神”だ

クラスメイト“八橋 美生(やつはし みお)”と“猫柳 行人(ねこやなぎ  ゆきと)”。行人は修一郎と同じ陸上部の仲間でもあるクラスメイト“八橋 美生(やつはし みお)”と“猫柳 行人(ねこやなぎ ゆきと)”。行人は修一郎と同じ陸上部の仲間でもある

“妖”を“魔”と呼ぶ謎の青年“鏡”。はたしてその真意は?“妖”を“魔”と呼ぶ謎の青年“鏡”。はたしてその真意は?

物語に重要な役割を果たす新キャラクター“木葉 勇”。紗都梨のクラスメイトらしい物語に重要な役割を果たす新キャラクター“木葉 勇”。紗都梨のクラスメイトらしい

本編とは異なる主人公が活躍する外伝「あやかしよりまし祓」

外伝の主人公となる“九条 風太郎”(右)と父“巌”。家業として“九条庵”というそば屋を営んでいる外伝の主人公となる“九条 風太郎”(右)と父“巌”。家業として“九条庵”というそば屋を営んでいる

 一方の「あやかしよりまし祓」はシリーズの外伝にあたり、当初iモード端末向けのiアプリとしてリリースされた作品が、PCに移植されたもの。元ボクサーである父が営むそば屋で働く、明るく快活な少年“九条 風太郎(くじょう ふうたろう)”が、そばの出前を届けた先で家人の代わりに現れたしゃべる猫より、まるで夢遊病のようになってしまったアルビノの少女“稲生 木綿(いのう ゆう)”を助けてほしいと懇願されることから物語が展開していく。

 主人公とヒロインのほかにも、風太郎の父親で寡黙なそば屋店主“九条 巌(くじょう いわお)”や風太郎のクラスメイトの“天海 藍(あまみ あい)”、同じくクラスメイトで藍の兄でもある“天海 蒼(あまみ そう)”、風太郎が出前を届けた先で出会った謎の妖など、本編とは異なるキャラクターたちが登場する。

外伝のヒロインとなる“稲生 木綿”。外伝開始時は夢遊病のような状態に陥っている外伝のヒロインとなる“稲生 木綿”。外伝開始時は夢遊病のような状態に陥っている

風太郎のクラスメイト“天海 藍”と“天海 蒼”の兄妹。蒼は風太郎も所属するボクシング部の部長を務めている風太郎のクラスメイト“天海 藍”と“天海 蒼”の兄妹。蒼は風太郎も所属するボクシング部の部長を務めている

少年マンガ感覚で読める王道ストーリーが魅力

物語のハイライトとなる場面では、1枚絵によるイラストが表示される物語のハイライトとなる場面では、1枚絵によるイラストが表示される

 本シリーズには物語途中での選択肢などは一切ない。このため、PC上で小説を読む感覚に近いが、キャラクターの立ち姿や物語の舞台となる情景を描いた背景のイラストが表示されるほか、場面展開に合わせた音楽や効果音、一枚絵などによって物語を盛り上げてくれる。

 いわゆる学園モノに妖という不思議な存在が絡むことで、中学生ならではの少し甘酸っぱいシーンあり、妖たちとのバトルもありと、往年の少年マンガ的物語が次々と展開し、それを表情豊かなキャラクターや個性豊かな妖の姿が生き生きと表現されたイラストなどが引き立ててくれる。まるでマンガを読む感覚でサクサクと読み進められるので、手に汗を握る展開を楽しむことができるはずだ。

外伝のWindows版が登場したことにより誰でも楽しむことが可能に

 本シリーズは、「あやかしよりまし」→外伝→続編の順でリリースされたが、これまで外伝は、一部のiモード端末でしか遊ぶことができなかった。しかし、今回ついに外伝のWindows移植が完了したことで、全編を通してPC上で遊ぶことが可能になった。それぞれの物語は独立しているため順不同で読むこともできるが、順番に読んだほうが物語をより深く楽しめるので、ぜひこの機会に、リリース順に物語を楽しんで頂きたい。

 1作目とその続編は、読むのに前者が2~3時間、後者が7~8時間程度かかるのに対し、外伝は1話完結式の全3話で構成されており、それぞれ小一時間程度で読むことができるので、ノベルゲームは未経験という人やちょっと苦手という人は、まずは外伝の1話を読んでみるのもお勧めだ。

外伝はiアプリ版からの移植に伴い新たに1枚絵が追加されたほか、第3話にはおまけシナリオも外伝はiアプリ版からの移植に伴い新たに1枚絵が追加されたほか、第3話にはおまけシナリオも

 なお、外伝はiアプリからの移植のため、240×240ドットと画面サイズが小さく、全画面モードでは表示が荒くなってしまうのは残念だが、従来は存在しなかった一枚絵によるイラストが要所要所で追加されたほか、第3話にはおまけシナリオが追加されているのがうれしい。本シリーズのファンなら、すでにiアプリ版をプレイ済みの人でも、改めてプレイする価値のある内容に仕上がっている。

「あやかしよりまし逢魔」

【著作権者】
冒険野郎のトムソーヤ
【対応OS】
Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
03

「あやかしよりまし祓」

【著作権者】
冒険野郎のトムソーヤ(原作)、ももいろかんづめ(移植)
【対応OS】
Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-

「あやかしよりまし祓第二話」

【著作権者】
冒険野郎のトムソーヤ(原作)、ももいろかんづめ(移植)
【対応OS】
Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-(10/05/05)

「あやかしよりまし祓第三話」

【著作権者】
冒険野郎のトムソーヤ(原作)、ももいろかんづめ(移植)
【対応OS】
Windows 98/Me/2000/XP
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
-(11/04/10)

(霧島 煌一)