週末ゲーム

16階建ての監獄塔から脱出するパズルRPG「グリムボルト」

逃げて、奪って、また逃げろ! 最適解を探し出す思考型RPG

(12/02/17)

タイトル画面

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、効率のよいルートを探しつつ16階建ての監獄塔から脱出するパズル要素の強いRPG「グリムボルト」を紹介しよう。

効率のよい逃走ルートを探しながら進んでいく脱出RPG

塔の16階からスタート。1階を目指して降りていく塔の16階からスタート。1階を目指して降りていく

 「グリムボルト」は、16階建ての監獄塔“グリム・ボルト”からの脱獄を目指すRPG。16階に囚われているのは盗賊の“ディズィ”をはじめとする5人で、1階にある出口を目指してフロアを下っていく。画面は2D見下ろし型で、フロアを探索してアイテムを入手しつつ、下の階への階段を探すのが基本的な流れだ。

 フロア内には至る所にバリケードが仕掛けられており、これを破壊しながら進んでいく。しかし、バリケードは破壊すると強度に応じた“危険度”が上昇し、画面右下に色で表示される危険度が青→黄→赤と変化。また、装備品などが手に入る頑丈な木箱も、こじ開ける際に危険度が上昇する。危険度が高い状態でさらにバリケード破壊などの行動をとると、ついには敵に見つかり戦闘となってしまう。戦闘後には危険度が青に戻るほか、移動中にランダムでエンカウントが発生することはない。

バリケードを破壊すると危険度が上昇。バリケードの頑丈さによって危険度の上昇度合いが異なるバリケードを破壊すると危険度が上昇。バリケードの頑丈さによって危険度の上昇度合いが異なる

危険度が高い状態でさらにバリケード破壊などを行うと、敵に見つかり戦闘へ危険度が高い状態でさらにバリケード破壊などを行うと、敵に見つかり戦闘へ

 本作では戦闘に勝っても経験値によるレベルアップなどのステータス向上は一切ない。敵を倒すとアイテムを落とすことはあるが、回復手段に乏しいためダメージを受けるデメリットの方が大きい。そのため真っ正面から相手をするより逃げるのが得策だ。逃走の成功率は敵のHPの減り具合や、こちらの攻撃で“束縛”“転倒”状態となった敵の数によって変動し、逃走コマンドの選択前に確認することができる。

 ただし、逃げるにはあらかじめバリケードを破壊し、下の階へ通じる退路を確保する必要がある上、逃げるとその階の探索は打ち切りとなってしまう。また、逃げた場合でも普通に降りた場合でも、上の階へは二度と戻れなくなる。

 どうしても避けられない戦いもあるので、逃げてばかりでは装備や回復アイテムが足りず、そのうちジリ貧になることは必至。そこで危険度上昇を抑えつつ、可能な限りアイテムも回収する……という効率のよい脱出ルートを探すのが重要となる。RPGだがパズル要素が強いのが特徴だ。

個性的なキャラクター達を状況に応じて使い分けよう

パーティ編成画面パーティ編成画面

装備によって使えるスキルが変わってくる装備によって使えるスキルが変わってくる

ディズィの固有スキル“盗む”。貴重なアイテム入手手段だディズィの固有スキル“盗む”。貴重なアイテム入手手段だ

 パーティのメンバーは最初は5人だが、脱出中にほかの囚人を救出すると仲間に加えることができる。このうち最大3人を戦闘に参加するメンバーとして選び、残りは控えメンバーとなる。戦闘自体はオーソドックスなコマンド選択型だ。

 各キャラクターはステータスや装備できる武器・防具に違いがあるだけでなく、一部のキャラクターは特別な能力をもっていたり、専用の装備品により固有のスキルを身に付けることができる。これは単に強力な攻撃を繰り出すといったものだけではなく、生き延びるために必要なさまざまな能力が用意されている。

 たとえば盗賊のディズィは敵からアイテムを盗むスキルを覚えることができ、さらに戦闘メンバーに入っていると逃走の成功率が上がる。アイテムの入手手段に乏しい本作では、退路を確保したあと敢えて戦闘を発生させ、アイテムを盗むだけ盗んで逃げるというのは基本戦術だ。そのほか薬師のカナリシアは回復アイテムを使うと効果が2倍になったり、脱出中に仲間になるキャラクターのなかには逃げる際にもアイテムを奪える忍者なども存在する。

 そのため、フロア探索中は純粋な戦闘力重視、探索を終了してあとは逃げるだけなら逃走時の効果重視など、状況に応じた戦闘メンバーの入れ替えが重要だ。また、控えメンバーは戦闘のたびに少しずつHPが回復していくので、傷ついたキャラクターを下がらせるといったローテーションも戦略の要となる。なお、パーティ全員に十分な装備品を行き渡らせるのは難しいので、戦闘メンバー変更と共に装備の付け替えが必要になることも多いが、この際は指定キャラクターの装備をワンキーですべて外せる機能があるので活用したい。

 戦闘時にHPが0になったキャラクターは戦闘不能になると同時に最大HPが50減少。このとき最大HPが0以下になると、死亡となりそのキャラクターは永久にロストしてしまう。また、戦闘時に全員のHPが0になるとそこでゲームオーバーだ。セーブできる場所は数フロアおきに存在するが、決して多くはない。最大HPもキャラクターによって50から100程度と余裕はなく、わずかなミスが命取りになることもあるので慎重に進んでいこう。

繰り返しプレイして最適解を見つけ、全員生存クリアを目指せ!

罠師シノのスキル“ワイヤートラップ”。戦闘開始時に自動発動し、敵全体にダメージを与えつつ束縛する罠師シノのスキル“ワイヤートラップ”。戦闘開始時に自動発動し、敵全体にダメージを与えつつ束縛する

下層に降りるほど障害も熾烈になっていく下層に降りるほど障害も熾烈になっていく

 経験値によるレベルアップがないとはいえ、うまく探索しながら進めばスキルを覚えるための装備品や仲間も増えていき、パーティの強化を実感できるだろう。そういった意味ではRPGらしい成長要素も十分備えており、戦闘開始時に発動するトラップなど、特徴のあるスキルを活用して戦うのも楽しい。

 しかしグリム・ボルトを下へ下へと降りていくと、危険度を上げて解除するか全員ダメージを受けるかの選択を強いられるトラップや、障害として立ちふさがる敵なども増えていき、脱出はより困難になっていく。最後までギリギリの状態でのやり繰りを強いられることになるのが、面白くも難しいところ。探索の進め方によっては、捕らえられている囚人を助けることができなかったり、パーティメンバーを死なせてしまうこともあるかもしれない。

 実際、1回目のプレイですべてのメンバーを揃え、全員生存のままクリアすることは難しい。しかし理不尽な難易度というわけではなく、『あそこでもしこうしていれば……』という改善点がプレイ中に見えてくるので、周回プレイでリベンジしたくなる。2周目以降もアイテムなどの引き継ぎ要素は一切ないが、バリケードや木箱の配置・中身などのフロア構成にランダム性はないため、プレイヤーの知識と経験をそのまま活かすことが可能というわけだ。

 プレイ時間はじっくり考えても1周2時間といったところ。この時間はプレイを繰り返すたびにどんどん短縮できるだろう。仲間の生存以外にも、進行ルートによって入手できるアイテムにも違いが出るなどプレイするたびに新たな発見がある。繰り返しプレイして、自分だけの最適解を探すのが楽しいRPGだ。

「グリムボルトDeep」の追加要素のひとつであるリーダー選択。薬師カナリシアのリーダー特権“生存戦略”は控えメンバーの回復量が2倍に「グリムボルトDeep」の追加要素のひとつであるリーダー選択。薬師カナリシアのリーダー特権“生存戦略”は控えメンバーの回復量が2倍に

 なお、本作品はフリーソフトだが、追加要素のある有償版「グリムボルトDeep」が先日、同人誌即売会“COMITIA99”で頒布された。こちらはゲーム開始時に選択したリーダーによってさまざまな恩恵を得られる“リーダー選択”や、より難易度の高い裏ダンジョンにあたる“Deepステージ”といった要素が追加されたほか、ゲームバランスやアイテムの配置も変更されている。委託販売も予定されているとのことなので、フリーソフト版をプレイして本作をよりディープに楽しみたくなった人は、作者のWebサイトをチェックしてみてほしい。

【著作権者】
西瓜 氏
【対応OS】
(編集部にてWindows XP/7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.04(11/12/15)

(中村 友次郎)