【第491回】
戦略・戦術シミュレーションゲーム「ヴァーレントゥーガ」
お手軽プレイから逆境打開まで、自由度の高い大作ファンタジーSLG
(12/07/13)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、多彩なユニットで編成した軍をリアルタイムで操作し、領土拡大を目指していく戦略・戦術SLG「ヴァーレントゥーガ」を紹介しよう。
気楽に遊ぶか本格的にやり込むか? 選べる2種類のモード
「ヴァーレントゥーガ」は、魔王が出現したことにより戦乱となった大陸を統一すべく戦うという、ファンタジー世界を舞台としたシミュレーションゲーム(SLG)。特徴は多数の兵士ユニットに指示を与えて戦うリアルタイム・バトル(ただしポーズは可能)で、数十、数百単位のユニットがクォータービューのフィールドで大乱戦を繰り広げる様子は実にエキサイティングだ。
プレイモードは2種類。勢力のリーダーとなって領土全体を指揮する“勢力プレイ”と、登場人物のひとりとなって戦いに参加する“人材プレイ”がある。“勢力プレイ”は部下となる人材や兵の雇用、育成の管理から戦闘、他勢力との同盟や共闘といった外交まですべてをこなすモードで、最初から全部を担当するのは難しい。“人材プレイ”はこれらの要素のうち一部の要素をピックアップしたモードで、ひとりの人物としていずれかの勢力に仕官し、自分と7名のユニットからなる部隊を率いて、勢力のリーダーの指揮下で戦闘に参加する。戦果を上げていくと身分が上がり、ユニットを任意に雇用して部隊を強化したり、独自に敵領土へ侵攻することが可能となっていく。また、仲間を引き連れて、いずれの勢力にも属していない土地で新勢力を旗揚げすることも可能だ。最初は操作やゲームのルールに慣れるために“人材プレイ”をおすすめする。
ゲームは難易度とシナリオを選択し、プレイする勢力、もしくは人材を決めてスタートする。人材を選ぶ場合は各勢力に最初から所属している人材のほかに、在野を放浪している人材を選ぶことも可能。人材はHP、MP、攻撃、防御、素早さ、移動力といったすべてのパラメーターやスキル、人間や悪魔、エルフといった種族、ファイターやソーサラーといったクラス(職業)を選択前に確認できる。最初のプレイでは飛び道具や必殺技が使える強い人材を選択するといい。
また、選んだ勢力や人材によっては独自のストーリーが発生し、特定のライバルや勢力が出現したり、イベントが発生したりすることがある。初プレイは難易度EASY、シナリオ“戦いの序幕”、人材は中立人材の“セレン”を選ぶと、一通りのゲームの流れを把握しながらクリアを目指せるだろう。人材プレイの場合、1プレイにかかる時間はおおむね3~5時間程度だ。
人材プレイから始めよう
というわけで、今回は人材プレイを中心に紹介していこう。プレイヤーが担当する人材を決め、ゲームを開始すると見下ろし型の大陸マップ上に現在地が表示される。人材がどこかの勢力に所属していれば、その勢力の旗のマークがついているマップ上の拠点が自軍の領土ということになる。在野の場合は好きな勢力の拠点をクリックして移動し、仕官を求めよう。ただし人間と悪魔というように、種族の違いなどで雇用条件に合わない場合は仕官できないので、仕官先はある程度限定される。
仕官できたら、身分“一般”という状態で勢力の一員として迎えられる。仕官するとしばらくは、勢力のリーダーである“マスター”の出撃指示がなければ行動できないので、自分の行動ターンには“状態”コマンドでステータスを確認したり、“機能”コマンドでセーブとロードを行うくらいでいい。あとはマスターの指示があれば戦闘に出撃する。戦闘については後述する。
上士に出世してからが本当のスタート
戦闘で敵を倒し、戦功を上げると身分が“一般”から“上士”に上がる。上士になると自勢力の拠点へ自由に移動が可能となり、その拠点で一番戦功が高いと、その拠点の“太守”へ任命される。太守は隣接する敵の拠点へ任意に攻撃を仕掛けることが可能だ。これで出撃回数を増やし、より戦功を上げて自勢力の領土拡大を目指していく。
また上士は、戦闘に勝利することで獲得できる所持金を払って自勢力領土内を放浪中の人材を雇い、“陪臣”として部下にすることができる。雇用した陪臣は一般の兵士よりも強いので、陪臣を増やせば戦力増強になる。雇える陪臣は最大で7人までなので、人材は厳選する必要があるだろう。また、やはり種族の相性などで雇用できる人材は限定されるので、その点にも注意が必要だ。
上士になり、陪臣を増やして敵の拠点を攻略していく間、自勢力のマスターは外交により他勢力と同盟を結んだり、共同で特定勢力を攻撃したりと、大陸全土の各勢力と連携をとりながら、領土拡大を目指していく。その方針に口出しすることはできないので、人材プレイでは戦闘だけに専念するといい。
なお、自勢力が滅亡しそうになった場合は“放浪”コマンドを選択して別の勢力に仕官先を求めてもいい。その場合、傭兵隊となって各勢力に一定期間契約で雇用され、戦闘に招集される部隊となることも可能。だが基本はどこかの勢力に所属して戦うことなので、傭兵隊としてのプレイはゲームに慣れてから試してみよう。
また、自勢力が滅亡しても放浪状態に戻るだけで、ゲームオーバーにはならない。ただし、自勢力が大陸統一に成功した時点で上士の上の身分である“重臣”や、その上の“宿将”に出世できていないとゲームオーバーとなり、エンディングを迎えられない。“重臣”になるには自勢力でも上位の戦功を上げなければならないので、やはりある程度戦闘で活躍できる人材のほうが有利だと言えるだろう。
戦闘はリアルタイムバトル!
本作の見所が戦闘だ。戦闘に突入すると見下ろし型の大陸マップからクォータービューの戦闘マップへと画面が切り替わり、数十、数百のユニットが入り乱れて戦闘を繰り広げる。プレイヤーは7人のユニットを部下とする部隊を編成することができ、雇用した陪臣あるいはマスターから与えられた一般の兵士を率いる。プレイヤーや陪臣などはHPがゼロになっても戦線離脱し経験値減少のペナルティが与えられるだけだが、一般の兵士はHPがゼロになると戦死となって消滅するので、なるべく陪臣を増やしていくといい。
戦場での操作は、まず画面左下の自部隊のアイコンで行動するユニットを選択。部隊全員、前衛、後衛、個別など、行動させるユニットは任意に選択できる。また、スペースキーでゲームの進行を一時停止(ポーズ)させて、戦況の把握や行動をじっくり考えることも可能だ。
行動するユニットを選択したのち、フィールド上をクリックすることでその地点へ移動を行う。各ユニットの行動内容は、画面左に並ぶスキルアイコンから選択。どのユニットがどのスキルを使えるかは、戦闘前に“状態”コマンドで確認しておこう。
各ユニットは選択した行動を自動で行う仕組みで、剣や槍などの近接攻撃は近くの敵へある程度自動で接近して戦ってくれるほか、射撃や魔法などの間接攻撃はある程度自動で距離を取りながら使ってくれるようになっている。加えて、特定のユニットには“必殺技”があり、これは任意のタイミングでアイコンを選択することで発動させる。広範囲への攻撃や強力な一撃など、戦況を一気に打開しうる切り札なので、効果的に使いたいところだ。
また、HPとMPの回復は“ヒール”などの魔法で行うほか、一定時間の経過でも自動で回復していく。自動回復の効果を高める魔法もあるので、組み合わせて効率よく回復するといい。
戦闘には制限時間があり、制限時間内に守備側が全滅しなかった場合はその拠点を防衛したことになる。攻撃時はあまり時間をかけず、守備時はうまく粘ることが重要だ。
陪臣を厳選して強い部隊を作ろう
戦闘を有利に進めるには、雇用した陪臣の質が重要となる。陪臣は一般の兵士と違い、戦場でやられても消滅せず、負けても継続的にレベルアップしていける。レベルアップにより新たなスキルも増えていくので、戦力強化には陪臣の成長が不可欠だ。
陪臣をはじめとする人材のクラスにはさまざまなものが用意されており、HPが高く接近戦が強いファイターやナイト、魔法も使える魔法戦士、毒や麻痺などの攻撃を扱うローグ、回復魔法や神聖魔法を使うプリースト、竜に乗り強力なブレスと高い機動力をもつドラゴンナイト、攻撃魔法を得意とするソーサラー、アンデッドを召喚するネクロマンサーなどがある。さらにクラスは同じでも使えるスキルは個々の人材で違っており、近接戦闘と弓、攻撃魔法と回復魔法など、ひとりでマルチな能力をもつ人材も多い。
最大7人の陪臣にはHP回復要員であるプリースト系が一人はほしいところ。そのほか前に出て戦えるHPの高い人材を揃えるか、弓や魔法などの間接攻撃を主力とする部隊にするか、バランス重視にするか、これはプレイヤーの好み次第だ。ただし雇用できる人材がうまく出現してくれるかどうか、運の要素も絡む。早く上士となり、優秀な人材を陪臣にしていこう。ちなみに重臣に出世すると自部隊以外の自勢力の編成も行えるようになる。必要に応じて他部隊の編成を変更していくのも悪くない。この場合、部隊のリーダーに配置すると部下に特殊な能力を付与する人材もいるので、それぞれの能力をうまく活かして戦えるよう、編成や戦術を考えていこう。
勢力プレイは駆け引きも重要
以上のように、人材プレイでは、戦闘でどう勝つかだけを考えていればほぼ問題ない。一方、人材プレイの内容に加え、雇用や育成といった内政、そして外交の要素が加わる勢力プレイでは、戦闘だけでは勝ち抜いていくことはできない。
大陸に存在する各勢力はパワーバランスが刻一刻と変化していく。外交を無視していると、気付けば複数の他勢力に狙われて猛攻を受ける、という展開にもなりかねない。うまく他勢力と同盟や共闘を結び、後方の安全確保や強敵への対抗といった策を講じる必要がある。
また、勢力プレイでは自勢力すべての人材、兵士を管理しなければならない。この場合、戦死しない人材はいいが、戦死すると消滅する一般兵士を死なせずにどれだけ高いレベルまで育てていけるかが重要となる。そこまで管理の目を行き届かせるには、どんなユニットでもうまく扱える程度には戦闘に熟練していなければ難しい。まずは人材プレイから勧めるのはそのためでもある。
その代わり、勢力プレイではどの人材にどの敵拠点を攻めさせるか、といったことまで全部コントロールできるので、より無駄なく侵攻を進めていくことができる。そこまでやり込めるだけの面白さ、ボリュームは十分にあるので、腰をすえてやり込んでみるのもいいだろう。
フリーソフトとは思えないボリューム。追加シナリオも!
筆者も十分にやり込めたとは言えないほど、本作はとにかく奥が深く、シナリオ数やユニットのバリエーション、遊び方も豊富にある。それでも足りない人には“シナリオ作成ツール”で独自のシナリオを追加制作することまで可能だ。システム面の完成度も高く、敵勢力の思考時間が短くテンポよく進行していくのはお見事! これが本当にフリーで遊べていいのかと思うくらいだ。最初は多少、とっつきにくさを感じる人もいるかもしれないが、人材プレイはあまり頭を使わなくても勝ちながら進んでいけるので対象プレイヤー層は広いと言えるだろう。これ一本あれば、夏休みも退屈する暇はなさそうだ。
- 【著作権者】
- ななあし 氏
- 【対応OS】
- Windows XP/Vista/7
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 5.62(12/07/12)