【第498回】
闇を逃れ、前進あるのみ!強制横スクロール型ローグ系RPG「片道勇者」
世界は一方通行!?繰り返し遊んで完全攻略を目指そう!
(12/09/21)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、一方通行の世界で前進が強制されるという独自のシステムを搭載し、何度でも挑戦したくなるRPG「片道勇者」をご紹介しよう。
魔王撃破を目指す片道キップ
「片道勇者」は、RPG制作ツール「WOLF RPG エディター」や多数の良質なゲームを発表しているSmokingWOLF氏による最新作。プレイのたびに新たな蓄積や発見を獲得できるやり込み度の高いRPGだ。基本的な作りは「風来のシレン」や「トルネコの大冒険」といった、死にながら覚える、いわゆるローグ系に近い。死んでしまったら最初からやり直しだが、次のプレイではそれまでに培った経験や知識でもっとうまくプレイできるというタイプだ。
ゲームの根幹となるのは、世界を飲み込みつつある“闇”の存在。通常のRPGならフィールドの行き来を繰り返せるところ、この世界では画面の左側から闇が迫り、徐々に世界を飲み込んでいく。このため、まるで横スクロールのシューティングゲームのような右方向への強制スクロールが発生するのだ。決して帰ることのない片道の冒険だから、「片道勇者」というわけ。
ゲームの目的は、闇の原因となっている“魔王”を撃破すること。ゲーム中、一定のタイミングで魔王とのエンカウントが強制されるので、それまでにレベルを上げ、装備を整えて戦いの準備をしなければならないのだ。
そこでポイントとなるのが探索要素。右方向への移動は強制されるものの、上下にもある程度の幅で移動することができる。そこで街や村を見つければ商人からアイテムを購入でき、魔物の巣を見つければ戦闘を繰り広げてレベルを上げることができる。また、特別な場所を見つければ強力な武具を手に入れることができるかも?
とはいえ、背後から迫る闇は待ってくれない。建物に入って用事を済ませる間にもどんどん闇が迫ってきて、うっかり飲まれてしまったらゲームオーバー。ときにはせっかく見つけたレアアイテムを取り逃し、泣く泣く前進しなければならないこともある。モンスターとの戦闘も同じく、長い時間をかけてはいられない。すべての出逢いが一期一会だから、常に最善の選択が求められ、スリルあるゲーム性を実現しているのだ。
習熟度に合わせて挑戦できる独自のシステム
ローグ系の例に漏れず、本作は一種のランダムダンジョンを採用している。ただし、単なるランダムというわけでもない。冒険の舞台となる世界の形は、世界の名前によって一意に決まるという仕組みがあるためだ。再チャレンジする際に同じ名前の世界を選べば、同じ形の世界が生成されるので、前回のプレイで得た知識を活用できる。アイテムを確保できる街などの位置や、死因となった地形などを覚えておけば特に有利だ。
スタート時に冒険の難易度も選べるので、慣れないうちは“やさしい旅”に挑戦してみよう。このモードでは、魔王が400km地点で必ず現れるようになっており、繰り返しプレイして大体の地形を把握しておけば万全の準備が可能。1プレイにかかる時間も30分程度と短く、軽い気持ちで始められる。もし負けてしまったら、同じ名前の世界に再チャレンジするもよし、異なる世界に旅立つもよし。次の冒険では経験に学んで、もっと先に進めるはずだ。
また、本作では知識や経験のほかにもプレイのたびに得られるものが用意されている。それは、冒険の成功・失敗にかかわらず、プレイ内容の評価によって獲得できる“伝説ポイント”だ。このポイントを使えば、次の冒険で使える新たなクラス(職業)や、ゲーム開始時に各種能力を追加できる“特徴”、別の世界にアイテムを持ち越せる“次元倉庫”のスロットなどをアンロックすることができる。
なかでも次元倉庫は、本作を繰り返しプレイするなかでの支配的な要素だ。先の冒険で手に入れた重要なアイテムを次元倉庫に入れ、次の冒険で活用すればぐっと攻略が容易になる。そうすれば“やさしい旅”を卒業して、より高い難易度の“普通の旅”(魔王が一定時間ごとに登場)や、いきなり強い敵が現れる特殊な世界にも挑戦できるようになるだろう。そうして冒険を続けるたび、さらに次元倉庫のストックが充実。コレクション欲がくすぐられて、本作のプレイがクセになることうけあいだ。
冒険するたびに現れる新たな発見
ひとつの世界を攻略しても、まだまだ遊びの幅は広がっていく。異なる名前の世界は異なる構造をもつため、スタート画面で新たな世界を選べば、また違った道程や、まだ見ぬアイテムとの出会いを体験できる。
また、世界によっては旅の途中にNPCの“仲間”と出会えることも。パーティに勧誘するためには主人公のパラメーターのひとつである“魅力”を消費したり、キャラクター毎に設定された条件をクリアする必要があるが、仲間を手に入れた後の冒険はぐっと賑やかだ。仲間は共に動いて戦闘に参加するだけでなく、条件を満たせば特別なアイテムを入手できたり、クリア時のエンディングを変化させたりと、本作における重要な攻略要素でもあるのだ。
というわけで本作の完全攻略を目指すなら、プレイの度に新たな仲間を見つけ、各種イベントの発動条件を探ったり、特殊エンディングを目指したりと、それだけでもかなりのボリュームだ。さらには、各冒険で獲得した伝説ポイントを使うことで新たなクラスに挑戦したり、初期能力に変化を加え、プレイするたびに違った体験ができる。何十回とプレイしてもまだまだ飽きないほどである。
ちなみに本作はネットワークにも対応していて、スタート画面でほかのプレイヤーと共通の世界を選ぶこともできる。もちろん、その場で実際にプレイするのは自分ひとりなのだが、同時にどこかでプレイしている人の進捗度が画面左上に表示されたり、ときには冒険の途中で死んでしまった人の“霊魂”に出会い、力を分けてもらうことも。このように控えめなネットワーク機能があることで、本作の世界はさらに豊かなものになっているわけだ。
ひたすら遊んで『このゲームを知り尽くした』と思ったなら、本作の攻略情報をまとめた非公式のWikiや掲示板コミュニティをチェックしてみよう。共通の世界を使って、厳しい条件を課しての特殊攻略(武器の使用禁止など)やタイムアタックといった熟練者向けの遊びが展開されている。初心者からベテラン、超級プレイヤーまで、「片道勇者」は何度でも、新たな刺激を与えてくれるゲームなのだ。
丁寧な作り込みで遊び手を惹きつける意欲作
本作は、強制スクロールという独自システムを搭載することで、いわゆるローグ系RPGの遊び方に新たな面白さを付け加えることに成功している。それに加えて、見やすくまとめられたグラフィックス、簡潔ながら必要な情報が網羅されたインターフェイス、耳に心地よいサウンドエフェクトやBGMなど、作りの丁寧さは商業作品にも劣らぬクオリティだ。
また、キモであるリプレイ性についても文句なし。バリエーション豊かなマルチエンディングシステム、幾人もの仲間、多彩なアイテムなど、プレイヤーの攻略意欲をそそる要素が多数ちりばめられており、とてもやりがいがある。独特のネットワーク機能のおかげで、ほかのプレイヤーと同じ世界に挑戦できる点も意欲をそそられるところだ。その他全般にわたって完成度が高く、一味加えればワールドワイドに通用しそうである。
1ゲームのプレイ時間は平均30分、長くても1~2時間程度とサクサク遊べるため、あまりゲームをする時間のない方でも気軽に始められるだろう。やりこみ派のプレイヤーでも長く遊べ、満足度の高い一作だ。
- 【著作権者】
- SmokingWOLF 氏
- 【対応OS】
- Windows 2000/XP/Vista/7
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.28(12/09/14)