週末ゲーム
第571回
ウディコン1位獲得の上方向スクロールアクション「RainyTower」
ブースターで塔の頂上を目指す。半獣キャラのSFストーリーも見どころ
(2014/9/12 12:44)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、第6回“WOLF RPGエディターコンテスト(ウディコン)”で1位を獲得したSFアクションゲーム「RainyTower」をご紹介する。なお、ウディコンの概要と結果に関しては以下の記事をご覧いただきたい。
強制スクロールの塔をブースターで登るアクション
「RainyTower」は、SF世界を舞台にしたステージクリア型のアクションゲーム。主人公達が乗った宇宙船が故障してとある星に不時着したという設定で、修理に必要な素材を集めるために大樹の中にある塔を登っていく。
ゲームはサイドビューの縦スクロールで進行。主人公が塔を登るのに使うのは、背中に背負ったブースター。ロケットベルトと言えばイメージが沸く人もいるかもしれないが、ジェット噴射で体を浮かせて塔の上へと向かう。ブースターの噴射方向はマウスカーソルで決め、左クリックで噴射。主人公には歩行する能力すらないため、移動はすべてブースターで行う。
ブースターは使用していると熱が溜まり、未使用時には放熱していくが、限界まで熱が溜まるとオーバーヒートしてしまい、落下した上、しばらく噴射力が弱まってしまう。
本作のポイントは、画面が徐々に上方向へと自動でスクロールしていく点。画面から消えていく最下部に主人公が接触するとミスとなるので、オーバーヒートを気にしつつ、足場から足場へうまく渡っていかなければならない。ミスした場合は、残機に相当する“E.A.D(Emergent Avoid Device)”を1つ使って自動的に復活。E.A.Dは一定時間が経過すると復活回数が回復する。
さらに最下部への落下以外にも、主人公が高い位置から落下して床に衝突したり、勢いよくブースターを噴射して頭を障害物にぶつけたりすると、ダメージを受けて“Health”が減少する。落下によるミスとは別に、Healthが0になるとステージから強制退去となる。
主人公の装備には武器もあり、右クリックで発射して障害物を破壊することもできる。塔の一面が壁になっていて通れない場所もあるため、ブースターで浮遊しながら武器で壁を破壊するという複合的な操作を求められることも。また後半のステージには敵も登場し、接触するとダメージを受けてしまう。武器は攻撃方法や威力が異なるものがいくつか入手できるので、壁の破壊や敵の撃破などの目的に合ったものを選びたい。
ゴールに設定されている高さまで登り切ればステージクリア。操作自体はマウスだけでほぼ完結するようシンプルにまとめられている。しかし、重力と慣性による動きをコントロールしつつ、適切なルートを選んで進むという、かなりシビアな操作が求められるゲームとなっている。
成長要素もたっぷり楽しめる
最初の手触りはとても難しいゲームなのだが、進行自体はそう難しくはない。プレイをサポートする要素として装備による強化があり、塔に落ちている“スクラップ”と呼ばれる素材を拾い集めて新たな装備を作成可能だ。装備品はメニューの研究開発によって作成する仕組みで、ブースターの冷却速度を上げたり、落下速度が遅くなったりする装備により、操作はぐっと簡単になる。
また装備のメンテナンスによる強化も可能。こちらは研究開発で入手できる“エネルギーセル”を使用し、ブースターの出力強化や落下時のダメージ軽減、E.A.Dの回復速度向上など、基本的な能力を高められる。
そもそも本作では何度でもステージに挑戦可能で、ミスを重ねてE.A.Dがなくなったり、Healthが0になったとしても、宇宙船へと戻されるだけで特にペナルティはない。それだけでなく、途中で入手した素材もそのまま持って帰れるので、プレイを重ねるほどに装備を強化できる。
また入手した装備は、同額でスクラップに戻すことが可能。とりあえず新しい装備を作ってみて、合わなければ他の装備を試してみる……とやっている間に素材が貯まり、他の装備も作れるようになる。難しくても、繰り返しトライしていれば主人公が確実に成長し、プレイヤーもそのうちに習熟してくる。
それなりにアクションが得意な筆者で、クリアまでの時間は2時間弱。多少手間取っても、その倍以上かかることは少ないと思われる。あまり急ぐとリトライの嵐になるが、慌てず騒がず冷静に、少しずつ登っていくのがプレイのコツだ。
ウディコン一番人気のストーリーも見どころ
本作のゲームとしての肝は塔を登るアクションにあるが、面白さという点ではストーリーも見逃せない要素だ。SF世界の舞台描写がユニークで、端々に笑える要素がある。
例えばフィールド外に落下した時のE.A.Dによる復活は、“クローンを用意しておき、主人公が死亡すると即座に記憶を移し替えたクローンを転送する”という説明がなされている。ゲーム的には何気なく復活しているのだが、主人公の視点からは“個体としては死んでいるけれど、自分という存在は続いている”という違和感があり、登場人物の会話として展開される。SFの理屈をゲームに繋げているところが面白い。
キャラクター同士の会話も楽しい。ゲームを進めて一定の条件を満たすことで、雑談カテゴリーにある会話が開放され、タイトルを選んで読むことができる。トラブルを解決して無事に帰投できても、上からのお叱りと大量の事務処理が待っている……と震える隊長もいれば、隊長を叱咤しつつ宇宙船から主人公の管理まですべてをサポートする女性技師もいて、緊急事態の悲壮感はなく和気藹々としている。また技師からはゲームと直接関係ない謎解きも提示され、解ければ大量のスクラップがもらえる。
そしてこれは好みが分かれるところだが、登場キャラクターはすべて半獣半人。会話的にはすべて人間とされているので、ビジュアル的な違いでしかないのだが、これもまた不思議な世界観の構築に一役買っている。主人公は“100歳くらいの若僧”と何事もなく語られるのも、一見してSF世界の話なのだなとわかるビジュアルのおかげとも言える。
ウディコンの結果を見ても、2時間程度で終わるゲームにも関わらず、最も高い評価を受けているのは“物語性”、次いで“画像/音声”と“熱中度”だった。アクションゲームらしからぬ評価だが、『もっと遊びたい!』と思わせる舞台であることは確かだ。アクションを否定するわけではないが、何なら続編でもスピンオフでもいいので、もっとストーリーを楽しめる作品として発展させてほしい……とさえ思うくらい、物語性の評価に納得させられるゲームだった。
ストーリーについては進行が早く、あまり触れると簡単にネタバレになってしまうため、極力触れないようにした。SFが好きな方、軽いノリの物語が好きな方、もちろんアクションゲームが好きな方、いずれも短時間で高い満足が得られるゲームなので、ぜひお試しいただきたい。
ソフトウェア情報
- 「RainyTower」
- 【著作権者】
- 標準誤差StR
- 【対応OS】
- Windows 2000/XP/Vista/7/8
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.03