週末ゲーム

第514回

時を止める少女が挑むクライミングアクション「孤高のアオイロ」体験版

シビアな操作と難解なパズルが生む抜群の緊張感

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、崖登りのアクションに時間を止めるという要素を加えた「孤高のアオイロ」の体験版をご紹介する。

何かに追われ、険しい山を越える少女の物語

主人公の少女。後に自分をアオと名乗るが偽名らしい

 「孤高のアオイロ」の舞台となるのは、荒廃した未来をイメージした世界。科学は発達したがエネルギーは底を尽きかけ、人々は残された資源を巡って争った。戦いの中で傷を負えば、科学の力で“兵器”へと変えられ、再び戦った。

 争う2つの国の間、人気のない山奥を一人進む少女“アオ”。彼女は“兵器”としての力を持ちながら、“兵器”であることを拒んだ。彼女は自分の“作者”を探すため、北へと向かう。

 このアオが、本作のプレイヤーキャラクターとなる。ゲーム開始時、アオは既に山間にいて、誰かに追われていることを気にしながらも先へと進んでいく。途中、アオの独り言や、後に出会う青年との会話から、彼女の素性や周囲の状況が徐々に明かされる。派手な演出やデモシーンはないが、何気ない感じで淡々と進む話はファンタジックで味がある。

人気のない険しい山道を一人で旅するアオ。当然ながら訳ありだ
途中で謎の青年と出会う。彼は協力的な態度を見せるが……

フリークライミングの緊張感あふれるアクション

アオを操作して崖を越え、先へと進む

 そのアオを操るプレイヤーがやるべきことは、山間の崖を越えて先へと進むこと。サイドビューのアクションゲームとなっており、切り立った崖を登り降りして、先へ進める経路を探し出す。

 平地では左右移動とジャンプという何でもないアクションだが、垂直に切り立った崖も登り降り可能。壁にジャンプすると飛びつき、そのまま上へ下へと移動できる。さらに壁に張り付いている状態から反対側へ飛び、そちら側にある壁に捕まることもできる。壁から壁へとジャンプして進んでいくのが、このゲームの特徴であり、移動の基本となっている。

 そんなスーパークライマーのアオだが、ジャンプに失敗して壁に捕まれなかったり、崖から足を滑らせて落ちたりすると、あっさり死んでしまう。落下距離がある程度の高さを越えると問答無用でゲームオーバーとなるため、僅かな操作ミスが命取りになる。もちろん命綱はどこにもない。

 落ちたら決して助からない高所で、飛び移る距離がかなり長い場所もある。こういった難所でも集中力を保って、落ち着いて操作することが求められる。慣れるまでは簡単にはいかないが、この命知らずなフリークライミングの緊張感が本作のアクションの面白いところでもある。

 なお本作は標準でゲームパッドにも対応している。もちろんキーボードでの操作も可能なので、慣れた方を使うことをおすすめする。

垂直な崖も楽々と登り降りする
遠くの足場までジャンプして移動
崖から崖へと飛び移るアクロバティックな動きも可能
失敗して高所から落下したら即ゲームオーバー

“時を止める”ことで生まれるパズル要素

途中から使える時間停止アクション

 崖登りの操作に一通り慣れた頃、新たな要素が追加される。アオには、時間を止めるという力が備わっており、途中からその力を使って進むことになる。アオが真横に何かを投げると、命中した部分を中心に円が描かれ、それに接している部分の時間が一時停止する。

 時間を止めるというと、追手から逃げるのに便利そうだと考えるところだが、本体験版ではそういった敵キャラクターは登場しない。その代わりに、フィールド上にあるオブジェクトの一部が変化する。

 まずは茂みやレンガのような色の濃いオブジェクト。通常時は他の岩などと同様に捕まって登り降りできるのだが、時間が止められている間は実体が消失し、通過できるようになる。そのままでは通れない場所が通れるようになるので、新たな経路を作れる。

 逆に半透明に見えるパネルのようなオブジェクトは、通常は実体がなく通り過ぎられるのだが、時間を止めると実体となって現われる。その間は他のオブジェクトと同様、乗ったり登ったりできるので、これも新たな経路が生まれる。

 これらのオブジェクトは、ただ消したり出したりすれば道ができるという簡単なものではない。何も考えずに時間を止めれば、自分が立っている足場を消してしまい落下、という笑えない事態も起こりうる。また半透明パネルと触れている状態で実体化させたり、消失したオブジェクトに重なったまま時間が動き出すと、少女がオブジェクトに埋もれてしまい、すぐに脱出しないと死んでしまう。

 この時間操作は、命中した場所から一定範囲に限られる、というのが攻略のポイント。当てる位置を考えて投げることで時間停止の範囲をコントロールし、特定のオブジェクトだけを消失・実体化させ、新たな経路が作れる場所もある。このパズル的な仕掛けを発見できないと先に進めない、という場所もいくつも用意されている。

茂みなどの色が濃いオブジェクトは、時間を止めると実体が消失する
逆に半透明のパネルは普段は実体がなく、時間を止めると出現する

アクションとパズルの両面でトライ&エラーを繰り返す

時間を止めてオブジェクトを変化させ、すばやい操作で先へ移る

 クライミングアクションと時間停止のギミックが合わさるとどうなるか。時間停止させられるのは命中から一定時間なので、仕掛けを見抜いた上で、すばやく正確な操作が求められる。壁から壁へ飛び移る一瞬の合間に投げて時間停止させるようなアクロバティックな操作が必要な場所もある。もたつけば足場が消失して落下、登っている最中に壁が復活して落下……とゲームオーバーへ一直線な仕掛けも山盛りだ。

 アクションが得意な人なら、すばやい操作にはさほど苦労しないだろう。しかし、そもそもどんなアクションによって先へと進めるのかがわからないことにはどうにもならない。逆にパズル要素が理解できても、適切なアクションをこなせないと、やはり先に進めない。その両方を求められるため、とにかくあちこちで、頻繁にゲームオーバーになってしまう。

 ただ、ある程度進めば自動セーブポイントがあり、その後はそこから再開できる。また限定的ながら、自分で再開ポイントも設定できる機能もある。仕掛けを越える方法を考え、試し、失敗を繰り返し、先へと進んでいく。いわゆる“死んで覚えるゲーム”としては、程よい歯ごたえがある。

 死なないようにするには、時間が許す状況では慎重に操作することと、周囲をよく確認すること。落下死する3ブロック分程度の高さでも、ギリギリで生き残れるような場所はないか、先をよく見て動くのが大切だ。周囲を確認するには、アオ自身を動かさずに視点だけを動かす視点移動と、周辺の地図を開く方法がある。

 ゲームにはストーリーに沿って進める通常モードのほかに、攻略だけを目的とした“Trial”モードも用意されている。時計のようなオブジェクトが置かれたゴール地点に到達すればクリアというシンプルなルールになっており、一度クリアしたステージはタイムアタックも可能になる。初級・中級・上級と用意されているが、通常モードに比べると初級からかなり難しいので、クリア後のお楽しみとしてプレイするのがおすすめ。

視点を動かして先を見ることで、安全な場所を探す
地図も活用しながら攻略の糸口を探っていく
時間停止で先へ進めるはずだが、どうすれば道が開けるだろうか?
Trialモードはアクション的にもパズル的にもかなり難しい。上級になると途方に暮れるレベル

まだまだ序盤とは思えないボリュームに満足の一本

たっぷり遊んだつもりでも、まだまだ序盤。“数日後”が見られるのはまた今度

 本作は執筆時点では体験版として配布されており、最後まで遊んでも、物語はまだまだ序盤という感じ。ただゲームとしては現状でも結構なボリュームがあり、最初だけ遊べるお試し版だと甘く見ていると、アクションとパズル要素の両方に歯ぎしりすることうけあいだ。

 アクションゲーム好きの筆者はアクションで詰まることはほぼなかったが、時間停止のギミックが登場した後のステージや、Trialモードの上級では、仕掛けがわからず頭を抱えてしまう場面もあった。クリアまでにトータルで4~5時間ほどプレイしたところ、体験版にも関わらず1本遊びきったという達成感を覚えたほどだ。

 作者によると、今後はさらに先まで遊べる体験版を2度ほど公開した後、完成版を同人即売会にて販売、さらにシェアウェアとして公開したいとしている。ストーリーはいくつかの伏線が張られた状態で終わっているので、この先どんな展開が待っているのかが気になる。同時に、今後はもっと難しいステージが出るのだろうと思うだけで、崖っぷちの緊張感が蘇る。強烈な印象を残してくれた本作の完成を楽しみに待ちたい。

ソフトウェア情報

「孤高のアオイロ」体験版
【著作権者】
せせき 氏
【対応OS】
Windows XP/Vista/7(編集部にてWindows 8でも動作確認)
【ソフト種別】
体験版
【バージョン】
1.01

(石田 賀津男)