石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

「GeForce NOW」がGeForce RTX 5080にアップグレード……したはずなのに4080相当のままなのはなぜ?

「GeForce NOW」のメイン画面

最新の5080リグはどこに?

 NVIDIAのクラウドゲーミングサービス「GeForce NOW」にて、新たなリグ(サーバー)となる「GeForce RTX 5080 SuperPOD」の導入が9月10日より始まった。従来の「GeForce RTX 4080 SuperPOD」から、1世代進む形だ。新たな5080リグを利用できるのは、メンバーシップ(料金プラン)最上位のUltimateのみ。

 5080リグになると、単純な性能向上に加え、DLSS 4マルチフレーム生成の対応、最大5Kの解像度、最大360fpsのフレームレートなど、機能面でもアップグレードがある。既存のUltimateから追加費用はかからないため、ユーザーとしては無料でスペックアップする形だ。サーバー設備のアップグレードはクラウドゲーミングサービスの大きなメリットの1つと言える。

 筆者も早速試しているのだが、9月16日時点では5080リグに接続できておらず、従来通りの4080リグでしか動かせない。アップグレードを大々的に発表し、料金プランにも書かれているサービスが受けられないとはどういうことなのか、状況を確認していく。

対応は一部のゲームだけ、しかも日本はまだ?

 まずは本サービスのメンバーシップ一覧を見ていただこう。

3つのメンバーシップ

 今回のタイミングに合わせて、料金体系にも変更が入っている。従来は1日利用の「Day Pass」、1カ月プラン、6カ月プランの3つだったが、6カ月プランが廃止され、12カ月プランが用意された。既に6カ月プランを利用している場合は、プラン変更をしない限り、契約済みのプランを継続できる。

 Ultimateプランの場合、12カ月35,990円という設定。GeForce GPUは概ね2年に1回のペースで新製品が出ているので、2年で7万円強支払えば、ハイエンドスペックのPCに乗り換えながら使えるイメージになる。もちろん今後料金が変わるかもしれないし、接続用端末やディスプレイ、高速で安定したインターネット回線は別途必要なのだが、それでも同スペックのPCを買いそろえるよりは安価だ。

 さて、サービス内容を確認すると、UltimateはGeForce RTX 4080を使用するという記載になっているが、後ろに5080リグに関する説明が追加されている。ここから想像するに、現時点ではUltimateの基本は4080リグであり、5080リグが一部だけに追加されている。

 問題は、その一部がどういう意味なのか。これにはどうやら3つの答えがある。

 1つ目は、5080リグを利用できるのは、「GeForce NOW」アプリ内でGeForce RTX 5080対応とされたタイトルのみであること。対応アプリは現時点で17タイトルで、今後、週ごとに追加される予定。「Apex Legends」など基本プレイ無料のゲームも含まれる。裏を返せば、この17タイトル以外を選んでも5080リグは使われないということだ。

 2つ目と3つ目は、今回のアップグレードを紹介するWebサイトに書かれている。テキストの情報によると、5080リグは利用枠に限りがあるという。既存の4080リグを全て5080リグに置き換える作業ではなく、4080リグを残しつつ一部だけを置き換える、あるいは単純に5080リグを追加するというイメージだ。

5080リグの利用枠は限られているらしい

 GeForce RTX 5080対応のゲームを起動しても、5080リグを既に他のユーザーに全て割り当て済みであれば、空きが出るまで4080を割り当てていくことになる。5080リグの数が揃うまでは、なかなか5080リグを引き当てられないという状況になるだろう。

 ただ、日本はそれ以前の状態かもしれない。先に示したWebサイトにある画像を見ると、米国の4地域と、フランス、ドイツから各1地域、計6地域だけが淡い緑で輝いている絵が示されている。この絵が何を示しているのかという説明はないのだが、文脈から読み取れば、この6地域が先行して5080リグを導入しているということだろう。

 日本(Tokyo)はブラックアウトしている状態、つまり5080リグが未導入の可能性がある。日本のサービスの価格表に5080の文字があるのに、5080リグが1つもないなら問題だが、ユーザー側からそれを調べる術もなく、増設されるのを待つしかない。

 以上のような状況で、筆者は時間帯を変えながら「サイバーパンク2077」を何度も起動し、ベンチマークテストを実行してスペックを確認しているが、今のところ全て4080リグだ。

「サイバーパンク2077」は、ベンチマークテストの実行結果でPC(この場合はサーバー)のスペックを確認できるが、今のところ全部4080リグを引いている

より安価なプランでも強化されるのか?

 本サービスにはより安価なメンバーシップとしてPerformanceがある。Ultimateの半額強となる12カ月17,990円で、リグはGeForce RTXとしか記述されなくなった。以前から変更がなければGeForce RTX 3080相当のリグとなっているはずだ。

 Ultimateに5080リグが導入されたことで、余った4080リグを玉突き的に3080リグと置き換えていく……というのが自然な流れかと思うのだが、今のところそういった情報は出ていない。いずれ機器は更新していく方が維持管理費や消費電力の面でメリットがあるのは確かだが、5080リグがまだまだ不足している段階なので、近いうちに何か変わることはなさそうだ。

 ただ、リグの名前から3080の文字をあえて消しているのは意味があると思っている。Ultimateのスペックが16vCPUと56GB DRAMとされているのに対し、Performanceは8vCPUと28GB DRAMとなっている。これはちょうど半分になる数字だ。

 つまり将来的に3080リグを4080リグに置き換えるとしたら、1台に割り当てるユーザー数を2倍にしてシェアすることで、この数字を設定できる。Ultimateから半分の料金で、スペックも半分になると思えば、ユーザー的にも納得できる。実際にはVRAMの量の違いなどもあり、厳密には半分ではないと思われるが。

 いずれPerformanceプランも新しいリグに更新していくはずだが、スペックが劇的に向上するかはわからないし、そもそも予定として発表すらされていない。まずはUltimateプランの改革が先に進められるのだろう。

 本当は今回の記事で、5080リグがどれだけパワーアップしたのかをお見せしたかったのだが、それは次回以降、筆者が5080リグを引けた後にお伝えしたい。もっとも、「サイバーパンク2077」でパストレーシングを使用する最高画質設定を選び、4K解像度でフレーム生成なしでも50fps程度出ているのを見ると、4080リグでも十分だな、と思ってしまうのだが。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』 記事一覧

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。