石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

「GeForce NOW」のNVIDIA直営サービスを試す ~新設のUltimateプランはGeForce RTX 4080を超える性能?

「GeForce NOW」アプリのメイン画面

NVIDIA直営化とUltimateプランを追加した「GeForce NOW」

 クラウドゲーミングプラットフォーム「GeForce NOW」の日本サービスにおいて、NVIDIA直営によるサービスが4月から始まった。日本では以前からソフトバンクとKDDI(au)がサービスを提供していたが、ソフトバンクが3月で撤退し、ほぼ入れ替わりでNVIDIAによるサービスが始まっている。

 ソフトバンクでのサービスは当初、有料のプレミアムプランが月額1,980円で提供されていたが、2023年7月からは月額550円へ大幅に値下げされた。NVIDIAでのサービスでは有料プランが2つになり、月額1,790円のPriorityと、月額3,580円のUltimateが提供される。ソフトバンクと比べると値上げした印象を持ってしまうが、割安になる6カ月契約が新たに追加されたほか、無料のFreeプランや1日利用権のDay Passも用意されている。

 NVIDIA直営サービスに変わったことに合わせて、機能面もアップグレードした部分がある。その解説と、Ultimateプランでの実際の使用感をお伝えする。

無料のFreeプラン、従来サービス並のPriorityプラン、強化版のUltimateプランの3つが提供されている

高性能化だけでなく多機能化したUltimateプラン

 まず「GeForce NOW」について改めて説明しておくと、クラウド側にゲームを実行するサーバーがあり、その映像とユーザーの操作をインターネットを介してやり取りするというサービスだ。手元のPCにはストリーミング映像を再生できる程度の処理能力があり、ストリーミング映像を受け取れる程度の通信環境(最低15Mbps)があれば利用できる。

 高価なゲーミングPCを用意することなく、3Dゲームを高画質でプレイできる仕組みだ。ただしゲームソフトは利用料金には含まれておらず、SteamやEpic Gamesなどのゲーム配信プラットフォームでソフトを入手しておく必要がある。詳しくは下記の記事をご覧いただきたい。

 NVIDIA直営のサービスで最も大きな変化は、Ultimateプランの導入だ。Priorityプランは従来のサービスに近い内容で、最大解像度はフルHD(1,920×1,080ドット)、フレームレートは最大60fpsとなっている。

 Ultimateプランでは、新たに導入されたGeForce RTX 4080リグを使用する。これにより解像度は最大で4K(3,840×2,160ドット)、フレームレートは最大120fpsおよび240fps(解像度1,920×1,200ドット以下)に対応する。さらに可変リフレッシュレート機能の「Cloud G-SYNC」や、システム遅延を減らす「Reflex streaming mode」が使えるようになる。

 ただし各機能を利用するには、ユーザー側のPC環境にもそれなりの準備が必要になる。まず解像度については、当然ながらストリーミングで指定する以上の解像度を備えたモニターが必要になる。指定可能な解像度は4Kのほか、WQHD(2,560×1,440ドット)、ウルトラワイドと言われる3,840×1,600ドットや3,840×1,080ドットなど、かなり幅広く用意されている。

 リフレッシュレートについてもディスプレイ側がそれ以上のリフレッシュレートに対応していることは前提。さらに4K/120fpsで利用したい場合は、少なくとも45Mbps以上の通信速度が必要となる。

 リフレッシュレートと解像度の設定は、設定のストリーミング品質も関係してくる。標準設定の「バランス」だと、4K/60fpsとなる。「コンペティティブ」を選べば、フルHD/240fpsの設定。「カスタム」では4K/120fpsを選択でき、最大ビットレートも75Mbpsまで指定できる。

標準設定の「バランス」だと4K/60fpsが選択されていた
「コンペティティブ」を選ぶとフルHD/240fpsの設定になる
「カスタム」で調整すると4K/120fpsが選べる

 「Cloud G-SYNC」については、G-SYNC(compatibleを含む)、FreeSync、Apple ProMotionのいずれかに対応したディスプレイが必要。またPCはTuringアーキテクチャ以降のNVIDIA製GPU(GeForce GTX 16シリーズまたはRTX 20シリーズ以降)が必要になる。CPU内蔵グラフィックスを含む他社製GPUでは今のところ使用できない。

 「Reflex streaming mode」についてもGPUの制限があり、GeForce 10シリーズ以降、またはIntel HD 610以降(第6世代Core以降の内蔵グラフィックス)が必要になる。さらにストリーミング品質を「コンペティティブ」にするか、「カスタム」で[Reflex]の項目をONにする。

 加えてゲーム側の対応も必要で、タイトル一覧でフィルタ(右上にある下三角形の3本線)を選び、[グラフィック機能]で[Reflex]にチェックを入れると、対応タイトルが表示される。対応タイトルを起動したら、ゲーム内の設定で「NVIDIA Reflex」を有効化することで、ようやく「Reflex streaming mode」を使用できる。

タイトル一覧で[Reflex]対応ゲームをフィルタリングすれば対応タイトルを捜せる

 Ultimateプランの機能を使い切ろうと思うと、それなりの環境が必要になってくる。特にGPUでGeForce RTX 16シリーズ以降が必要などと言われると、「だいたいのゲームはローカルで動かせばいいのでは?」という気もしてくるが、そこはGeForce RTX 4080リグのパワーが価格に見合っているかどうかで判断すればいい。

ローカルPCのGeForce RTX 4080よりパワフル?

 ということで実際に「GeForce NOW」のUltimateプランを使ってみよう。基本的な使い方は以前と同様で、Ubisoft、Epic Games、Steam、Xboxの4つのプラットフォームを紐づけし、所有するゲームの中から「GeForce NOW」の対応ゲームを利用できる。

 それ以外のプラットフォームで提供されているゲームも一部存在する。例えばSteamで販売されているゲームが他のプラットフォームでも販売されている場合、そちらのアカウントでもゲームを利用できるようになっている。例えば「Diablo IV」はSteamで販売されているが、本家であるBattle.netのアカウントでもログインできるようになっている。

「Diablo IV」も「GeForce NOW」に対応しており、SteamだけでなくBattle.netも選択できる
Battle.netを選んでプレイを開始すると、最初にBattle.netでログインを促される
解像度4K、かつ高画質設定でも問題なくプレイ可能

 実際の使用感だが、良好なインターネット回線さえあれば、普通に使えて快適なことはもうわかっている。遅延は普通にプレイしていても感じられないし、「Reflex streaming mode」に対応するタイトルならより高速になるはずで、eスポーツでもしない限り不満はないレベルだ。

 と言って終わってしまうのももったいないので、ちょっと意地悪なテストをしてみようと思う。高画質・高負荷で知られる「Cyberpunk 2077」に搭載されているベンチマーク機能を試してみる。

 解像度は4K、垂直同期オフ、画質設定をクイックプリセットで「レイトレーシング:オーバードライブ」に設定してベンチマークを実行。するとベンチマークの準備中に接続が切られるという問題が繰り返し起きた。画質設定が超高負荷なのが原因かは不明だが(この時たまたま「GeForce NOW」でトラブルが起こっていたようだが、それも含めて原因は不明)、1段階設定を落として「レイトレーシング:ウルトラ」で再試行したところ実行できた。

 合わせて筆者のPCでも同じベンチマークを実行する。GeForce RTX 4080搭載のZOTAC製ビデオカード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 16GB AMP Extreme AIRO」を搭載しているPCだ。Ultimateプランで使われているGeForce RTX 4080リグと名前は同じだが、性能に違いはあるだろうか? 結果は下のようになった。

「GeForce NOW」Ultimateプラン、DLSSフレーム生成なし:平均81.28fps
筆者ローカルPC、DLSSフレーム生成なし:平均73.85fps
「GeForce NOW」Ultimateプラン、DLSSフレーム生成あり:平均86.42fps
筆者ローカルPC、DLSSフレーム生成あり:平均108.45fps

 まずDLSSによるフレーム生成なしの設定では、「GeForce NOW」では平均約81fpsとなった。対して筆者のPCでは平均約74fpsと、約1割も低い。しかしDLSSフレーム生成ありにすると、「GeForce NOW」は平均約86fpsだったのに対し、筆者のPCは約108fpsと大幅に伸びた。

 あくまで「Cyberpunk 2077」だけでの話だが、基本的な性能は筆者のPCを明らかに上回っているが、「GeForce NOW」のUltimateプランではDLSSフレーム生成の効果があまり出ないようだ。とはいえ向上は見られるので無駄ではないのだが。

 このベンチマークを実施したことで、GeForce RTX 4080リグのスペックが見えている。GPUは筆者のPCと同じGeForce RTX 4080と書かれているが、ビデオメモリは20GBあり、市販のGeForce RTX 4080の16GBを上回っている。またCPUもRyzenの16コアと書かれており、CPUとGPUの両方で筆者のPCのスペックを上回ったことで、性能差が出ているのかもしれない。

 いずれにしても「GeForce NOW」Ultimateプランが一般的なGeForce RTX 4080搭載PCと同等以上の性能を持っており、「Cyberpunk 2077」を4Kの超高画質でプレイするのに十分であることは確かだ。従来のサービスやPriorityプランなどと比べても高性能であることは間違いないだろう。

 Ultimateプランは1カ月3,580円だが、6カ月プランなら17,900円となり、1カ月あたり2,983円となる。現時点ではGeForce RTX 4080およびGeForce RTX 4080 SUPERが17万円前後はするので、Ultimateプランを約5年使用してようやくビデオカード代がペイできるということになる。そう考えるとかなり現実的な価格である。

 また手元に強力なビデオカードがないことで、PCが数百ワットの大電力を消費することもなく、冷却ファンの騒音や排熱に悩むこともなく、巨大なゲーミングPCを置く場所に悩むこともない。ストリーミングできる通信環境さえあれば、PCが変わっても継続して遊べるのも便利だ。使用上のメリットもかなり大きい。

 デメリットは十分な通信環境を確保できるかどうか。ゲームをプレイする時間帯に安定した通信速度が得られていることが前提となるので、自宅の通信環境の品質はそれなりに求められる。また出先で遊べるかどうかは、出先の通信環境による。

 あとは遊びたいゲームが「GeForce NOW」に対応しているかどうか。インディーゲームを遊びたいという人には向かないのは間違いないし、MMORPGがあまり対応していないのも事実だ。アプリをインストールして、対応タイトルを調べてみるしかない。

 その辺りを考慮して、自分に合っていると思ったら利用してみて欲しい。1カ月だけ試してみるという手があるのもメリットと言えるだろう。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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