石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
「モンハンワイルズ」をクラウドゲーミング「GeForce NOW」で遊ぶべき理由と注意点
安定した回線があれば、格安な初期投資でハイエンド環境が整う
2025年3月13日 16:44
「GeForce NOW」で「モンハン」を遊ぼう
「モンスターハンターワイルズ」の発売から10日ほどが経った。楽しくプレイしている声が聞こえる一方で、プレイ環境がなくて遊べないという声も聞かれる。
本作は最低動作環境として、GPUにGeForce GTX 1660/Radeon RX 5500 XTが要求されている。この環境ではアップスケーリングを使って、最低画質設定でフルHD/30FPSとされており、動作はしても快適とは言えない。推奨環境とされるGeForce RTX 2060 Super/Radeon RX 6600では、フレーム生成を使用して中画質設定のフルHD/60FPSという想定で、ここが最低ラインという印象もある。
新しいPCを購入すればいいのだが、昨今はGPUが極めて高価になっている。現在の「Steam」ユーザーで最も使用率が高いというGeForce RTX 4060だと、単体で5万円台。最高画質のウルトラで4K解像度を想定するとGeForce RTX 4070 Tiとのことだが、GPUが世代交代のタイミングとなるためか、現在はほとんど市場にない。最新世代のGeForce RTX 5070であれば、通販サイトで15万円台から売られているのが見つかる。
上記はいずれも自分でPCケースを開き、ビデオカードを交換できる前提での価格だ。さらにPCケースのサイズ、電源の仕様などから、新しいビデオカードを取り付けられないこともあり得る。そうなるとゲーミングPC一式となって、なかなか手が出ない価格になってくる。
そこで筆者がご提案したいのが、NVIDIAが提供するクラウドゲーミングサービス「GeForce NOW」だ。初期投資を大幅に抑えつつ、快適なプレイ環境を入手できる可能性がある。
最高画質で快適にプレイ
「GeForce NOW」は、クラウド上でPCゲームを動かし、映像をストリーミングでユーザーに送ることで、リアルタイムにゲームをプレイするというもの。「Steam」、「Epic Games」、「Xbox(Microsoft)」、「Battle.net」、「Ubisoft」とゲームを同期して、各ストアで購入したゲームをプレイできる。詳しい仕組みについては下記の記事をご覧いただきたい。
「モンスターハンターワイルズ」が「GeForce NOW」の対応したのは、ゲームの発売から1週間ほど経った後。発売当時は未対応だったが、現在はプレイ可能だ。
早速、「GeForce NOW」で本作を動かしてみよう。筆者のディスプレイ環境は4K/60pで、「GeForce NOW」のメンバーシップは上位コースのUltimate。ゲーム側の設定も最高画質でフレーム生成OFF、DLSSのアップスケーリングをクオリティに設定してみた。
大型モンスターを1人で狩猟してみたところ、ローカル動作と比べて操作の遅れや画質の低下を感じることもなく、何ら違和感なくプレイできた。フレームレートも狩猟中は滑らか。NPCやオブジェクトが多いキャンプは若干重く感じたが、プレイに支障はない。
画質設定も最高にしてあるだけに、とても美しい。デモシーンでカメラにキャラに寄った時などは、服の質感1つとっても見飽きないくらい精密な映像を楽しめる。
ゲーミングPCは不要だが、安定した通信環境は必須
本作のプレイ環境としては申し分ない「GeForce NOW」を利用するにあたり、基本的なことをおさらいしておく。
まず料金について。Ultimateプランは月額3,580円で、6カ月なら17,900円。年換算なら35,800円だ。また下位のPerformance(旧Priority)プランだと、月額1,790円、6カ月なら8,950円。年換算で17,900円となる。
プランの内容の違いは、Ultimateの方が高性能なリグ(クラウド上のマシン)を使用しており、利用できる機能が多い。Performanceだと、解像度は1440p、フレームレートは60FPSが最大だが、Ultimateなら4K/120FPSやフルHD/240FPSも利用できる。
またHDRやDLSS、遅延を減らす「NVIDIA Reflex」、同期機能「Cloud G-Sync」を利用できるのもUltimateに限定される。ざっくり言うと、ゲーミングディスプレイの性能をフルに使いたいならUltimateの方がいい。
本作のためにどちらを選ぶかと考えれば、高性能リグが使えるUltimateの方が高画質設定が選べるメリットがあるが、とりあえずプレイ環境が欲しいということならPerformanceでも十分満足できるはずだ。
「GeForce NOW」を利用するには、安定したインターネット接続が必要になる。フルHD/60FPSで25Mbps、4K/120FPSなら45Mbpsが必要とされている。アプリの設定では最大ビットレートを75Mbpsに設定可能だ。
接続は有線または5GHz帯のWi-Fi接続が推奨されている。2.4GHz帯は電子レンジなど他の機器の影響を受け、通信速度が低下しやすいためだ。現在ならばWi-Fi 6Eや7で使用できる6GHz帯の方がよりよい。なお筆者の経験上、5GHz帯のWi-Fi 6接続でも稀に不安定になることがあり、やはり有線接続の方が安定度が高いと感じている。
「GeForce NOW」で最も重要なのが通信回線で、いくら光回線を導入していても、夜間の混雑などで速度が低下する環境では、映像が乱れたり操作が遅れたりする可能性が高い。自分がプレイする時間帯にインターネット通信速度の低下を感じているなら「GeForce NOW」はおすすめできない。まずは自宅のインターネット環境の見直しから始めて欲しい。
クラウド上でゲームを動かすメリットは意外と多い
「GeForce NOW」のメリットとデメリットについて、もう少しお話ししたい。
最大のメリットは、少ない初期費用でハイエンド級のPCゲーム環境が整うこと。Ultimateで年額35,800円と言われると高いようにも感じるが、同程度のゲーミングPCを用意すると、GeForce RTX 4080を搭載した製品で、だいたい30万円スタートになる。
メリットとして意外と盲点なのが、ローカルでゲームを実行しないこと。高負荷のゲームはPCの消費電力も大きく、それにともなって発熱や騒音も大きくなる。プレイ中にPCからの騒音や排熱を気にしなくていいのは大変ありがたい。
PCの消費電力を抑えられれば、電気代も下がる。例えばUltimateと同等のGPUとなるGeForce RTX 4080をフルで動作させた場合、300W以上の電力を消費する。1kWhの電気料金が35円程度とすると、1時間で10.5円。100時間遊べば1,050円節約できる計算だ(実際はCPUなどの消費電力も節約できる)。
またゲーム用のストレージも不要。最近は1本100GBを超える作品も珍しくなく、高速なSSDもすぐ埋まってしまいがち。「GeForce NOW」ならゲームを何本購入しても、ローカルストレージを圧迫することはない。
そして端末を問わず利用できるのも大きい。大きなゲーミングPCである必要がなくなり、モバイルノートPCや、リビングのテレビに接続した小型PCなどでも同じように遊べる。ゲームパッドを用意できれば、スマートフォンでも快適にプレイできる。そしてこれらの環境を行き来してプレイを継続できる。結果的に、PCゲームがとても手軽に遊べるようになる。
デメリットも述べておこう。「GeForce NOW」では2025年初頭から、1カ月当たりの利用時間が最大100時間に制限されることになった。これはプラン問わず共通だ。1日平均3時間半以上プレイするなら制限に届くことになる。
「GeForce NOW」の利用者のデータによると、100時間に達するのはユーザーの6%未満とのこと。利用時間が100時間に達した場合は、15時間単位での追加購入も可能としている。もし100時間を大幅に超えそうという方は、利用すべきかの判断基準の1つになるだろう。
そして最も注意すべき点は、全てのゲームが遊べるわけではないということ。「GeForce NOW」に登録されたゲームのみが利用できる。現在はメジャーな作品は概ね利用できる印象だが、「モンスターハンターワイルズ」は発売から数日は利用できなかったように、新作が必ず遊べる保証はない。
2Dゲームなど、低負荷なものは対象外のことが多いが、これは手元のPCで動かせばよい。困るのはインディーゲームなど、マイナーな作品で高負荷なもので、「GeForce NOW」で登録されない限りは遊べない。マイナーなタイトルを遊ぶことが多い方には向かないサービスだ。
逆に言えば、高負荷でメジャーなタイトルを遊びたいのであれば、「GeForce NOW」はとても価値あるサービスになる。「モンスターハンターワイルズ」は「GeForce NOW」に最適なタイトルの1つと言える。
いきなり6カ月の契約は不安ということなら、とりあえず1カ月で試して検討してみるといい。何なら24時間限定のDay Passも用意されている(650円/1,300円とやや割高感はあるが)。
ちなみにゲーム側のアップデートがあった場合、「GeForce NOW」のリグ側出のアップデートが終わるまではその作品を利用できない。先日は「モンスターハンターワイルズ」のアップデートがあり、「パッチ適用中」とされプレイできない時間帯があった。筆者のローカル環境ではすぐにアップデートが終わり実行できたので、今後はダウンタイムを少しでも短縮できるよう改善が進むと嬉しい。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。