石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
「モンスターハンターワイルズ」はフレーム生成機能を使わない方がいい?
快適なプレイのために知っておきたいグラフィックス周りの機能や問題点
2025年3月6日 16:49
すごい映像のゲームは設定も難解
「モンスターハンターワイルズ」の発売から数日が経った。既にストーリーをクリアしたとか、ハンターランク100に到達したとかいう声がSNSで聞こえており、プレイヤーの熱狂度がうかがえる。
本作の販売本数は、発売3日で800万本を超えたという。これは全世界、全プラットフォームの総計で、かつ予約数も含めたものと思われるが、同社史上最速での達成としている。もちろん「モンスターハンター」シリーズにおいても最速ということになる。
『モンスターハンターワイルズ』が発売から3日で全世界販売本数800万本を達成しました!
— 【公式】モンスターハンターワイルズ (@MH_Wilds)March 4, 2025
ハンターの皆様、誠にありがとうございます!
これからも『モンスターハンターワイルズ』並びに「モンスターハンター」シリーズをよろしくお願いします!https://t.co/RL1TQhlX1u#モンハンワイルズ#MHWilds
「Steam DB」によると、本作の最多同時接続数が約138万となっている。これは歴代の全「Steam」提供作品の中で第5位(ちなみに第3位に「パルワールド」がいる)。「Steam」全体での同時接続数も4,000万を突破しており、本作が「Steam」の同時接続数を押し上げたと見られている。
筆者は本作をぼちぼちと遊んでいる状態だが、今回はゲーム内容そのものの話題ではなく、PC版のグラフィックス設定や問題点への対処について語っていきたい。本作は要求スペックが高いことが発売前から話題になっていたが、その分、グラフィックス設定も難解になっているので、その辺りの解説も交えていく。
DLSSなどのフレーム生成機能の是非
まずはフレーム生成機能について。本作はDLSSやFSRによるフレーム生成機能に対応しており、使用すればフレームレートを格段に高められる。
DLSSはNVIDIAが提供するAI機能で、GeForce RTXシリーズ向けのもの。FSRはAMDが提供するAI機能で、基本的にはRadeonシリーズ向けではあるが、他社製GPUでも機能する。ほかにもIntelが提供するXeSSがあり、これも他社製GPUで機能する。
フレーム生成機能は、見た目の映像を滑らかにしてくれるので、プレイ感覚の向上に役立つ。特にPCの性能が不足している場合や、より高い解像度や高画質でプレイしたい時には有用だ。
ただし、使用は必須ではないし、デメリットもある。動きが滑らかになる代わりに、仕組み上、表示遅延が大きくなる。アクション性の高いゲームでは、一瞬の操作の遅れが大きな影響を及ぼし得るので、表示遅延を気にするならばOFFにする方がいい。
筆者の環境で実際に比較してみよう。筆者のPC環境は、GeForce RTX 4080搭載のZOTAC製ビデオカード「ZOTAC GAMING GeForce RTX 4080 16GB AMP Extreme AIRO」で、Power Limitを65%に制限している(騒音と消費電力を減らすため)。この状態で、DLSSによるフレーム生成機能をON/OFFして違いを確かめる。
GeForceシリーズを搭載した環境では、[Alt]+[R]キーで、パフォーマンスオーバーレイを呼び出せる。フレームレートやCPU/GPU使用率に加え、遅延も表示できるというものだ。これによると、フレーム生成機能をOFFにしている状態で、タイトル画面のフレームレートは49FPS、遅延は52.4ミリ秒となった。
この状態でフレーム生成機能をONにしたところ、フレームレートは76FPSと大幅に上昇したが、遅延は63.4ミリ秒となった。撮影するタイミングで若干の変動はあるが、概ね10ミリ秒程度は遅延が増えている。
一般的なディスプレイで使われる60Hzのリフレッシュレート環境だと、1フレームは約16.7ミリ秒。10ミリ秒の遅れは1フレームに満たない程度ではあるが、攻略を最重視するならばフレーム生成機能はOFFにした方がいい、ということになる。
もしDLSSなどを使うにしても、フレーム生成機能は使わずに、映像を高画質化するアップスケーリング機能だけにしておくのは手だ。「それってDLSSの価値はあるの?」と思われるかもしれないが、フレーム生成はDLSS 3で実装された比較的新しい機能で、アップスケーリング機能はそれ以前からある。
ここでDLSS自体をOFF(アップスケーリングも不使用)にしてみると、フレームレートは34FPSに低下するとともに、遅延も65.2ミリ秒に増した。これはフレームレートの低下によって画面の表示回数が減り、結果的に遅延も増したと考えられる。アップスケーリング機能はフレームレート向上と遅延の低減の両方が期待できる、という結果になった。
フレーム生成機能によるティアリング問題
本作のフレーム生成機能では、ゲーム内の設定でフレームレートの上限を設定していても、それ以上のフレームレートになることがあるとされている。実際に、ディスプレイのリフレッシュレートを超えるフレームレートで描画された際にはティアリング(画面の一部がズレて表示されてしまう)が起こり、特に動きの激しい場面で目につく。
これに関してはいくつか対処法がある。手っ取り早いのはフレーム生成機能をOFFにすることだが、ONで対処するには、Geforce RTXシリーズの場合、「NVIDIA コントロール パネル」アプリを利用する。
[3D設定の管理]から、[最大フレームレート]で、ディスプレイの最大フレームレートより少しだけ小さい値を設定しておく。例えば60Hzのディスプレイなら、58FPS辺りに設定しておけば、フレームレートは58FPSが上限となり、ティアリングは原理上発生しなくなる。
ほかにも[垂直同期]の設定を[適応]にすることで、ディスプレイのリフレッシュレートを超える描画を抑えられる。ただこの設定は先日から筆者のPCでは表示されなくなっており、動作は未確認。お使いの環境にこの設定があるのなら試してみてもいいだろう。
この問題は本作に限ったことではないので、覚えておいて損はない。なお理想的な解決方法は、より高いリフレッシュレートに対応したゲーミングディスプレイを導入し、ゲーム側の最大出力フレームレートでも表示できる環境にすることだ。
画面酔い防止の推奨設定
本作は3Dゲームなので、人によっては3D酔いを起こす可能性がある。筆者は最近になってやたらと3D酔いしやすい体質になっているが、本シリーズで3D酔いしたことはないので大丈夫だろう……と思っていたら、セクレト(乗り物)に乗って周囲のアイテムを回収するのにぐるぐるカメラを回していたら、簡単に酔った。
そんな筆者のような方のために、本作には[画面酔い防止の推奨設定]という項目が用意されている。ゲーム内のオプション画面から、右から2番目にある[ACCESSIBILITY]の項目に入り、[画面酔い防止の推奨設定]を選択する。
ここではカメラの振動や補正、モーションブラーを切ることで、ゲームプレイ中の酔いを低減する設定に一括変更できる。映像のダイナミックさが若干損なわれる可能性はあるが、酔ってゲームが続けられない方が問題なので、気になる方は素直に利用しよう。モーションブラーを切ることで、描画負荷もいくぶん下がるはずだ。
高解像度テクスチャパック
本作のゲーム内で使われるテクスチャを、より高解像度のものに変更する「高解像度テクスチャパック」が用意されている。こちらは「Steam」のDLCの1つとして用意されており、無料で利用できる。
ダウンロードサイズは約70GBと大きいことに加え、利用には16GB以上のビデオメモリが必要とされている。4Kなど高解像度でプレイしている場合は、導入することでよりリアルな映像を楽しめる。使用する場合は、ゲーム内のオプション画面から[GRAPHICS]を選び、[テクスチャ品質]で[最高(高解像度テクスチャ)]を選択する。
ただし、「Steam」でいったんDLCを導入すると、その後はこちらがセットで導入されることになり、インストールサイズが100GBを超えてしまう。不要な場合は、「Steam」の[ライブラリ]で本作を右クリックし、[プロパティ]を選択。[DLC]の項目を開き、「高解像度テクスチャパック」のチェックを外す。
Steam Linkで画面が真っ暗
本作は要求されるPCスペックが高めだが、ポータブルゲーミングPCなどで手軽に遊びたいという方もいると思う。そんな時に役立つのが「Steam Link」。「Steam」をインストールしたPCでゲームを動かし、別の端末にゲームの映像を飛ばして遊べるものだ。
現在は「Steam」クライアントからリモートプレイを選べるようになっているが、単体の「Steam Link」アプリの方がゲームパッドで操作しやすく、使い勝手がいい。
「Steam Link」を使って本作をプレイしてみると、音は聞こえるのだが画面が真っ暗なまま。操作はできるが画面が出ないという状態になってしまった。
原因を調べたところ、DLSSを使用している際にこの問題が発生するようだ。DLSSをOFFにするか、FSRなど別の項目を選択すると、「Steam Link」で正しく映像が表示され、プレイできるようになった。この状態で試しに設定をDLSSに戻したところ、映像がストップしてしまったので、原因はDLSSとの干渉で間違いなさそうだ。なお筆者はなぜか1度だけDLSSがONの状態でも利用できたが、再現できず原因不明だ。
他のゲームは問題なく「Steam Link」でプレイできている以上、この問題は本作特有のものであるのは確か。本作では他にもいくつかのバグが報告されているようだが、こちらもいずれ修正されることを期待したい。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。