石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
PCゲームを好きな端末でリモートプレイできる「Steam Link」
Steam以外で買ったゲームにも“一部は”対応
2022年10月7日 11:00
3Dゲームをリモートプレイで遊びたい
先日、息子と一緒に「マインクラフトダンジョンズ」をプレイしているという記事を書いた。息子は6歳になった今も、週末だけと決められているゲームプレイを楽しみにしているようだ。
そんな息子とは裏腹に、親の筆者はちょっと困っている。「マインクラフトダンジョンズ」はそれなりに3D描画処理が必要なゲームで、リビングに持っていけるノートPCでは最低画質でギリギリ動作する程度だからだ。以前は「マインクラフト」を遊んでいて、こちらは処理がずっと軽く問題なかった。ただ、そのままの環境で「マインクラフトダンジョンズ」に移行したのがよくなかった。
記事を書く際には、普段は仕事で使っているデスクトップPCをリビングに運んで録画したのだが、PCもそこそこ重い上、大量の配線を毎回繋ぎ直すのは骨が折れる。かといって、このために新たなゲーミングPCを買うのは大きな出費。リビングにあるNintendo Switchに移行するならソフトは買い直しとなるので、すでに結構遊んだゲームを新たに買うのは気が引ける。
そこで思いついたのが、ゲームの「リモートプレイ」だ。デスクトップPC上でゲームを動かし、LANを通してリビングのノートPCで受けてプレイできればいい。仕事部屋とリビングの間には1Gbpsの有線LANを通してあるので、速度的には何ら問題はない。
問題は、何のソフトを使ってリモートプレイを実現するか。Windows標準のリモートデスクトップをはじめ、リモートプレイに使えるソフトはいくつもある。あれこれ調べて試してを繰り返し、たどり着いたのが「Steam Link」である。
ホストPCに「Steam」、クライアントPCに「Steam Link」をインストール
「Steam Link」は、ゲーム配信スタンド「Steam」のクライアント上で提供されるリモートプレイ機能。それゆえに、「Steam」以外の場所で買ったゲームは対象外であろうと思い込んでいたのだが、実際にはそうではないと気づき、試してみた次第だ。
まずは必要な環境を整える。ゲームを動作させる(3D描画処理を担う)ホストPCには「Steam」クライアントをインストールする。公式サイトにアクセスし、上部にある[Steamをインストール]のボタンからクライアントをダウンロードしてインストールする。すでに「Steam」を利用している場合、この手順は不要だ。
次にゲームを実際にプレイするクライアントPCには「Steam Link」をインストールする。これも公式サイトからダウンロードできる。Windows PC以外にも、スマートフォンなどさまざまなプラットフォームに対応している。なお、クライアントPCには「Steam」をインストールしなくてよい。
「Steam Link」のセッティングには1点注意が必要。ホストPCで「Steam」を起動しておき、クライアントPCで「Steam Link」を起動すると、ホストPCにデバイスを承認させるための認証コードがクライアントPC側に表示される。そのコードをホストPCに表示されたウィンドウに入力すると、ホストPCとクライアントPCの間で接続が完了する。
あとはホストPCで「Steam」を起動した状態で、クライアントPCの「Steam Link」を起動するだけ。クライアントPC側から、ホストPCの「Steam」のライブラリにあるゲームを選んで起動できる。ホストPC側での作業は「Steam」を起動しておくだけで、あとはクライアントPC側で完結するのがスマートだ。
遅延は標準設定で推定3フレーム程度
リモートプレイで最も気になるのは、遅延の問題だ。リモートプレイは基本的に、ホストPCで実行したゲームの映像や音声を、ストリーミング動画にエンコードしてクライアントPCに送り、デコードして表示するという手順で動作する。エンコード、データ送信、デコードと、遅延の原因になる処理が複数挟まるわけだ。
とはいえゲームプラットフォームの「Steam」が公式に提供する機能なので、そこまで酷い遅延はないはず。実際にどの程度の遅延があるのか確かめるべく、「Steam」で無料ダウンロードできるFPS練習ソフト「Aim Lab」を使い、マウスクリックの反応速度を測定するモード「Detection」をプレイした。
ホストPCで直接起動してプレイしてみると、およそ250ms。年齢のせいかずいぶん遅くなったな……というのはさておき、クライアントPC側で「Steam Link」経由で同じようにプレイすると、およそ300msとなった。
使用したマウスが違うなど同一環境ではないものの、筆者の環境ではおよそ50ms程度の遅延があるようだ。格闘ゲームで言えば約3フレーム。実際にゲームをプレイしてみてもプレイ感を損ねているとは感じないが、マウスを動かした際にカーソルの追従に若干のもたつきがあるようにも感じる。
とりあえず、これでリモートプレイ環境は整った。「Steam Link」には画質を落として遅延を減らす設定もあるので、ゲームの種類によっては試してみるといいだろう。
「Steam」以外で買ったゲームをライブラリに登録
これでリモートプレイ環境は整ったわけだが、まだ越えるべき障壁がある。「Steam」ではないところで購入したゲームは、当然ながら「Steam」のライブラリには登録されておらず、「Steam Link」から起動できない。この場合、「Steam」のライブラリにゲームを登録する作業が必要になる。
手順は、「Steam」クライアントの左上にある[ゲーム]タブから[非Steamゲームをライブラリに追加]を選択。[ゲームの追加]ウィンドウにゲームやアプリのリストが表示されるので、登録したいゲームを選んで追加するだけだ。もし一覧に追加したいゲームがなければ、[参照]ボタンから実行ファイルを探して直接選べばいい。
ライブラリに追加された「非Steamゲーム」は、Steamクライアント上で詳細情報が表示されないが、ほかのゲームと同じく[プレイ]ボタンをクリックするだけでゲームをスタートできる。また「Steam Link」から見てもリストにゲームが追加されており、ほかの「Steam」のゲームと同じように起動できる。
Microsoft Storeのゲームは登録が難しい
非SteamゲームのSteamライブラリへの登録だが、なんでも可能なわけではない。例えば、Microsoft Storeで購入したゲーム(PC Game Passを含む)は実行ファイルの所在が明かされない特殊な構造になっており、そのままではSteamライブラリに追加できない。
この問題は「UWPHook」というソフトで解決できる。「UWPHook」を実行すると、Microsoft Storeで管理されているアプリが一覧表示されるので、その中からSteamライブラリに登録したいゲームを選ぶだけでいい。「UWPHook」の利用は無料で、使い方はUIも含めてとてもわかりやすい。
そもそも今回の目的は、仕事部屋にあるゲーミングPCで「マインクラフトダンジョンズ」を動かし、リビングでリモートプレイすることだ。筆者所有の「マインクラフトダンジョンズ」はMicrosoft Storeで購入したので(Steamでも販売されている)、「UWPHook」でSteamライブラリに「マインクラフトダンジョンズ」を登録し、「Steam Link」で動かせば解決する。
登録作業は簡単なのだが、残念ながらこの手順ではSteamから「マインクラフトダンジョンズ」が起動しなかった。「UWPHook」もアップデートで対応できるゲームが増えているようだが、ゲーム側もアップデートされて動作条件が変わることもあるし、PC環境は人によって違うので、うまくいかないこともあるのは仕方ない。
ということで筆者の目的は達成されずじまいなのだが、「Steam Link」自体はスマートで、対応するプラットフォームも多く、ゲームパッドも使用できて、「Steam」以外で買ったゲームにも対応可能と、極めて柔軟性のある機能だ。筆者が必要とするリモートプレイ環境は、見つかったらまた改めてご紹介したい。
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/