石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
全員メガネで2.5枚目? 深夜のテレビを巡るRPG「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」リマスター版
超重厚なシナリオと、スタイリッシュなのに締まらないキャラクターが魅力
2023年2月3日 11:00
「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」のリマスター版も登場
前回の「ペルソナ3 ポータブル」に続き、そのナンバリング次回作となる「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」のリマスター版をプレイする。
「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」のリマスター版は「ペルソナ3 ポータブル」と同じ1月19日に発売。WindowsやNintendo Switchなど複数のプラットフォーム展開で、パッケージ版はなくダウンロード版のみ。価格は1,980円。PC Game Passにも対応し、Windows版は月額850円(初月は100円)で遊べる。
元になった「ペルソナ4」は、PlayStation 2で2008年7月に発売された作品。さらに2012年6月には内容をアップグレードした「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」がPlayStation Vitaで発売されている。そしてこれをベースに今回のリマスター版が作られている。
深夜に映る謎のテレビと、テレビの中の異世界
本作の舞台はとある田舎町で、高校2年生の主人公は親の都合で親戚宅に1年間だけ移り住む。転校した先でできた友達と話をする中で、雨の日の深夜0時、消えたテレビの画面が勝手に映る「マヨナカテレビ」の噂を聞く。実際にテレビを見てみると、本当に何かが映るだけでなく、主人公の体の一部がテレビに入り込んでしまう。
慌てて体を引き抜いて事なきを得たが、しばらくすると町で殺人事件が起こる。同じようにテレビを見ていた友達によると、殺された人は知り合いで、マヨナカテレビに映っていたと言う。
主人公は友達らとともに、大型スーパーの売り場にある特大のテレビへ。主人公がテレビに触れるとやはり入り込み、今度は友達と一緒に体ごと吸い込まれてしまう。そこには霧が立ち込める異世界が広がっていた。
主人公たちはマヨナカテレビに映った人がテレビの中にある異世界に放り込まれ、そこで殺されていることに気づく。テレビの中の異世界という荒唐無稽な話を警察などが信じてくれるとも思えず、自分たちで調べ始める。
こういった流れで話が進んでいくのだが、序盤はひたすらストーリーが展開していくのみで、RPGらしいバトルなどはほぼ出てこない。いったい何のゲームを遊ぼうとしていたのかと思うくらいだが、シナリオとしてはちゃんと楽しく飽きさせない。
テレビの中の異世界とペルソナ能力
ある程度ゲームが進むと、ようやく異世界への出入りが自由になり、異世界へ放り込まれた人を助け出すために冒険する。異世界には「クマ」という着ぐるみのようなキャラクターがおり、主人公たちのガイド役になってくれる。
異世界にはシャドウと呼ばれる敵がおり、戦うためにペルソナと呼ばれる力を行使する。主人公は自然と「イザナギ」というペルソナを獲得するのだが、友達など他のキャラクターは、異世界で自らの醜い本音を語る影と対峙することになる。その影をバトルで撃破すれば、各々のペルソナを獲得できるという流れだ。
ペルソナは主人公に限り、複数所持して切り替えられる。新たなペルソナはバトル後に獲得できることがある。
獲得したペルソナはただ使用するだけでなく、複数のペルソナを合体させて別のペルソナを生み出せる。シリーズの伝統である「ベルベットルーム」で合体させると、何になるのかを確認しながら選ぶことになる。一度に持てるペルソナの数には限界があるので、どんどん合体させつつ、不要なペルソナは捨てることも可能だ。
バトルではキャラクター自身の物理攻撃のほか、ペルソナの力によるスキルを使って攻撃できる。武器やスキルには属性があり、敵の弱点となる属性で攻撃すると敵をダウンさせ、続けて行動できる。全ての敵をダウンさせると、味方全員で総攻撃をかけて大ダメージを与えられるので、敵の弱点を把握するのが重要だ。
ペルソナによって使用できるスキルは異なる。特定のボスが強くて倒せないという時は、バトルを重ねてキャラクターのレベルを上げたり装備を強化したりするほかに、ボスと相性がいいペルソナを作っておくというのも攻略法の1つとなる。
二面的なキャラクターやシナリオがゲームシステムにもマッチ
本作を通して感じるのは、表と裏を入り交ぜた世界設計のうまさだ。
本作はビジュアルから感じられる都会的でスタイリッシュなイメージに対し、舞台は田畑が広がるのどかな田舎町。シナリオはシリアスな面だけでなく、コメディっぽさも多分にある。主人公は都会育ちの寡黙な二枚目という印象ながら、各所で天然っぽく抜けた反応も見せる。
登場キャラクターはいずれも、自らの見たくない面を影として見せられ、最終的にそれも自らの一部として受け入れることで、ペルソナの能力を獲得する。キャラクターの性格が一貫せず、あえてデコボコや二面性があるように表現しているのが、ペルソナ能力というゲームシステムにマッチしている。ペルソナの獲得シーンも、ただ能力を得るだけでなく、キャラクターの内面の成長をも描き、魅力をより引き出している。
また本作で面白いのがメガネの存在だ。異世界では深い霧が出ており、見通しが悪いだけでなく体にも悪影響が出るのだが、クマがこれを防ぐアイテムとしてメガネをくれる。よって異世界にやってきた主人公たちは、みんな揃ってメガネをかける。
普段はメガネをかけていないキャラクターたちが、テレビの中の異世界ではメガネをかけるというのも、キャラクターの別の面を見せる手法の1つとなっている。メガネもキャラクターごとに異なるデザインで、これもまたスタイリッシュで魅力的だ。
本作は「ペルソナ」シリーズという土台の上で、ゲームシステム、シナリオ、キャラクターが見事に融合している。ペルソナというテーマをあらゆる面で活かしきった秀作だ。
ちなみに本作は2011年から2014年にかけて、2作のテレビアニメが放映されている。ゲームでも各所でアニメシーンが収録されており、作品としてもアニメと親和性が高いように思う。少々古い作品ではあるが、興味があればぜひアニメもご覧いただきたい。筆者は作品内容もさることながら、アニメのテーマ曲がどれもお気に入りだ。
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/