石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
1日は24時間じゃない……『影時間』の謎を解くRPG「ペルソナ3 ポータブル」リマスター版
秀逸な音楽は必聴、ついにWindowsでプレイできる
2023年1月27日 11:00
「ペルソナ3 ポータブル」のリマスター版が登場
(株)アトラスのRPG「ペルソナ3 ポータブル」のリマスター版が1月19日に発売された。Windowsのほか、Nintendo Switchなど家庭用ゲーム機の各プラットフォームでも同時に発売され、いずれもダウンロード版のみで1,980円となっている。PC Game Passにも即日対応しているため、Windows版は月額850円(初月は100円)で遊べる。
「ペルソナ3」は、PlayStation 2で2006年に発売され、2009年には女性の主人公を加えたリメイク版となるPSP版「ペルソナ3 ポータブル」が発売。今回のリマスター版は「ペルソナ3 ポータブル」をベースに、高解像度対応やセーブポイント以外での中断に対応した。
「ペルソナ」シリーズでは、同日に「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」、そして昨年10月には「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」のリマスター版が発売されている。いずれもWindowsなど幅広いプラットフォームで展開しており、これまで同シリーズを遊んだことがない人も手軽に遊べるようになった。
今回は「ペルソナ3 ポータブル」リマスター版をWindowsでプレイしてみたい。
24時間の外にある影時間で、ペルソナを呼び出して戦う
そもそも「ペルソナ」シリーズは、アトラスのRPG「真・女神転生」シリーズから派生した作品だ。「真・女神転生」は、敵として登場する悪魔と交渉して仲間にし、悪魔同士を合体させて新たな悪魔を生み出すというシステムが特徴。悪魔と言っても神話に登場する神々や英雄なども含まれており、八百万の神がいるとする日本以外では宗教観的に許されなさそうなコンセプトのゲームである(現在は海外にも展開されている)。
「ペルソナ3 ポータブル」では、悪魔そのものを使役するのではなく、自らの心の力を悪魔という別の姿で表す。これが作中でペルソナと呼ばれており、悪魔の能力を具現化して戦う。
本作はジャンルとしてはRPGになるのだが、ストーリー性の高さが特徴だ。ゲーム序盤からアドベンチャーゲームのような読み物パートが多く、キャラクターのビジュアルや音声も多彩に用意されている。軽めのセリフ回しやカジュアルなキャラクターデザインからも、ライトノベルをゲーム化したような作品である。
本作の主人公は、とある高校に転校してきた2年生。到着した寮でシャドウと呼ばれる謎の敵に襲われ、ペルソナの力を発現する。寮はシャドウと戦うためのペルソナの力を持つ生徒を集める場所で、1日と1日の間、午前0時には24時間に含まれない影時間と呼ばれる時間があること、その時間にだけシャドウが現れることを知らされる。
さらに主人公らが通う学校は、影時間には大きく姿を変え、タルタロスという搭になる。中はダンジョンのようになっており、シャドウの巣窟になっている。この搭を攻略するのがRPGパートの中心となる。
ほかにも学校や街中でさまざまなイベントが発生する。特にキャラクター間で発生するコミュニティは、ペルソナの成長要素にも影響する。ただ会話によるストーリーが展開するだけでなく、ゲーム的な意味を持たせているのが特徴だ。
弱点が重要なバトルシステム。秀逸な音楽は必聴
シャドウとのバトルはコマンド選択式のターン制。攻撃は生身で武器を使うか、ペルソナの力を使うかになる。ペルソナの発現には、拳銃の形をした召喚器を頭に当て、トリガーを引く。ロシアンルーレットで頭を撃つような格好で、なぜこんな手順なのかの説明はないのだが、命をかける恐怖に打ち勝つことでペルソナの力を発現できる……というイメージなのだろう。
戦闘システムも特徴的だ。敵にはそれぞれ弱点が設定されており、それに合った武器やペルソナを使って攻撃すると、敵がダウン。さらに同じキャラクターが再度行動できる「1MORE」が発生する。敵の弱点を突いてダウンを奪っている限り、ずっと同じキャラクターの攻撃ターンが続くことになる。さらに全ての敵をダウンさせると、味方全員で総攻撃を仕掛けて大ダメージを与えられる。
ただし「1MORE」は敵にも発生する。味方が攻撃を受けてダウンすると、さらに追撃を受けてしまう。ただでさえ大ダメージを受けているところに追加ダメージをもらう形で、一気に総崩れしてしまうこともある。攻撃のターンが継続するというのはちょっと大味な気もするが、弱点を把握した上で戦略を立てて戦うのが重要だ。
ペルソナは戦闘に勝つことで新たに入手できることがある。さらに入手したペルソナを合体させることで、新たなペルソナを生み出せる。どんなペルソナが生まれるかは合体させるペルソナによって変わるため、新たなペルソナを集めては合体させるのが本作の楽しみの1つとなる。
ペルソナの合体を行うのはベルベットルーム。その主である「イゴール」と、女性ボーカルによる美しいBGMはシリーズの定番だ。
また、本作ではオープニング楽曲(「ペルソナ3」と「ペルソナ3 ポータブル」の両方を収録)をはじめ、BGMなど各所でボーカル曲が使われており、作品のスタイリッシュなイメージを際立たせている。個人的には本作の要素では音楽が最も気に入っているので、ぜひきっちりと音を聴ける環境で遊んでいただきたい。
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/