石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

少年はなぜ怪盗ジョーカーになったのか?「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」リマスター版

舞台は現代の東京。美麗な3D映像とアニメで描かれるストーリー主導型RPG

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

シリーズ最新作「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」のリマスター版

「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」のタイトル画面

 「ペルソナ3 ポータブル」、「ペルソナ4 ザ・ゴールデン」のリマスター版に続いて、今週は最新作となる「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」をプレイしてみたい。

 最新作といっても、「ペルソナ5」が最初に発売されたのは2016年のPlayStation 3/4用。その後、要素を追加した「ペルソナ5 ザ・ロイヤル」がPS4用として2019年に発売。さらにそのリマスター版がWindowsやSwitch、PS5、Xbox Series X|Sなどで2022年10月に発売された。

 今回プレイするのはこのリマスター版。価格は7,678円となっているが、Windows版はPC Game Passに対応しており、月額850円(初月は100円)でプレイ可能だ。

怪盗ジョーカーという裏の顔を持つ少年

主人公の怪盗ジョーカー

 本作の舞台は現代の東京。主人公は怪盗ジョーカーを名乗る少年で、仲間と協力してカジノに潜入する。仲間のガイドに従って脱出を試みるも失敗し、警察に捕まってしまう。とある女性検事に取り調べを受ける中で、なぜ主人公が怪盗となったのかを回想として追体験する。

警察で取り調べを受けながら、過去を回想する

 事のきっかけは、酔っ払いの男に絡まれている女性を主人公が助けたこと。はずみで男が転倒して怪我をしたことで罪をかぶせられ、保護観察処分とされて高校を退学。渋谷にある高校に転入し、知り合いのつてで居候生活を始める。

喫茶店の屋根裏部屋を間借り

 主人公のスマートフォンには、削除してもなぜか復活する謎のアプリが。登校初日、道中で出会った同級生の不良少年とともに、そのアプリの影響で異世界へと放り込まれてしまう。謎の怪物に捕らわれ、殺されそうになる直前、主人公は反逆の力・ペルソナに目覚める。そこから主人公は怪盗ジョーカーとしての道を進み始めるのだが……。

登校初日から謎の異世界に迷い込んでしまう
異世界で主人公のペルソナが顕現する

 ゲームのジャンルとしてはRPGで、ペルソナの力を行使して敵となるシャドウと戦う。ただし「ペルソナ」シリーズの伝統として、ストーリー展開がかなり重厚で、アドベンチャーゲームの様相も強い。

敵との交渉が復活。3Dやアニメの映像も注目点

 本作は過去のシリーズよりも、システム周りでできることが増えている。特徴的なのがシャドウとの会話で、敵の弱点を突いてダウンさせると会話できるようになり、交渉に成功すれば新たなペルソナを獲得できることがある。交渉の概念はシリーズ初期にはあったものが「ペルソナ3」でいったん廃止され、本作で復活した形だ。

敵と会話によって交渉できるシステムが久々に復活

 ゲームシステムの説明はゲームをプレイする中で少しずつなされていくので、マニュアルを読み込む必要はない。ただし、ゲームの基本となる部分が概ねカバーされるまでには相当な時間がかかる。特にシリーズの醍醐味である新たなペルソナの獲得や、ペルソナ同士を掛け合わせて新たなペルソナを生む合体ができるまでには数時間かかる。

 言ってしまえば、序盤はものすごく長いチュートリアルが続く。敵とバトルして新しいペルソナを増やしたい、とRPG要素に期待している人は少々やきもきするかもしれない。しかしその間にも物語はしっかりと展開していき、合間にはバトルが必要になるシーンも適度に挟まれる。プレイヤーを退屈させないよう配慮しつつ、物語をしっかり描写していく辺りは、シリーズ5作目の深みを感じる。

 舞台が東京という都市になったことで、「ペルソナ」シリーズの持つスタイリッシュなイメージはより鮮明になった。またリマスター元がPS3やPS4など世代が進み、映像も美しくなったことで、都会の洗練さと、裏にある陰鬱さの対比もビジュアルで表現された。現実世界と異世界の表現も含め、明暗のメリハリが強い。

渋谷などの都会の明るい街並みが丁寧に描かれている
街の裏の顔とでもいうべき暗い場所も多い

 また重要な場面ではアニメシーンもふんだんに使われている。ゲーム中の映像もアニメ調の3D映像で美しく描かれているが、ここぞという場面ではパンチの効いた演出のアニメで楽しませてくれる。

アニメのシーンも多い。こちらもしっかり作られている

過去作から順番に遊べばより楽しめるはず

 キャラクターも個性的だ。最初に仲間になる坂本は、見た目も態度もいかにもな不良少年だが、実際には正義感が強くて仲間思い。また異世界で出会うことになる、猫のような可愛らしい外見をしたモルガナは、主人公らに異世界に関しての知識をくれる参謀役。本作の遊び方のガイドも務めてくれる。その後も次々と仲間が増え、悪人の心を盗んで改心させる謎の怪盗団を結成することになる。

最初の仲間となる坂本。見た目によらず正義感が強い
見た目は猫だが知識は豊富なモルガナ
ほかにも主人公の仲間はどんどん増えていく

 筆者としては、本作はRPGとしてより、物語を楽しむアドベンチャーゲームのつもりで触れてもいいと感じている。ゲームの序盤で難易度を5段階で選択できるようになっているので、RPGが苦手な人は低めの難易度で物語を楽しむのがいいだろう。

難易度選択ができるので、この手のゲームの経験が浅い人でも安心

 もちろん本作がRPGとしてつまらないと言っているわけではない。敵の弱点属性で攻撃してダウンさせると連続行動ができる「1MORE」や、全ての敵をダウンさせることで大ダメージを与えられる「総攻撃」など、バトルでの戦略性も高い。ペルソナを集めて合体させ、より強力なペルソナを生み出したり、ボスと相性のいいペルソナを揃えたりするのも重要だ。

弱点属性を狙って攻撃するのが重要
総攻撃後の決めのカット。格好いいがちょっと笑える

 シリーズの伝統であるペルソナの合体は、本作でもやはりベルベットルームで行われる。筆者はシリーズ1作目の「女神異聞録ペルソナ」でベルベットルームの美しい曲に魅了され、以後のシリーズでもベルベットルームに行くことが楽しみの1つになっている。

 しかし本作のベルベットルームでは、いくつもの違和感がつきまとう。部屋は主人公を捕らえた牢獄だし、ペルソナ合体では古いペルソナを処刑する流れになる。そして管理人であるイゴールも、見た目は同じなのに態度や声質がまるで違う。

牢獄のベルベットルームと、何か違和感が漂うイゴール
ペルソナの合体では古いペルソナがギロチンで処刑される

 本作と過去の「ペルソナ」シリーズは、それぞれ物語は独立しているので、何作目からプレイを始めてもプレイ上の支障はない。ただ本作に限っては、できれば過去のシリーズ、特に「ペルソナ3」と「ペルソナ4」をプレイしてからの方が、より深く楽しめると思う。システムもシリーズを踏襲した部分が多いので、ナンバリングの順番どおりに遊ぶのがおすすめだ。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』 記事一覧

Microsoft Storeで「PC Game Pass」を購入する