石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

PCでAndroidゲームが動く「Google Play Games(ベータ版)」を試す

「ウマ娘」など対応するゲームアプリはまだ少数。今後はどうなる?

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

Google純正のPC向けAndroidゲームアプリ動作環境

 GoogleがPC向けに提供する「Google Play Games(ベータ版)」が日本でも解禁された。Windows上でAndroidのゲームアプリを動かせるもので、ソフトは無料でダウンロードできる。

 動作スペックはWindows 10以降で4コア以上のCPUなどを搭載したPCとなっており、それほど厳しい条件ではない。個人向けのGoogle アカウントがあれば利用できるので、皆様もぜひお試しいただきたい。ベータ版なので動作に問題がある可能性もあるが、不具合があったときにはプレイ後のアンケートで回答していただければと思う。

 これまでにもWindows上でAndroidアプリを動かす方法はいくつかあったが、制約もあった。「Amazonアプリストア」はAmazonが提供しているアプリしか動かせないし、各種あるAndroidエミュレーターはアプリの規約違反に当たる場合もあり、扱いにくい。

 しかし、今回提供された「Google Play Games」は、Androidの大元であるGoogleが提供するもの。スマートフォンで使用しているのと同じGoogle アカウントで利用でき、ゲームの進行度も共有できるという。これこそ多くのAndroid&Windowsユーザーが待ち望んだものだろう。

ゲームアプリを遊べはするが、スマートフォンと同じ体験にはならない

 では実際どうなのか試してみよう。まず大前提として、本ソフトは名前に「Games」と入っている通り、Android向けのゲームアプリを対象としたもの。ゲーム以外のアプリに関しては対象外と考えていいだろう。

 本稿執筆時点で、「すべてのゲーム」にリストアップされているタイトル数は159本。多くは日本語対応だが、タイトルや説明などが全て中国語や韓国語で書かれた作品もある。

画面左にある[すべてのゲーム]を選ぶと、ゲームの一覧が表示される。ジャンル別の表示も可能
スクウェア・エニックスやKONAMI、バンダイナムコエンターテインメントなど、日本のゲーム会社の作品にも対応したものがある
中には日本語に対応していないゲームもある

 Android向けのゲームアプリはもっと多数あるはずだが、いまのところは一部だけが対応しているようだ。とりあえず特徴的なゲームを遊んでみる。

 まずはレースゲームの「アスファルト9:Legends」。美しい3Dグラフィックスで描かれる作品で、PCの大きなディスプレイで見てもなかなか綺麗な映像だ。今回使用したゲーミングPC(GeForce RTX 4080搭載)では映像も滑らか。

 操作に関しては、もともとはバーチャルパッドを使って動かすものだったが、本ソフト上ではキーボードを使うように指示された。ゲーム側でキーボード操作を想定しているようで、画面上の操作案内もキーボードが表示される。さもPC版のような体験で、快適にプレイできる。

 ただゲームパッドによる操作には対応していないようだ。これがゲームによるものか、本ソフトによるものかは不明だが、現状ではキーボードを使って遊ぶタイトルとなっている。[Shift]+[Tab]キーで本ソフト側から操作方法を確認できるが、キーの変更はできなかった。

3Dレースゲーム「アスファルト9:Legends」。PCで見てもなかなか美しい
キーボード操作が想定されており、操作ガイドも表示される

 次にアクションゲームの「フルーツ忍者2」をプレイ。画面外から飛んでくるフルーツを、スワイプ操作で切っていくという単純なゲームだ。スマートフォンでは画面をスワイプするだけだが、本ソフト上ではマウスをドラッグしてカーソルを動かす。

 スワイプがドラッグになるのは想像通りなのだが、実際に斬りたい場所を指で触れるスワイプ操作とは違い、マウスでカーソルを動かすという操作は直感的でない。遊べなくはないが、ゲーム体験としてはスマートフォンでのプレイに及ばない。

フルーツを切るだけの「フルーツ忍者2」。とてもわかりやすい内容
マウスでも遊べるが、画面をスワイプする方が直感的で楽しい

 2作品とも操作の面では思ったようにいかない部分はあるが、元がスマートフォン向けに作られたゲームなので、インターフェイスの異なるPCで操作感が落ちるのは仕方がない。シングルタップの操作が基本になるようなゲームならさほど気にならないはずなので、向き不向きと考えるしかない。

 それでも同じGoogle アカウントで、ゲームの進行度を共有できるのは大きなメリットだ。また手持ちのスマートフォンが2台に増えたのと近い状態になるので、2つのゲームを同時に進行したいときには使えそうだ。一方でリアルタイムイベントをプレイしつつ、もう一方で片手間にログインボーナス回収を巡回といった使い方もありえる。

今後もタイトルは増えるはずだが、対応できないものも多い

 本ソフトについて理解する上で重要なこととして、本ソフトはAndroidの大元であるGoogleが提供しているということだ。

 Google以外から提供されるAndroidエミュレーターであれば、もし動作に問題のあるアプリがあったとしても、「正常に動作しないアプリもあります」と宣言することで責任を逃れられる。ユーザーもそれを納得した上で利用するのが当然だ。

 しかし、本ソフトで提供されるゲームアプリが正常に動かないのは問題だ。原因がアプリ側にあるとしても、プラットフォームを提供し、ゲームアプリの代金の一部を受け取るGoogleも責任の一端を負う。スマートフォンのアプリと同様、基本的には動作するものが並んでいるべきだ。

 そうなるとGoogleが本ソフトで提供されるゲームアプリに対して、一定のチェックを行う必要がある。しかし、有名無名を問わず無数のゲームアプリを抱えるAndroidの「Google Play」から、本ソフトで動作するのかを全て調べるのはあまり現実的ではない。

 そもそも2本指を使う操作は、マウスとキーボードで動かすPCでは対応できない。さらにはゲームアプリ側のアップデートにより機能が増えたり遊び方が変わったりして、本ソフト上での対応が難しくなるものもあるだろう。多くのゲームアプリはそのままでは本ソフトに対応できないことは間違いない。

 対応するゲームアプリが今後増えていくのは確かだろうが、Android向けに提供されている全てのゲームアプリが一斉に本ソフトで開放される日は来ない。スマートフォンで遊んでいるゲームアプリが必ずPCで遊べるようになるわけではない、ということは覚えておいた方がいいだろう。

 本ソフトで動かせそうなものに関しては、どんどん対応してくれることを期待したい。操作性の良し悪しはさておき、動かせるだけで助かるものもある。またAndroidスマートフォンを持っていない人も、本ソフトでAndroid向けのゲームアプリを遊べるので、今後は思った以上に存在感を増してくるかもしれない。

 Androidユーザーの筆者としては、最新のスマートフォンでも処理が重いような3Dゲームアプリを、ゲーミングPCのパワーで最高に美しく見たいという気持ちはある。多数のキャラクターが美しいステージでライブを開くリズムゲームなんかは、案外重いゲームが結構ある。まあ、そういう作品はだいたいダブルタップ操作を要求されるのだが……。

操作のスピードを求められないタイプのゲームなら相性は良さそう

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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