石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

WindowsでGoogle Playも使える無料エミュレーターはまだある!「BlueStacks 5」

米国製で規約的にも安心感高め。オーソドックスなAndroidエミュレーター

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

WindowsでGoogle Playが使える無料エミュレーターは1つじゃない

「BlueStack 5」

 前回の記事で、Windows上で動作するAndroidエミュレーター「NoxPlayerZ」を紹介した。Google Playも使える便利なソフトだが、規約などの懸念から「利用は自己責任で」という結論にしてしまった。

 これで終わりにするのも歯切れが悪いので、今回はまた別のAndroidエミュレーター「BlueStacks 5」を紹介したい。機能的には「NoxPlayerZ」と同じくWindows上で動作するAndroidエミュレーターで、こちらもGoogle Playが利用できる。

米国製のAndroidエミュレーター

 「BlueStacks 5」は、米国の企業Bluestack Systemsが開発したAndroidエミュレーター。公式サイトにある「BlueStacks 5」のダウンロードボタンをクリックして、無料でダウンロードできる。

 ダウンロードしたファイルを実行すればインストールが進む。日本語対応で、作業はとても簡単だ。

ダウンロードしたファイルを実行してインストールする

 インストール作業が終わると、デスクトップ上に「BlueStacks 5」と「BlueStacks X」、「BlueStacks 5 Multi-Instance Manager」という3つのアイコンが生成される。今回は「BlueStacks 5」を使用する。

 「BlueStacks X」は同社のAndroidエミュレーターの最新版で、クラウド経由での動作にも対応したもの。「BlueStacks 5 Multi-Instance Manager」は複数のエミュレーターを同時に動かし、複数のゲームを同時にプレイしたり、異なるアカウントを使用したりできるものだ。

 「BlueStacks 5」を実行すると、Androidタブレットのようなウインドウが立ち上がる。Androidがまさにそのまま動作している形で、アイコンをクリックすればアプリが起動する。

 Google Playも最初から入っているのでクリックしてみると、Googleアカウントでのログインを促された。実際のAndroid端末と同じ挙動だ。スマートフォンなどで既に持っているGoogleアカウントでログインも可能。ログインできればGoogle Playからアプリをダウンロードできる。

Google Playを起動すると、Googleアカウントでのログインを求められる
Google Playの画面は他のAndroid端末と同様

 試しにGoogle Playで「アズールレーン」をインストールしてみる。アプリの説明ページで[インストール]のボタンをクリックすれば、自動的にインストールが進む。これもAndroid端末の挙動と同じだ。

 普通のAndroidと違うのは、インストールが完了した時点で「BlueStacks 5」のAndroid画面上だけでなく、Windowsのデスクトップ上にも「アズールレーン」のアイコンが生成されたこと。アイコンをダブルクリックすると、「BlueStacks 5」上で「アズールレーン」が起動した。「BlueStacks 5」のウインドウを閉じた状態からでも、「BlueStacks 5」が起動して「アズールレーン」が動くようになっている。

「アズールレーン」をインストールして起動。これもAndroid端末と同様の操作

 ゲームプレイでは、最初から[W][A][S][D]キーによる移動などの操作ができるよう、バーチャルパッドが設定されている。「BlueStacks 5」での「アズールレーン」のプリセットが用意されているようだ。

 さらに、Xinput対応のゲームパッドを接続したところ、「BlueStacks 5」がゲームパッドを認識するとともに、「アズールレーン」上のバーチャルパッドがゲームパッドのアナログスティックやボタンへの割り当てに変更された。もちろんバーチャルパッドの位置や機能は任意に調整可能だ。

 ゲームの動作にも何ら支障はなく、サウンドも含めて完璧に再現されている。ただしエミュレーターなので、全てのゲームがきちんと動作する保証はない、というのは大前提だ。

「アズールレーン」も無事に起動。普通に遊べる
最初からキーボードで操作できるようプリセットされている
ゲームパッドを接続すると、自動でゲームパッド用の割り当てに変更された

 Google Playでは他のアプリもインストール可能。「ポケモンGO」のような位置情報ゲームもインストールできるし、電子書籍や映画も利用できる。

Google Playで「ポケモンGO」も普通に出てくる
電子書籍などにもアクセス可能

 Google Play以外の場所に置かれたアプリ、いわゆる野良アプリもインストール可能。ベンチマークテスト「AnTuTu Benchmark」のWebサイトにアクセスしてAPKファイルをダウンロードすると、一般的なAndroid端末と同様にセキュリティに関する警告が出て、インストールできた。デスクトップ上のアイコンも生成される。

野良アプリは警告が出るが、ダウンロードやインストールができる

アプリによって規約違反になる点は他のエミュレーターと同様

 「BlueStacks 5」の利用方法については、普段からAndroid端末を使用している人なら、困ることはまずないだろう。動作については若干不安定な部分もあるが、「アズールレーン」の動作は軽快で、プレイ感はとてもいい。

 また、設定でCPUやメモリの拡張もできるので、パフォーマンスもある程度は引き上げられる。特にメモリが標準設定だと2GBしか設定されていないせいか、アプリの動作が不安定になることもあるので、メモリは多めの設定にしておく方がいいだろう。

「AnTuTu Benchmark」を実行。異常なスコアと出るが、エミュレーターなので仕方ない。使用感には問題はない
CPUやメモリなどのパフォーマンスを調整できる。240FPSまでの高フレームレートにも対応

 端末の型番は、標準設定で「Samsung Galaxy S20+」となっており、他の型番への切り替えも可能。偽の型番を使うのはエミュレーターの常套手段で、認証を受けた端末でしか動かないアプリへの対応などが理由と思われる。ただ理由はどうあれ偽は偽なので、何らかの問題が起きれば、責任はユーザーが負うべきものとなる。

端末情報はやはり偽の型番を使用する

 ゲームの中にはエミュレーターでの利用が規約違反とされているものがあり、「BlueStacks 5」だろうが「NoxPlayerZ」だろうが同じく規約違反とされる可能性がある。エミュレーターはその性質上、データの改造や通信の改変といったチート行為に使われやすく、特にオンラインゲームではNGとされることが多い。利用の際にはゲームの規約をしっかり読み込んでおいていただきたい。

 「NoxPlayerZ」で気になった利用規約については、こちらは英文でのみ用意されている。内容を確認すると、「規約の変更の際にはユーザーに電子メール等で通知する。続けて利用する場合は規約に同意したものとみなす」、「ユーザーが意図的に提供した情報を受け取り保管する」などとされており、特に荒さが見える部分はない。

規約は英語のみだが、かなりまともな内容に見える

 Bluestack Systemsは米国企業ということで、一応の安心感はある。とはいえ米国製だから絶対安全ということはなく、過去には脆弱性が見つかったこともある。この問題は既に解決済みなので過度の心配は不要だが、無料のソフトである以上、最終的に何かあればやはり自己責任になるというつもりで利用して欲しい。

 ともあれ、「Windows上でAndroidアプリを動かしたい」というニーズを満たす環境としては、筆者が知る限りでは「BlueStacks 5」が今のところは最適かなと思う。ただ「NoxPlayerZ」のランチャーは確かに便利だし、動作やUIで優れている部分もあるので、一概に「BlueStacks 5」の方がいいとは言えない。

 利用するアプリやベースとなるWindows PCのスペックによっても、最適解は異なるはず。今回は紹介しなかった「BlueStacks X」や、その他のエミューレーターも含めて色々試してみて、自分に合うものを探してみていただきたい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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