石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

CD-ROMの寿命が近い? 22年前の「Diablo II」が壊れる前にイメージファイル化してバックアップ

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

22年前のPCゲームのCD-ROMを発掘

 この写真は、私が所有している英語版「Diablo II(ディアブロ2)」のCD-ROM。2000年の発売直後に購入したので、既に22年間保有している。拡張版の「DIABLO II: Lord of Destruction(ディアブロ2: ロード オブ デストラクション)」もあり、こちらは21年が経つ。

 CDには寿命がある、というのはご存知だろうか。20年だ、30年だ、いや100年だ、といろいろな説があり、確たる答えはない。というのも、生産時の品質、使用に伴う傷や汚れ、保管状況の違いなどにより、個体差がかなり大きいためだ。

 CDが市販されたのは1982年で、初期に作られたものは読み取れないものが出てきていると聞く。CDをベースに作られたCD-ROMも、耐久性はほぼ同一と考えていい。決して良好な保管状況でなかった私の「Diablo II」のCD-ROMも、既に読み取れなくなっていてもおかしくない。

 既に外箱は捨て、CD-ROMよりシリアルコードを残すのが主目的ではあるが、いつか動かそうとした時にダメになっていたら悲しい。そこでCD-ROMのバックアップを取っておこうと思う。具体的には、CD-ROMをイメージファイル化して保存する。

 ただし、CD-ROMの中にはコピープロテクトがかけられたものもあり、イメージファイル化しても動作しない。またプレイステーションやセガサターンなどのコンシューマーゲーム用のCD-ROMは、イメージファイル化した後にCD-Rに書き戻しても、本体側のコピープロテクト機能により動作しない。つまりコンシューマーゲームの方が問題はより深刻なのだが……ここではPCゲームに限って話をさせていただく。

 なお、イメージファイルの他者への譲渡は、著作権法違反などの違法行為に当たることもあるので、厳に慎んでいただきたい。

1TBでおよそ1,540枚のCD-ROMを保存可能

 そもそもゲームのデータを保存したいだけなら、わざわざイメージファイル化しなくても、CD-ROMの中のファイルをコピーしておけばいい。ただ一部のゲームでは、ゲーム中のBGMをCD-DA、いわゆる音楽CDのデータとして収録しているため、ファイルコピーだけでは対応できない。いちいち問題がないか確認するより、元のCD-ROMにより近い形で保存できるようイメージファイル化しておいた方が安全だ。

 「CD-ROMをイメージファイル化してバックアップしたら、大容量を消費してしまう」と思う人もいるかもしれない。今やHDDどころかmicroSDカードでさえ1TBを超える時代だ。CD-ROMの容量を1枚当たり650MBとすると、1TBあれば約1,540枚保存できる。イメージファイルを圧縮すれば、さらに余裕が出るだろう。

「BurnAware Free」でCD-ROMをイメージファイル化

「BurnAware Free」

 具体的な作業に移ろう。CD-ROMのイメージファイル化には、無料のライティングソフト「BurnAware Free」を使用した。

 まずはCD-ROMドライブにイメージファイル化したいCD-ROMを挿入しておく。私の環境では、USB接続のポータブルCD/DVD-Rドライブを使用した。

USB接続のポータブルCD/DVD-Rドライブ。CDが読み込めればドライブは何でも構わない

 「BurnAware Free」を起動したら、左のメニューから[イメージ]を選択し、[ISOファイルにコピー]をクリック。

[ISOファイルにコピー]を選ぶ

 新たに表示されたウインドウで、上部にあるドライブリストからCD-ROMを挿入したドライブを選択。下にある「ディスクイメージのパス」には、保存するイメージファイル(.ISO)の場所とファイル名を指定する。完了したら、左上の[コピー]をクリックする。

CD-ROMドライブを確認し「ディスクイメージのパス」を入力

 あとは自動でCD-ROMの内容を読み込み、イメージファイルに書き込んでいく。「Diablo II」の3枚組CD-ROMのうち、Cinematics Discは423MBあり、3分27秒でイメージファイル化が完了した。利用したポータブルCD/DVD-RドライブはCDの読み込みが24倍速のようなので、かなり短時間で終了したようだ。

イメージファイルのコピーが始まる
423MBのCD-ROMが3分27秒で完了

 作成したイメージファイルをCD-Rに書き込みたい場合は、先の[イメージ]のメニューで[ISO書き込み]を選択すればいい。イメージファイルのまま中身を参照する[ISOの参照]もあるが、こちらは有料版のみの機能となっている。作成されるイメージファイルは一般的なISOファイルなので、他の仮想CDドライブソフトでも読み込めるはずだ。

[ISOの参照]は有料版のみの機能だが、作成したイメージファイルは他の仮想CDドライブソフトでも利用可能

 「ディスクイメージのパス」で保存するイメージファイルを指定する際、.ISOのほかに、.BINも選択できる。.BINを指定してコピーを実行すると、.BINと.CUEという2つのファイルが生成される。

「ディスクイメージのパス」を指定する際、.ISOのほかに.BINが選べる

 .ISOファイルは音楽CDの保存ができないため、CD-DAを含むCD-ROMを保存する場合は.BINを指定しておく。CD-DAを含まない場合、どちらを指定してもイメージファイルの中身は同じものになるので、CD-DAを含まないと確証を持てないものはとりあえず.BINを指定しておくのが無難だ。

「Diablo II」のCinematics Discを.BINに指定してイメージファイル化したところ、無事に完了。内容は.ISOの時と同じものになった

 今回はCD-DA入りのCD-ROMが手元になかったので、試しにプレイステーションのCD-DA入りCD-ROMでイメージファイルを作成してみたところ、.BINを指定した場合はCD-DAも含めてイメージファイル化できた(ただしCD-DAの再生はうまくいかなかった)。.ISOを指定した場合はイメージファイル化が進まず中断せざるを得なかったので、CD-DAを含むCD-ROMは.BINを指定するという方針で間違いない。

プレイステーションのCD-DA入りCD-ROMをイメージファイル化したところ、.BINを指定した場合は正常に完了した

 なお、音楽CDを挿入した場合、.ISOを指定していると「オーディオCDは.bin形式でしか保存できません」と警告が表示され、そのまま.BIN形式でイメージファイル化された。手元にある中で最も古いであろう1986年のCD「組曲 ドラゴンクエスト」で試すと、無事にイメージファイル化が完了し、仮想CDドライブにマウントして無事に再生できた。

「組曲 ドラゴンクエスト」は492MBが8分17秒でイメージファイル化。仮想CDドライブから再生できた

イメージファイル化が成功しても、ゲームの動作には困難が……

 CD-ROMに破損がなく、無事にイメージファイル化が成功してバックアップが取れたとしても、発売から20年も経つようなゲームを実際に使うとなると多くの障壁がある。

 たとえWindows用のゲームでも、あまりに古いものは最新のWindowsでは動作しない可能性がある。Windowsには過去のバージョンの互換モードが用意されてはいるが、それでうまく動作するとは限らない。ゲーム発売当時のWindowsをインストールして使うという手もあるが、セキュリティ面で危険性が高く、上級者向けの手段だ。

 またイメージをCD-Rに書き戻すとしても、CD-Rのドライブとメディアがいつまで入手可能なのかという問題もある。現在はデータの保存や受け渡しにCD-Rが使われることはほぼなくなり、音楽用途でわずかに需要が残る程度。フロッピーディスクやカセットテープのように、いずれ市場から消えていくだろう。仮想CDドライブでの使用の方がまだ将来性はあるが、需要がなくなればソフトが更新されず、最新OSで非対応となるかもしれない。

 これらの問題は、時間が経てば経つほど状況が悪化していく。たとえ現時点では動作可能でも、いずれ動作環境がなくなって、イメージファイル化の作業が無駄になるかもしれない。

 それでも、中には「Diablo II」のように、22年経った今でも動作するゲームも存在する。ゲームの寿命より記録メディアの寿命の方が早かった、ということにならないよう、手持ちのCD-ROMを確認し、必要に応じてバックアップを考えていくべきだ。

 なお、音楽CDについても同様に寿命が来る。ゲームのサントラCDなどは流通数も少なく、配信サービスでの入手が難しいものも多い。手持ちのCDの状態を確認しておくとともに、絶版のCDでもまだ入手が可能なら、今のうちに手に入れてイメージファイル化しておく方がいいかもしれない。またCDプレイヤーも、PCに光学ドライブが搭載されなくなったり、PS4/PS5ではCDが再生できないように、徐々に縁遠いものになっていくだろう。

 「Diablo II」なら2021年にリマスター版の「Diablo II Resurrected(ディアブロ2 リザレクテッド)」が発売されたから大丈夫だって? 本当は1999年発売の「ZEUS カルネージハートセカンド」や、1997年発売の「ときめきメモリアル ~forever with you~」でやりたかったのだが、遠方の実家に置いてあるため採用できず。まだ無事だといいのだが。

【7月29日22時追記】 CD-DAを含むCD-ROMのイメージファイル化に関する記述を追記しました。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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