石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

不要になったHDDのデータ消去は無料の「Acronis True Image for Western Digital」でできる

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

要らなくなったHDDを処分するには?

「Acronis True Image for Western Digital」

 PCゲームをたしなんできた方なら、HDDの処分は常について回る問題だ。PCを新調したとき、HDDを置き換えて容量アップした際、最近だとHDDの使用をやめてSSDのみに移行したという方もいらっしゃるかと思う。そのときに余ったHDDをどうするか。

 「特に見られて困るデータはないよ」と思われるかもしれないが、たとえ業務で使用していなくとも、ゲームをはじめとしたオンラインサービスのアカウント情報など、どこにどんなデータが残っているかわからない。使用状況を問わず、HDDを手放すときには適切にデータを消去しておきたい。

 「HDDはどんなに消去してもデータが残る可能性がある。データ流出を完全に防ぐには物理破壊しかない」という方もいらっしゃる。筆者は、HDDが個人使用の範囲なのであれば、適切にデータ消去をしておけばいいのではないかと思っている。

 問題は、適切なデータ消去のやり方だ。HDDのデータ消去ツールはフリーソフトや有償のものなどさまざまある。筆者としては、なるべく手間なく、しかし確実にデータを消去したい。そこで今回は無料で使える「Acronis True Image for Western Digital」を利用してHDDのデータ消去を行った。

「Acronis DriveCleanser」でデータ消去

 「Acronis True Image for Western Digital」は、Acronisが提供するイメージバックアップツール「Acronis True Image」の機能限定版。Western Digital製のHDDやSSDが導入されているPCであれば無料で使える。ストレージが複数ある場合は、そのうち1台がWestern Digital製であればよく、作業対象が他社製のHDDでも構わない。ソフトはWebサイトからダウンロードできる。

 なお、「Acronis True Image」は、現在「Acronis Cyber Protect Home Office」という名前に変わっているが、Western Digitalから提供されているものは、本稿執筆時点では旧名のままだ。

 筆者は以前から本ソフトを愛用しているのだが、その目的はHDDのバックアップやクローンなどで、つい先日までデータ消去機能が含まれているとは知らなかった。以前は古いHDDのデータを新しいHDDにクローンした後、わざわざ別のソフトを使って古いHDDのデータを消去していたが、これ1本で解決できたわけだ。

 HDDのデータ消去を行うには[ツール]タブの中にある[Acronis DriveCleanser]を選ぶ。

[ツール]タブから[Acronis DriveCleanser]をクリック

 「Acronis DriveCleanser」のウインドウが開いたら、消去したいHDDを選択する。ドライブ一覧の左側にあるHDDマークのボタンを押すとそのドライブ全体の消去。その右側はパーティション別に分かれており、指定したパーティションだけの消去も可能だ。

データを消去したいHDDまたはパーティションを選択

 続いてはデータ消去アルゴリズムの選択。初期設定の[高速]だと全てのセクタに0を書き込むというものだが、これだとHDD表面の残留磁気からデータを復元される可能性があるといわれている。

 筆者は[米国国防総省準拠 DoD 5220.22-M 方式]をよく使う。計3回の書き込みの後に検証を行うもので、データを復元される心配はないといっていい。ただし、HDD全体を計4回書き込み・検証するため、作業には長時間かかる。

データ消去アルゴリズムを選択できる
[選択されているパーティションを完全に消去する]にチェックを入れてから実行

 筆者は今回、4TBのHDDのデータ消去を行ったのだが、作業には丸1日以上かかった。HDDの容量と書き込み速度から計算するに、これで正常だ。HDDの容量が大きくなれば、もっと時間がかかることになる。

 ちなみに今回の作業中、推定残り時間が1分未満のままで半日以上は止まっていた。データ消去対象のHDDはずっとアクセス中だったので放置しておいたら、作業終了の画面が出た。進まないからといって慌てて作業を中断しないよう、じっくり待とう。

この画面から作業終了まで半日以上かかった

 作業手順はこれだけ。時間はかかるが、とても簡単な手順で、かつ無料でデータを消去できる。元はAcronis製のソフトとはいえ、HDDメーカー自身が提供しているものなので、信頼性も高い。

データ消去中の注意点。Seagate製HDDでも同様のソフトあり

 作業の注意点としては、データ消去が終わるまではPCの電源を切らないこと。消去作業も中断してしまい、最初からやり直しになる。

 ノートPCで作業する場合や、外付けHDDのデータを消去する場合などでは、データ消去中のHDDはなるべく動かさないこと。動作中のHDDは衝撃に弱く、故障を招く可能性がある。これはデータ消去時に限った話ではないが、データ消去中は常にHDDが動作している状態なので、危険度が高い。

 データ消去の実行中、そのPCで他の作業をしていても構わない。データ消去作業はCPU負荷も低いので、ゲームをプレイする裏で走らせておいても問題はないだろう。ただし、ゲームのせいでWindowsごとフリーズするようなことは避けたいので、長時間にわたる高負荷などでPCの動作が不安定になることは避けた方がいいとは思う。

 ちなみに、Western Digitalと並ぶHDDメーカーであるSeagateからは、「Seagate DiscWizard」というソフトが提供されている。名前は違うが中身は「Acronis True Image」そのもので、データ消去用の「DriveCleanser」も使える。こちらもやはりSeagate製のストレージが入ったPCでのみ使用できる。

Seagate製HDD用のソフト「Seagate DiscWizard」。中身は完全に「Acronis True Image」で、データ消去も可能だ

 なお、SSDについては、データの記録方式がHDDとは全く異なるため、データ消去も異なる方法が求められる。これについては、筆者の環境で不要なSSDが出たときにでも改めて。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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