石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

ゲーマーも常駐推奨! HDDやSSDの異常を「CrystalDiskInfo」で検知

普通に使えていても、実は故障寸前かも……

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

ゲーミングPCもストレージの状態は把握しておきたい

「CrystalDiskInfo」

 「高性能なゲーミングPC」と言われたら、どんなPCを想像するだろうか。最新のCPU、高性能なビデオカード、大容量のメインメモリ、あるいは変換効率のいい電源や静かな冷却システムなどなど、見るべきところはいろいろある。

 筆者がゲーミングPCで結構気にしているのがストレージだ。プラッタ数の少ない高回転数のHDDを使ったり、プチフリ対策に小容量のSSDでRaid 0を組んだり、なるべく高性能なNVMe接続のSSDを選んだり……と時代によってやり方は違うが、いずれも「データを高速に読み込む」ことを求めている。ゲームをやろうと思った時に、PCを起動し、ゲームを立ち上げるまでの時間は、ストレージの性能に大きく左右されるからだ。

 ただストレージはPCの中でも故障しやすいデバイスだ。HDDは衝撃などによるダメージを受けやすいし、SSDも発熱によるダメージや書き込み限界量の超過など注意点はある。故障してPCが起動しなくなるのは困るし、ゲームのセーブデータは替えが効かない。常日頃から問題がないかチェックしておくようにしたい。

 ストレージの状態をチェックするソフトとして、筆者は「CrystalDiskInfo」を常駐させて使っている。ゲームを動かすPCで常駐ソフトを増やすのは、パフォーマンスの低下などゲームへの影響を考えると極力避けたいのだが、これだけは全てのPCゲーマー、できれば全てのPCユーザーに常駐での利用をおすすめしたい。

常駐させるだけでストレージの健康状態をチェックしてくれる

筆者が最近購入したキオクシア製SSD「EXCERIA PRO SSD」。全く問題がない状態だ

 「CrystalDiskInfo」は、HDDやSSD等のストレージの健康状態を確認できるソフト。ストレージには製品情報や温度、使用時間などのさまざまなデータがS.M.A.R.T.(Self-Monitoring Analysis and Reporting Technology)として保持されており、本ソフトはその情報を参照している。

 特に難しい設定はなく、ソフトを起動するだけで、PCに搭載されている全てのストレージの情報を表示可能。これで現状の確認はできる。細かいデータを1つずつ見て理解できればよりよいが、とりあえずは左上にある「健康状態」の項目が「正常」となっていれば問題ないと思っていい。

こちらは少し前に購入したSeagate製HDD「ST8000DM004」。健康状態は「正常」

 ストレージは1回確認して問題なくても、使っているうちに問題が発生することもある。一部がうまく読み書きできなくなったり、異常な発熱が検知されたりといった具合だ。そういう時にリアルタイムに状況を把握できなければ、問題がより深刻になり、最悪の場合は故障して中のデータを失ってしまう。

 本ソフトを常駐させておくと、タスクバーにアイコンが出てきて、何かしらの問題が起きた時に警告を発するようになる。過去に筆者が見た警告の1つは、もともと発熱が多めのHDDが真夏により温度が上がり、警戒値を超えたとして警告が出た。これ自体は別段問題はないものだったが、状態を把握できているのは安心感がある。

 常駐させるには、ソフトを起動した状態で、メニューの[機能]から[常駐]にチェックを入れる。さらに[スタートアップ]にもチェックを入れれば、OS起動時に本ソフトも自動で起動し、常駐してくれる。

 その後はタスクバーのアイコンをクリックするだけでウインドウが立ち上がり、ストレージの状態を簡単にチェックできる。なお、アイコンは各ストレージごとに用意され、温度が数字で表示されている。上の温度に問題があった例だと、アイコンの色も黄色く表示されて目立つようになっている。

ストレージに問題が見つかると?

健康状態が「注意」になったSeagate製HDD「ST3000DM001」。「代替処理済みのセクタ数」が8になっている

 ここまでは問題のないストレージの情報を見てきたが、過去に筆者が所有していたHDDには、本ソフトが警告を表示してきたものがある。

 例えば、Seagate製HDD「ST3000DM001」では、健康状態が「注意」と表示されていた。項目を見ていくと、「代替処理済みのセクタ数」が黄色の表示で、実数は8となっていた。ここに問題があるというのが一目でわかる。

 「代替処理済みのセクタ数」というのは、何らかの理由でHDDの読み書きに問題があるセクタ(場所)が見つかったため、そこに新たなデータを書き込まないようにしつつ、代わりの領域を割り当てて対処した数。いわゆる不良セクタがある証拠だが、代替処理ができているため、実使用上は何ら問題ないように見える。

 このHDDはその後も数カ月使用したが、この状態から変化がなく、そのまま交換まで使い続けられた。健康状態は「注意」となっているが、故障しているわけではない。状態に変化がなかったことから、不良セクタはあっても悪化はしないタイプの小さな問題だったと言える。ただ原因は不明なので、早めに交換しておくに越したことはない。

 もう1つ見ておこう。東芝製HDD「DT01ACA300」では「代替処理済みのセクタ数」が954となっていた。先程のものとは桁違いの数で、そのまま様子を見ていると、さらに数が増えていく様子が確認できた。増えるたびに常駐している本ソフトから警告が上がってくるのですぐにわかる。

 これでも健康状態は「注意」で、実際に使用している分には何ら問題を感じなかった。本ソフトでチェックしていなかったら気づかなかったであろう。ただ、問題があるとする数字が増えていくのは、何らかのトラブルが継続し、状況が悪化している可能性を示している。こちらは状況把握後、速やかに新しいHDDを用意してデータを退避させた。

健康状態が「注意」の東芝製HDD「DT01ACA300」。「代替処理済みのセクタ数」が954もある
さらに様子を見ると「代替処理済みのセクタ数」が961に増えた。何かしら問題がありそうで危険度が高い

 もし代替処理が大量に起こっている状態なら「代替処理保留中のセクタ数」の値が増える。さらに代替処理すらできない問題が起これば、「回復不可能セクタ数」の値が増えていくことになる。上のケースはいずれもそこまで至らないうちに交換できており、データの消失には至らなかったと思われる。もっとも全データの比較検証をしたわけでもなく、見える範囲では何もなかったというだけだが。

 注意の表示が出た上記のHDDでは、使用時間は7,000~9,000時間となっており、実稼働時間で1年程度となる計算。ただ別のPCでは使用時間が63,700時間(約7.3年!)でもノートラブルというものもある。HDDは何時間使えば壊れるとは決まっていないが、物理的にディスクを回転させている以上、長く使うほど故障する確率も上がる。本ソフトで状態を把握しつつ、適度なタイミングで交換を考えるようにしたい。

 と自戒しつつ、数TBもあるデータの移行って時間もかかるし面倒ですよね……。でも大容量になるほど故障時に失うデータも多いわけで、やっぱり早めに交換した方がいいと思います。

筆者所有のHDDの中で最も使用時間が長かった東芝製HDD「MD04ACA400」。実働7年超でも「正常」だ
使用時間30,000時間超えのIntel製SSD「X25-M」は、書き込み耐性が高すぎて「MLCというのは嘘で実はSLCなのでは?」と言われた製品。発売から何と13年経った今も「正常」である

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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