石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
年末年始なのでサービス24年目のMMORPG「EVERQUEST」はいかが?
現在は基本プレイ無料に! しかし、思い出のFreeportはなかった
2022年12月23日 11:00
年末年始の時間があるならMMORPGでも
本連載は今回が今年最後の更新となります。いよいよ年の瀬も迫ってきましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
年末年始のお休みでできた長い時間は、普段はできないヘビーなゲームを思いっきり遊びたいもの。MMORPGのように腰を据えて遊ぶゲームを始めるタイミングとしては絶好の機会です。いろんなゲームがあるので目移りしてしまいますが、今回取り上げる作品はこちら。
「EVERQUEST(エバークエスト)」。
Sony Online Entertainmentが1999年にサービスを始めた作品で、3Dグラフィックスを用いたMMORPGとして注目を浴び、世界で爆発的な人気となりました。その後に登場するMMORPGにも多大な影響を与え、日本の国産MMORPGとして知られる「ファイナルファンタジーXI」は「EVERQUEST」のコピーだと揶揄されたこともあります。
本作の運営会社はSony Online EntertainmentからDAYBREAKへと名前を変えましたが、24年目になる現在もサービスが提供されています。元々はパッケージを購入した上で月額課金が発生していましたが、現在は基本プレイ無料となり、誰でもすぐにプレイできます。
筆者もサービス開始当初から、「ファイナルファンタジーXI」が発売される辺りまでの3年ほどプレイしていました。その後はまともにプレイしたことはなく、今回のプレイはほぼ20年ぶり。とりあえず最初から遊んでみます。
充実のチュートリアルができていた
まずは公式サイトからアカウントの作成とゲームのダウンロード。過去に英語版をプレイしていた人は、同じアカウントでプレイできます(何らかの手続きが必要だったような気がするものの、筆者はかなり前に一度ログインしていて記憶が不確か)。
プレイヤーキャラクターは、複数の種族と職業から選択できます。筆者は以前プレイしていた時に、種族はErudite、職業はEnchanterでプレイしていたので、今回も同じにしてみます。
Eruditeでゲームを始めると、以前はErudinという僻地の島からゲームが始まり、夜になると真っ暗で何も見えないという初心者殺しの設定でした。現在は種族を問わずチュートリアルエリアからスタートするようになっていますので、好みの種族と職業を選んで構わないかと思います。
プレイヤーは最初、モンスターに捕まってしまったところからゲームがスタート。NPCの協力を得て、敵を倒して脱出します。その後もNPCから操作方法やゲームシステムの解説が、クエストの形で伝えられます。
チュートリアルをクエストで進めでいくのは、最近のMMORPGでは当たり前のやり方(というか、これももはや古臭いくらい)ですが、初期の本作にはそういったものはなく、いきなりゲーム世界に放り出される印象でした。わからないなりに冒険し、他のプレイヤーに教えを乞うのもMMORPGの醍醐味ではありますが。
クエストは特定のアイテムをNPCに持っていくなどの内容で、これ自体は本作の初期からありました。「EVERQUEST」という名前のとおり、無数にあるクエストをこなしていくことで、装備を強化したりキャラクターを成長させたりできるようになっています。
現在のチュートリアルはとても丁寧にできており、複数のクエストを並行して受けても内容を確認できるクエスト一覧や、目的のNPCの場所をガイドラインで示してくれる機能もあります。続編の「EVERQUEST II」では最初から実装されていた記憶がありますが、その逆輸入版でしょう。
ともかく最初はこのクエストをどんどん達成していくことで、遊び方を学びながらキャラクターの経験値と装備が整っていくようになっています。以前は街から出てすぐのところで弱い敵を倒しては座って回復し、死にそうになったら街に戻ってGuard(街の守衛)に助けてもらうという感じでしたが、そういう作業感もなくゲームを進められます。
システム面でもいろいろ変わっており、Meditate(魔法を使うと消費するManaを座って回復)中に最初から周囲が見えたり、NPCの傭兵を雇って一緒に戦えたりします。魔法攻撃力もそれほどではないEnchanterのソロプレイは高難度ですが、前衛タイプの傭兵と一緒に戦うとかなり楽になります。Manaが減ってきたら戦闘を傭兵に任せて、自分はMeditateしておくなんてことまでできます。
ゲームの進行はさほど難しいものではないですが、いかんせん拡張に拡張を重ねたシステムは古臭さと無理やり感が同居した状態で、各種ウインドウが複数開くと視認性が悪くなるなど、操作感がいいとは言えません。それでも3D空間で敵と戦ったり、パーティプレイを楽しんだり(といっても最初はNPCの傭兵とですが)といったゲームのコア部分に違和感はなく、「EVERQUEST」という作品が現在のMMORPGの基礎となっているのがよくわかります。
思い出のFreeportはなかった
せっかくなので筆者の以前のキャラクターでも遊んでみようと思いました……が、2つ持っていたはずのアカウントのうちメインの方を失念してしまい、サブの方でプレイ。それでもレベル50以上まで育ったキャラクターがいたはずなのですが、なぜかレベル35まで下がっており、装備品を含むアイテムを1つも持っていません。運営会社の移行の際に何かあったのかもしれませんが、詳しくは調べておりません。
ともかくキャラクターは生きているのでログイン。降り立った場所は最大の都市の1つであるFreeportの城壁前でした。筆者はゲームの初期からここを拠点にしていたので、とても懐かしいですね……と言いたかったのに、雰囲気が全然違います。砂漠にある城というのは同じですが、やたら城壁が高いし、各部があんまりカクカクしていないような。
どうやらFreeportのマップデザインが変更されているようで、筆者の知るFreeportではありませんでした。ともかく普段の待機場所だったNorth FreeportのBank(銀行)を目指そうとしたものの、道がわからず。ゲーム内のマップを開いて確認しても、West FreeportとEast Freeportは移動できるのに、North Freeportへの道がありません。もしや、North Freeportはもうない……?
しばらく歩くと、West FreeportにBankを発見。中身を確認するも、やはりすっからかん。がんばってお金を貯めて買った思い出の武器「Short Sword of the Ykesha」も電子の藻屑と消えた模様。
結局、筆者の思い出になるようなものには何一つ出会うことはできずじまいでしたが、1人のプレイヤーとも出会わない廃墟のようなFreeportを散策するという新たな経験ができたのでよしとします(きっと今は別の大きな街があるのでしょう)。
ちなみに筆者はMithaniel Marrというサーバーでプレイしていましたが、現在は他のサーバーと統合されたようで、Bertoxxulous - Saryrnサーバーになっていました。昔のアカウントで復帰しようという方は、現在のサーバーが何になっているか調べておくといいと思います。
「昔の内容で遊びたい」という方は、Progression Serverを探してください。これらのサーバーは本作の初期の頃の内容でスタートし、徐々にアップデートを適用させて現在の内容に近づけていくというもので、本作の変遷をたどりながら遊べるようになっています。サーバーごとにスタート日やアップデート頻度が異なるので、自分に合ったサーバーを探してプレイしてみてはいかがでしょうか。
「いまさら?」と言うのはナシで。20年以上も前のオンラインゲームが今でも遊べるというだけでも奇跡的なので、DAYBREAKのあるアメリカに向かって拝みながらありがたくプレイしましょう。
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/