石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

ルーターのファームウェアアップデート、やっていますか?

安定性の向上と脆弱性への対処。サポートが終了した製品は買い替えを

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

ルーターのファームウェアは最新版にしておきたい

 インターネットはいまや常時接続が当たり前。有線でもWi-Fiでも簡単に接続できるようになり、繋がらないなどのトラブルも滅多に聞かなくなってきた。

 23時になるや否やのダイヤルアップで少ない回線を奪い合いしたのも四半世紀前か……と遠い目をしてしまうが、長年のオンラインゲームライフで鍛えられた筆者でも、インターネット接続のトラブルはそれなりに面倒だ。全く繋がらないのは原因を見つけやすいが、たまに不安定な時があるような曖昧なトラブルは対処が難しい。

 そういう厄介ごとを少しでも減らすために忘れないで欲しいのが、ルーターのアップデート。ルーターは見た目には完成した製品のように見えるが、書き換え可能なフラッシュメモリやCPUを搭載した、れっきとしたコンピュータだ。PCと同様、常に最新のソフトウェア(ファームウェアとも呼ばれる)にアップデートをしておくことが望ましい。

 なぜアップデートが必要なのか、筆者の事例を交えて説明していきたい。

新しいルーターが不安定……でも最新ファームウェアで問題解決

筆者が購入したバッファロー製のWi-Fi 6対応ルーター「WSR-1500AX2S-BK」

 さかのぼること数カ月前、筆者宅で使用しているWi-Fiルーターが故障した。10年近く前に購入したWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)の製品で、リビング用のアクセスポイントとして使っていたのだが、電源を入れても動かず、設定画面も見えなくなった。使用期間を考えても寿命と言っていいだろう。

 交換品として、最新規格のWi-Fi 6に対応したWi-Fiルーターを導入した。インターネット接続にはNURO光のホームゲートウェイがあり、電波が届きにくい場所でアクセスポイントとして使うものなので、安価な製品でよかろうと判断。バッファローで最も安価な「WSR-1500AX2S-BK」を選んだ。

 購入前にインターネットで製品の口コミを調べてみると、接続が切れたり不安定になったりするという報告がいくつも並んでいた。安価な製品なのでそういうこともあるだろうが、アクセスポイントとしてなら大丈夫だろうと思うことにした。

価格.comではレビュー評価が5点満点の2.69点とかなり低い。普段ならこういう製品には手を出さないが、アクセスポイントなら別にいいか……?

 ところが実際に導入してみると、ちょっと大きめのダウンロードをしかけるとすぐに切断してしまう。しばらくすると復帰するのだが、Wi-Fi接続は切れてしまうし、またダウンロードをするとやはり切断される。ほかにもWi-Fiのチャンネルを固定で設定しても違うチャンネルに変わったり、WPA3を使うと遠方のホームゲートウェイのWi-Fiを掴んだりした。アクセスポイントとして使ってもこの状態で、まるで使い物にならない。

 安いものだし仕方ないと諦めるのも手だったが、せっかくなのでバッファローのサポートとやり取りしてみた。いろんなデータを求められては出してを何度か繰り返すも問題が解決しない状態が続いたが、ある日、「新しいファームウェアを公開したので試して欲しい」と伝えられた。

 言われるがままファームウェアをアップデートすると、それまでのトラブルが嘘のように解決。通信が途切れることはなくなり、設定どおりの無線チャンネルで通信するようになった。WPA3については問題が残っているが、WPA2にすれば問題ないので妥協することにした。

 このときのアップデート内容はバッファローのホームページに掲載されている。その内容を見るとたしかに問題になっていた部分のアップデートが入っていたが、それ以外の修正項目も異様に多い。

 中には『本商品背面にあるROUTER/AP/WBスイッチを「AP」にして、192.168.1.0/24のネットワークに接続すると、通信ができなくなることがある問題を修正』というものも。筆者の環境がまさにこれで、そんなバグがありえるのかと笑うしかなかった。

導入したファームウェアの更新内容。不具合修正の数も内容もすごい

 ともかくほとんどの問題は解決され、「WSR-1500AX2S-BK」は安価なアクセスポイントとして無事に動作している。ただ本製品が発売されたのは、このアップデートの約1年前。筆者が購入したのはもっと後だが、約1年間も極めて不安定な状態のまま販売されていたわけだ。これが修正不可能なハードウェアの欠陥ではなく、修正可能なソフトウェアの問題だったというのも驚かされる。

 ここまで大きな問題を長く抱えた製品は珍しいと思うが、一部の環境でのみ発生するような見つかりにくい問題は、どのルーターにも潜んでいる可能性はある。普段使っていて特に目立った問題はないとしても、新しいファームウェアが提供されているかどうかは、時々チェックしておく方がいい。万が一のトラブルの可能性を減らせるはずだ。

 製品によっては、ファームウェアの自動アップデート機能を持つものもある。「WSR-1500AX2S-BK」もこの機能があり、更新時刻が1時間区切りで設定できる。ファームウェアのアップデート時はルーターの再起動がかかるので、一時的にインターネット回線が切断される。オンラインゲームのプレイ中に切断が起きないよう、更新時刻は普段使用しない時間帯にしておくといい。

 自動アップデート機能がない製品なら、設定画面でファームウェアのバージョンを確認した後、製品のホームページを確認し、新しいファームウェアがあれば手動で適用しておく。それほど難しい作業ではないので、やったことがない、あるいは最近やっていないという方はぜひお試しいただきたい。

「WSR-1500AX2S-BK」はファームウェアの自動更新に対応。更新時刻も指定できて便利

脆弱性が見つかることも。不具合がなくても最新版へのアップデートを

 ルーターのファームウェアアップデートには、先述のようなバグ修正だけでなく、セキュリティ関連の対応も含まれることがある。ルーターはコンピュータなので、PCと同じく脆弱性があり、悪用されるとハッキングなどの被害を受ける可能性がある。

 そういう意味では、筆者の故障したWi-Fiルーターはセキュリティ的に危なかったかもしれない。製品のホームページを確認しても新しいファームウェアは提供されていないし、脆弱性に関する情報もなかった。ただこれで安心というわけではなく、単にメーカーが旧製品のサポートを終了し、情報の発信を止めていただけかもしれない。

 例えばバッファローでは、ルーターの脆弱性が確認された際には新しいファームウェアを提供している。しかし、サポートを終了した旧製品に関しては新しいファームウェアは提供されず、使用を止めるよう呼び掛けている。対象機種はホームページで公開されている

バッファローが発表している脆弱性のある機器の一覧。サポートが終了しておりファームウェアが提供されないものもある。こうなったら速やかに買い替えよう

 ルーターがコンピュータである以上、今後も新たな脆弱性が見つかることはあるだろう。バッファローのように脆弱性が見つかったという情報を提供してくれるメーカーならばまだいいのだが、すでにルーターの生産を止めてしまっているメーカーなどは、そういったアフターサポートは期待できない。

 Wi-Fi 5以前の古い機種で、メーカーのホームページが更新されていないような製品は、近いうちに交換を検討する方がいいだろう。セキュリティ的なリスクの対処だけでなく、筆者のように故障する前に対処するという意味もある。最近の製品は性能も上がっているので、より快適なインターネット通信ができるはずだ。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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