石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

いまさら聞けない、「Steam」って何?

PCゲーマーから圧倒的な支持。「ドラクエ」シリーズなど日本のゲームも販売

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

「Steam」はPCゲーマーの常識ですが

「Steam」クライアントの画面

 「Steam」を知らないPCゲーマーは世界中のどこにもいない……と言っても納得されそうなほど、当たり前の存在になって久しい。最近はマルチプラットフォーム展開をしているゲームで、対応プラットフォームの表記としてPlayStation 5やNintendo Switchなどと並んで、「Steam」という名前が出てくることも増えた。

 そうは言っても、これまで縁がなくて使ったことがないという人もいるはず。今回は「Steam」とは何かという話をしていきたい。

PCゲーム配信スタンドの筆頭格

 「Steam」は何かと問われたら、Windowsユーザーにとっては、PCゲーム業界最大の配信スタンド、という理解で間違いない。配信スタンドとは、ゲームなどのコンテンツをダウンロード販売するサービスのこと。「Steam」では数多くのPCゲームが売られている。

 世界中のゲームが集まっているので、海外製のゲームが大半を占めるのだが、日本のゲームももちろんある。日本語を収録したゲームを検索する機能もあるので、いわゆる洋ゲーファンのためのものというわけではなく、全てのPCゲーマーのためのサービスだ。

「ドラゴンクエスト」シリーズを始め、日本のゲームも売られている
海外製のものを含め、日本語に対応したゲームを検索できる

 Windowsのゲームだけでなく、macOSに対応するゲームもある。さらに「Steam」のゲームをプレイするためのOSとして、Linuxベースの「SteamOS」も展開しているし、独自の携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」も販売。VRにおいても「SteamVR」を展開し、VR黎明期から多数のVR対応ゲームが販売されている。

 さらに「Steam」はゲームを販売して終わりではなく、購入済みのゲームを一覧・管理したり、ゲームの起動およびデータの保存、プレイ実績の記録など、PCゲームに関わる機能を一元的に有している。これが「Steam」がプラットフォームの1つとして数えられるようになった理由の1つで、多くのPCゲーマーが「Steam」を支持する(というか離れられなくなった)理由でもある。

 「Steam」は今やPCゲームのあらゆる場面で中核にいる存在と言っていいだろう。

携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」。こういったハードウェアも時折出してくる

Valveが「Half-Life 2」に勝手にくっつけてきた

「Steam」の運営会社は米Valve

 「Steam」の運営会社は米Valve。「Steam」を知っていてもValveを知らないという人は、若い方には意外といるのではないかと思う。

 Valveはストーリー性の高いFPSの先駆けとして知られる「Half-Life」を始め、対戦型FPS「Counter-Strike」、3Dアクションパズル「Portal」などのヒット作を持つゲーム会社だ。2000年前後辺りに、他社とは一味違う印象的なタイトルを出しては大ヒットさせてきた。

 「Steam」が世間の注目を集めたのは、2004年に同社が発売した「Half-Life 2」。世界中のPCゲーマーが待望した作品だったのだが、本作をプレイするためには「Steam」の利⽤が必須とされた。最初は『「Half-Life 2」をやりたいだけなのに、余計なものをインストールさせるな』と非難されることもあり、決して歓迎されていたわけではない。

2004年発売の「Half-Life 2」。独特なストーリーに加え、映像の美しさでも注目された大ヒット作

 しかしその後、Valveは「Steam」をアップデートして洗練させつつ、自社タイトルの配信だけでなく、他のゲーム会社に「Steam」でのゲーム配信を持ちかけていく。徐々に賛同する企業が増え、配信タイトル数も増えて、ゲーマーからも『入れておくと便利』になり、やがて『なくてはならない存在』に変わっていった。

 Valveは現在もゲーム開発を続けているが、「Half-Life」シリーズのようなビッグタイトルを次々と繰り出す企業、という印象ではない。世間的にはやはり「Steam」の運営会社としての顔の方が圧倒的に強い。

 現在ではMicrosoftやElectronic Arts、Activision Blizzard、Ubisoftなど、大手ゲーム会社はそれぞれ独自に配信スタンドを用意している。しかし彼らは自社タイトルの一部を「Steam」でも配信しており、「Steam」の強さは明らかだ。唯一対抗心を燃やしているのはEpic Gamesくらいだろうか。

 「Steam」は今や世界のPCゲーム市場を牛耳るような存在だが、元をたどれば1ゲーム会社が始めたものだ。最近はPCゲームを実店舗で購⼊することはほとんどなくなったが、配信スタンドをいち早く用意した上に他社をも取り込み、かつ自社タイトルの利用者から煙たがられても導入を強行したValveに先見の明があったということだろう。

導入は無料で簡単

 「Steam」の導入方法についても触れておこう。といっても何ら難しいことはない。まず公式サイトの右上にある[Steamをインストール]のボタンをクリックし、クライアントをダウンロード。

公式サイトの右上にある[Steamをインストール]をクリック
[Steamをインストール]をクリックすればクライアントをダウンロードできる
インストールはセットアップウィザードに従うだけ
日本語を選択
インストールフォルダーを選択
しばらく待つとインストールが完了。[Steamを実行]でクライアントが起動する

 インストールが終わってクライアントを起動するとログイン画面が表示される。右下に[無料アカウントの作成]のリンクがあるのでクリック。メールアドレスと居住国を入力すれば、無料でアカウントを作成できる。なおアカウントの作成は13歳以上の人のみとされている。

クライアントが起動したら、右下の[無料アカウントの作成]をクリック
メールアドレスと居住国を入力。メールが届くのでその指示に従ってアカウントを作成する

 あとは「Steam」にログインし、欲しいゲームを探して購入、ダウンロードしてインストール、起動して遊ぶまでが、クライアント上でワンセットになっている。特に難しいことはないと思うが、基本的な使い方については次回改めて紹介したい。

 余談だが、様々な3Dゲームをプレイしてきて3D酔いとは無縁だった筆者は、「Half-Life 2」で初めて酷い3D酔いを体感し、その後は多くのFPSで酔う体質に変わったという因縁深い作品である。もし「Steam」の歴史における重大な作品として体験しておこう、と思った方がいらっしゃったら、「Steam」で探して遊んでみていただきたい。ゲーム自体は間違いなく名作なのだ……。

「Half-Life 2」は今も「Steam」で売られている

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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