石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

AI自動お絵描き「Stable Diffusion」でゲーム開発用画像の制作に挑戦

元画像にテキスト指示でアレンジする機能も試す

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

お絵描きAIはゲーム開発素材も作れるのか

「Stable Diffusion」

 先日、AI画像生成ツール「Stable Diffusion」のレビュー記事を執筆したところ、かなりの注目を集めた。本連載の記事より人気なのは口惜しや……ということでこちらでも取り上げる。

 「ゲームと関係ないじゃん」と言われそうだが、適当なキーワードを突っ込んで画像を生成しているだけでめちゃくちゃ面白い。目的に近い画像をどうやって出すかを考えるのは、もはやゲームと言っていい楽しさだ。

 「Stable Diffusion」に限らず、AI画像生成ツールで作成した画像をゲーム開発用の素材として使おうという動きもある。非常にクオリティの高い画像を生成できるので、開発者としては当然の発想だろう。特に「Stable Diffusion」はオープンソースで無料なので個人開発者にも利用のハードルが低く、また生成画像の商用利用も可能とされているのでゲームの素材に用いやすい。

 そこで今回は、「Stable Diffusion」でゲーム開発用の画像素材を作ってみるというコンセプトで話を進めていく。なお、今回の記事の執筆にあたり、あらかじめ筆者宅のPCで「Stable Diffusion」のローカル実行環境を整えた。

こちらは「Stable Diffusion」にお絵描きAIのイメージイラスト(つまり自分自身)を描かせたもの

テキストを入力して格闘ゲームの画像を作る

 ゲームにもいろいろあるので、今回は対戦格闘ゲームを想定して、いろんな画像を作ってみる。英語で入力せよとのことなので、「DeepL翻訳」を通して適当に直している。まずはテキスト入力で「Action Games Background Images」と入れて実行してみた。

マスターチーフかな? アクションゲームといえばこういうの、と学んでいるのがわかる

 続いて「Fighting Games Background Images」と入力。

鉄拳×ストリートファイターみたいな。なるほど?

 背景画像がうまく出ないので、先にキャラクターを狙ってみる。今度は「A female soldier in an anime-style fighting game」。

左上は何らかの問題でフィルタリングされた時に出る画像。他はまあまあそれっぽい

 全身を見せてもらいたいので注文を細かくして「Full body image of a female soldier in a cartoon style fighting game」ではどうか。

いい感じの絵が出てきた。こちらの意図はAIに伝わっている

 これはこれですでに面白くなってきているのだが、どうもこのやり方だと、キャラのインスピレーションの種にしかならなさそうだ。そこで別の手を考えてみる。

元画像をベースにAIがアレンジする

 次はすでにある画像をもとに、AIにテキストで指示を出して描き直させる手法を試す。元画像はざっくりした手書きのものでも構わないが、今回は先に出力された画像を流用してみる。

先程出力された画像をサンプルとする

 この画像に「pretty」と注文を付けて描き直してもらう。

なるほど可愛い女性になった

 輪郭と色味をベースに可愛い女性を描いた、という意図が理解できる。であれば、指示をより細かくしていくのがよさそうだ。「Female soldier with black hair, Japanese, anime style」としたらどうだろう。

アジア系のテイストはある

 試しにアサルトライフルでも担いでもらおう。今度は「Female soldier firing an assault rifle, in a cartoon style fighting game」。

ちゃんと持たせてくれた

 ならばもっと要素を増やして、いろんなものを出しつつ指示も増やす。「A black-haired female fighter jumping and kicking at a giant monster」。

思ったのとは違うけれど、案外味のある絵

 「Street Fighter」。

AI、ストリートファイター知ってる?

 「minecraft」。

AI、マイクラは絶対知ってる

 「Top Gun」。

AI、トップガンも知ってる

 下絵をベースにする場合、こんな絵が欲しいという具体的なイメージを持って、ポーズくらいはしっかり作っておくのがいいのかもしれない。また映画やマンガなどの著名なタイトルと合わせるとイメージに近いものが出てくるのでおすすめ。ただし「ONE PIECE」や「Dragon Ball」と入れると、主人公そのものが出てきて著作権的に言い逃れできなさそうなので、ある程度は注意が必要だ。

 なお、本稿では適当なキーワードを入れて出力画像を並べただけに見えるが、実際はこの何倍もキーワードを変えて試し、一度に複数の画像を出力させて良さそうなものを抽出したりしている。適当にキーワードを入れれば常にすごい画像が出てくるわけではなく、意図したものとは違ったり、絵的におかしかったりするのが常だ。

 あれこれキーワードや元画像を変えながら、使えそうな画像を探していく。あるいは出てきた画像をベースに手直しやトリミングで使えるようにするという方法もある。「こいつがあれば絵を描けない人でも好きなだけゲームの絵素材が作れる!」というレベルには達していないので、過度に期待せず、うまい付き合い方を探っていくのがいいだろう。

 もっとも実際のところ、そんな探り方をする必要もないかもしれない。これだけ広い人がAIで絵を描けることを知った今、AI自体の進化や学習データの多様化、UIの改良など、より扱いやすいAIツールがどんどん世に出てくるだろう。

 では今すぐやる意味は何か? 「面白いから」でいいんじゃないか。出来立てのMMORPGで、みんなが右も左もわからない中で、我先にと冒険へ飛び出していくワクワク感は、先人の攻略法を辿るだけの遊び方では味わえない。まだ見ぬ世界へ踏み出す楽しさが、ここにはあるのだ。

これらはいずれもキーワードのみで生成したもの。使い道によっては、うまくマッチするゲームもありそう

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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