石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

基本プレイ無料! PCでもSwitchでも遊べる! Blizzardの新作FPS「オーバーウォッチ 2」

「スプラトゥーン」人気にあやかり、無料FPSの第三勢力となるか

 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

Blizzardの新作FPSが何と無料! ……だが国内知名度は?

「オーバーウォッチ 2」のタイトル画面

 Blizzard Entertainmentの新作FPS「オーバーウォッチ 2(Overwatch 2)」のサービスが10月4日に始まった。

 前作「オーバーウォッチ」のソフトは有料だったが、今作は基本プレイ無料での提供となった。前作もかなりの人気だっただけに、無料で提供されたことで注目度はさらに上がり、多くのプレイヤーを集めそうだ。

 ただ、FPSにはすでに人気の高いタイトルがいくつもある。基本プレイ無料のものに絞ってもなお競争は激しい。そもそも日本ではFPSの人気はそれほど高くはなく、洋ゲーファンでなければ「オーバーウォッチ」を知らない人も多いのではないかと思う。

オーバーウォッチ 2|ローンチトレーラー

「フォートナイト」や「エーペックスレジェンズ」のライバル候補

 「オーバーウォッチ 2」を開発した米Blizzard Entertainmentは、「Warcraft」や「Diablo」、「StarCraft」といった強力なシリーズタイトルを持つゲーム会社。「Diablo」のオンラインサービスとして作られた「Battle.net」は、現在ではゲーム配信も含むプラットフォームとして機能しており、「オーバーウォッチ 2」も「Battle.net」経由でダウンロードする。

今や配信スタンドの機能も持っている「Battle.net」

 基本プレイ無料のFPS(TPS)と言えば、「フォートナイト(Fortnite)」と「エーペックスレジェンズ(Apex Legends)」が現在の二大巨頭だろう。いずれもWindowsのみならず家庭用ゲーム機やスマートフォンにも展開している。

 「オーバーウォッチ 2」はWindowsのほか、Nintendo Switch、PlayStation 5、Xbox Series X|Sにも展開している。スマートフォン版は今のところ提供されていないものの、最初から家庭用ゲーム機を含めたマルチプラットフォーム展開になっているのは、まさにこれらのタイトルに正面からぶつかって勝ちに行くという気概の表れだ。

 Blizzard Entertainmentが提供する新作ゲームという点で興味がわくPCゲーマーは、おそらく洋ゲーファンだと思う。世界最大のMMORPGである「World of Warcraft」を抱え、ゲーム業界、ことオンラインゲームにおいては大きな存在感を示しているが、その「World of Warcraft」は日本語版が提供されておらず、日本での知名度はさほど高くない。

 こと日本に限っては、Blizzardや「Battle.net」はネームバリューにならない。ゆえに「オーバーウォッチ 2」が日本でどのくらい注目されるのかは、今のところあまり読めない。基本プレイ無料のFPSということで、試してみようという層はある程度はいると思うが。

3つのクラスと多数のキャラクターから選べる、5対5のチーム戦

 FPSというジャンルは、海外では1990年代から人気が高まり、以降は無数の作品が登場し、多数のビッグタイトルも生まれた。しかし日本で際立ってヒットしたFPSというのは記憶にない。そこそこのヒット作はあっても、「知る人ぞ知る」の範囲でしかない。

 そこに彗星のごとく現れたのが「スプラトゥーン」。キャラクターが画面に映るTPS(サードパーソンシューター)ではあるが、銃を撃ち合う3Dゲームという根幹部分はFPSと同じだ。

 最新作の「スプラトゥーン3」はNintendo Switch専用だし、ソフトは有料、ゲーム内容もインクを塗るという独特なものだ。それでも小人数のチームで戦うシューターという点では「オーバーウォッチ 2」と共通している。

 「オーバーウォッチ 2」は、5対5のチーム戦になっており、武器や能力が異なる数十のキャラクターから1人を選び、仲間と連携して戦う。

選べるキャラクターはかなり多い。武器や能力も大きく異なる

 特徴的なのは、全キャラクターが3つのクラスに分けられている点。基本の戦闘を主とした「ダメージ」のほか、HPが高くやられにくい「タンク」、味方の回復や敵の妨害を行う「サポート」があり、それぞれの役割を果たしていくのが重要になる。チーム内の人数は「タンク」が1人、ほかは2人ずつと決められている。

 同じクラスに属するキャラクターでも、武器や能力は大きく異なる。いろいろなキャラクターで遊んでみるもよし、1つのキャラクターを極めるもよし(とはいえ「タンク」しかやらないというわけにはいかないが)。格闘ゲームのように個性的なキャラクターたちが登場するのも本作の魅力だ。

敵との戦いを主とした「ダメージ」。FPS的にオーソドックスな存在
「タンク」はHPが際立って高い。敵の矢面に立つチームの中心的な存在
「サポート」は回復もこなせる。「タンク」を回復して支えるのが重要だ

 ゲームとしてはかなりスピード感のあるFPS。すぐに対戦モードに入るのは不安という人のために、ほかのプレイヤーとチームを組みつつ、AI操作の敵チームを相手にする練習モードも用意されている。AIの強さは3段階あるが、一番下でもそれなりに連携して攻めてきて、FPS初心者だとかなり戸惑うかもしれない。対人戦はもっとハードになるはずなので、練習あるのみだ。

 動作環境については、GeForce GTX 1080を搭載したPCでは、4Kの最高画質で特に違和感なくプレイできた。またディスクリートGPU非搭載のノートPCでは、最低画質で解像度は1,280×720ドットとかなり落ちるものの、フレームレートは十分で何とか遊べる状態にはなっていた。動作が軽めなのも基本プレイ無料のFPSでは重要なポイントだ。

最近のゲーミングPCなら、4K最高画質でもプレイ可能
かなりのスピード感で、戦略的かつ派手な戦いが繰り広げられる

「スプラトゥーン3」の人気が「オーバーウォッチ 2」をけん引する?

 そういったゲーム内容から鑑みるに、日本で「オーバーウォッチ 2」に最も競合するのは「スプラトゥーン3」なのではないかと思う。「スプラトゥーン3」が遊べる環境があるなら、追加料金なく「オーバーウォッチ 2」も遊べるので、手を付けやすい。またPS5やXbox Series X|Sでも遊べて、なおかつクロスプラットフォーム対応なので、PS5ユーザーの友達とSwtichで一緒に遊べるというのもある。

 「スプラトゥーン」シリーズのおかげで日本人のFPS嫌いが薄れ、若い世代ははじめからFPS(TPS)に馴染んでいるので、FPS界隈への貢献度は非常に高い。そこに基本プレイ無料で遊べる「オーバーウォッチ 2」が来れば、親も強いて止める理由もない。小学生に「フォートナイト」が流行ったのと同じ現象がまた起きる可能性はある。

 とはいえ「オーバーウォッチ 2」はチーム戦。「フォートナイト」のように1人でフラフラ歩いているだけでも運よく順位が上がっていくバトルロイヤル型のゲームとは違い、チームとの連携や戦略性が求められる。そう思うと対象年齢はいくぶん上になるかもしれないが、「スプラトゥーン」だって小学生が遊んているわけで、無理と決めつけてはいけない。

 筆者が「オーバーウォッチ 2」に注目しているのは2点だ。1つは競合タイトルとはかぶらないゲーム内容。5対5で多数の個性的なキャラクターを選ぶというスタイルは、「フォートナイト」や「エーペックスレジェンズ」とは全く方向性が異なる。ユーザー層はかぶるだろうが、ユーザー傾向はかなり違うはずで、チームの戦略性を楽しみたい人や、競技性の高さを求める人が多くなるはずだ。

5対5のチーム戦となるので、味方と連携して役割を果たす行動が求められる

 もう1つは、やはりBlizzard Entertainmentの手腕だ。「World of Warcraft」というビッグタイトルをはじめ、数々の名作オンラインゲームを手掛けてきた実績と経験でもって、基本プレイ無料のFPSに殴り込みをかけてきている。基本プレイ無料での運営についても、カードゲーム「ハースストーン(Hearthstone)」で実績がある。同社としても満を持しての展開と見られるだけに、今後の動向に注目せざるを得ない。

名作しかないパワフルなBlizzard Entertainmentのラインナップ

 ……などと言ってはみたものの、日本で「オーバーウォッチ 2」が「スプラトゥーン3」を追い抜く大ヒットになるなどとは夢にも思ってはいない。ただ「フォートナイト」や「エーペックスレジェンズ」を追い抜くくらいの勢いになってもおかしくはない。

 個人的予想では「エーペックスレジェンズ」の人気は抜けないかな……という気はする。まあバトルロイヤル型とは全然違うゲームなので、無理に張り合う必要もない。またPC向けのFPSには基本プレイ無料の「ヴァロラント(VALORANT)」があり、こちらはゲームの趣向が近い。「オーバーウォッチ 2」の前途は多難だが、この先どうなるかが楽しみだ。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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