石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
SUNSOFT is Back! 1986年のファミコンソフト「マドゥーラの翼」にノーヒントで初挑戦してみた
理不尽に詰むレトロゲームのワナも、移植版なら巻き戻し&セーブ機能で安心
2024年4月26日 06:55
SUNSOFTのファミコン3作品がPCで遊べる
「SUNSOFT is Back! レトロゲームセレクション」がSteamとNintendo Switchで発売された。価格は1,980円。
これはサン電子のゲームソフトブランド「SUNSOFT(サンソフト)」から、ファミリーコンピュータ用として発売された「マドゥーラの翼」、「東海道五十三次」、「リップルアイランド」の3作品を移植、収録したもの。昨年7月から行われたクラウドファンディングを経て発売された。
SUNSOFTはファミコンの初期から人気タイトルを連発しており、「いっき」や「アトランチスの謎」はとても有名だ。また「上海」シリーズは定番パズルゲームとしてよく知られている。筆者はディスクシステムの「デッドゾーン」や「ナゾラーランド」シリーズが好きだった(が、知名度は低そう)。
今回収録されている3タイトルについては、ド田舎の小学生であった筆者の狭いコミュニティにおいては、「東海道五十三次」を誰かが遊んでいるのをチラ見した程度で、「マドゥーラの翼」と「リップルアイランド」は名前しか知らない。
しかし世間の知名度は決して低くない。「マドゥーラの翼」と「東海道五十三次」は、お笑いコンビ・よゐこの有野晋哉さんがレトロゲームをプレイする番組「ゲームセンターCX」で採用されており、YouTubeでも配信された。そこから最近知ったという方も多いかもしれない。
今回は本作の発売を記念して、筆者も「マドゥーラの翼」からプレイしてみようと思う。ちなみに上の動画は子供が見ていたので知っているだけで、内容はしっかり見ていない。
昔のゲームはまず説明書をよく読もう
「マドゥーラの翼」は、1986年発売のアクションゲーム。オーソドックスなサイドビューで、現れる敵と戦いながら先へと進んでいく。
ゲームをプレイする前にやっておきたいのが、L+Rボタンでのメニュー呼び出し。右下にある開いた本のようなアイコンを選ぶと、ファミコン版の説明書を読めるようになっている。とても重要なことがいくつも書いてあるので、最初に目を通しておく方がいい。
武器は剣だけ。自分の目の前の敵にしか攻撃は届かないが、敵はさまざまな動きでこちらに体当たりを仕掛けてくる。最初に遭遇する敵「ドピープ」から既に厄介で、敵が小さいため立った状態で剣を振っても当たらず、しゃがんで攻撃する必要がある。
途中にある部屋のような場所に入ると、攻撃力やジャンプ力を強化するアイテムを見つけられたり、ボスとの戦いになったりする。ボスを倒すと次のステージに進める扉が開き、その扉を見つけて入ればステージクリア。手順としてはシンプルだ。
画面上部に出ている数字はHPで、敵の攻撃を受けると減り、0になるとゲームオーバー。残機もなくタイトル画面に戻される。
タイトル画面でセレクトボタンを押しながらスタートボタンを押すと、クリアしたステージを選択して再開できる。それまでに入手したアイテムも保持したままで、回数制限もない。ただしタイトル画面でセレクトボタンを押さずにスタートボタンを押すと、ステージ1から開始となってしまう。再びやられてタイトル画面に戻っても手遅れで、最初からやり直しだ。
このコンティニュー方法は説明書にも書かれている。わざわざ特殊操作をさせずに、必ずステージセレクトが出るようにしてくれよと思ってしまうが、これもテレビゲーム黎明期の作品らしさを感じる部分ではある。
攻略法がちゃんと見つかる
やることはシンプルなので、どんどんゲームを進めていく。敵と戦い、先へ進み、アイテムを拾いながらボスを探して倒す。ただ敵の動きはどれも結構素早く、ダメージを受けると主人公がノックバックして、体勢が整わないうちに何度も追撃されることもある。最初はあっという間にゲームーオーバーを迎えがち。
そこで役立つのが移植に際して追加された新機能。ゲームパッドのYボタンを押すと時間を巻き戻せるようになった。戻せる時間には限界があり、いくらでも戻れるわけではないものの、敵にダメージを食らい過ぎたら戻すとか、ボスとの戦いで攻撃パターンを見切るまで何度も繰り返すといった使い方ができる。
例えば、空から一直線に自分へ向かってくる「ニュール」というモンスターは、逃げるのも難しく、数が多くなると倒しきれない。序盤から出てくる敵とは思えない厄介さだが、先へ進めず何度も巻き戻して対処を探るうち、しゃがんでいればダメージを受けないことに気づいた。それでも厄介なことには変わりないのだが。
本作では道中の雑魚モンスターはいくらでも湧いてくるので、避けられる戦闘は極力避けたほうがいいようだ。がんばって倒していても先へは進めないし、雑魚を倒す意味はほとんどない。これも早く気付かないと攻略に手間取りそうだ。
ボス戦では雑魚とは違う能力を持った敵が出てくる。ステージ4のボスは移動速度がこちらとほぼ同等で、追いかけても攻撃は当てられないし、正面から斬りかかると体当たりで大ダメージを受けてしまう。普通に剣で斬りかかっていては倒せそうにない。
そこで本作の攻略のポイントである魔法が役に立つ。魔法は道中でアイテムとして発見でき、手に入れた魔法はスタートボタンを押してポーズ状態にしてから、セレクトボタンを押すと剣の代わりにセットできる。
最初に手に入る魔法「フレーム・ソード」は、攻撃すると剣先から火炎球を発射する。向かってくる敵に火炎球を連打すると、あっさりと撃破できた。魔法は数種類あり、ボス攻略ではどの魔法をどう使うかが攻略のポイントになりそうだ。なお画面下部にある数字がMPになっており、魔法を使うたびMPが減っていく。
ワナにかかったらやり直そう
途中、ボスが見つからなかったりして詰まりつつもステージ5に到着。右の方へ移動すると、ジャンプでブロックを渡って上へ進むであろう場所に来た。しかしジャンプに失敗してしまい、最下層へ。復帰しようとブロックをジャンプしていく……しかし高さが足りず、どうやっても戻れない。
おそらく過去のステージで、ジャンプ力がアップするブーツを取り逃しているのだと思われる。仕方ないので敵にやられてステージの最初からやり直そうかと思ったが、どうやっても敵のコウモリが自分の位置まで来てくれない。やられる方法も進む方法もなく、悩んだ結果、メニューを呼び出してリセットを選択。
メニュー画面からセレクトボタンを押しながらスタートボタンを押すも、ステージ1の画面が。ファミコンでリセットボタンを押したら、ゲームは最初の状態に戻るのだから、これで正しい挙動なのである。
こんな理不尽なリスタートは、今の時代のゲームに存在したら低評価レビューの嵐になること間違いなし。リセットだけでなく、クリアするまで電源を切れないわけだが、バックアップ機能がないゲームなのだから仕方ない。
説明書にも「敵のワナにかかってステージクリアできなくなってしまった場合は、もう一度やり直して下さい」と書いてある。これをワナと呼ぶべきかどうか悩ましいが、現代なら「ちゃんとデバッグしろ!」と言われるだろう。現代ではないから仕方ない。本作はそういうゲームだ。
では現代ではどう対処するのか? 何とセーブができるのだ。好きなタイミングでメニューを呼び出し、セーブを選択。セーブスロットを選べばセーブできる。次にプレイする時にはメニューからロードを選べば、いつでもゲームを再開できる。ワナにかかろうが、電源を切ろうが、全く問題ない。
本作を素直に遊ぶと、どこにアイテムがあるか調べ回らないといけないし、全てのアイテムが見つかったかどうかもわからない。ノーヒントでクリアするのはなかなか難しそうだ。「ノーヒントで難しいと言っていたら『ドルアーガの塔』は遊べないな」という声が聞こえる気がするが、程度問題であり大変なものは大変だ。
それでもファミコン時代とは違い、ちょっとしたミスは巻き戻し機能で帳消しにできるし、リセット不可避な状況もセーブ機能で復帰できる。理不尽なワナによるリセットや、遊ぶ時間が終わって電源を切るという状況は、ほぼ起きなくなる。
クリアは難しいが不可能ではない、なるほど納得な名作
筆者としては初めて「マドゥーラの翼」をプレイしたが、剣による攻撃範囲の狭さと、敵の挙動の複雑さのため、序盤からかなり難易度が高いと感じた。慣れればある程度は進めるようになるが、ノーダメージでスルスルと進むという状況までは程遠い感じがする。コンティニューを繰り返して、アイテムを探し回ってというプレイが続く感じだ。
筆者としては、本作をファミコン版のまま移植されていたら「今じゃとても理不尽すぎて遊べない」と感じたと思う。そこでゲームの要素は変えず、内容を損なわずに、現代ならではの補助を付けてユーザーフレンドリーにしてくれているのは、いい解決方法だと思う。
小学生の頃にファミコンで遊んだ方も、当時クリアできなかったゲームに再挑戦しようと思うはずだ。逆に「こんな甘すぎる機能は許せん!」と思われる方は、一切メニューを呼び出さずにプレイしていただければいい。
インターネットで検索すれば、攻略サイトや動画は今でも見つかる。それらを見て気楽に楽しむもよし、筆者のようにあえてノーヒントで当時の味を楽しむもよし。いずれにしても本作は、当時のゲームとしては攻略の仕組みがしっかりしており、情報さえあればクリアも目指せるという点で、立派に名作だったのだと感じられる手ごたえだ。
当時9歳の筆者が本作を手にしていたとしても、クリアは難しかっただろう。だがもし今と同じ仕組みで遊べたのなら、根気よく最後まで遊べたのではないかと思う。ユーザーフレンドリーでマニュアルなしでも遊べるゲームが当然になった、現代の9歳が本作を遊んでどう感じるか、聞いてみたいところだ。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。