石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
SUNSOFT is Back! 1986年のファミコンソフト「東海道五十三次」を実質ノーミスでクリアする
昭和のゲームは難しすぎる? 令和なら巻き戻しで大丈夫!
2024年5月2日 16:45
「東海道五十三次」って難しいんですよね?
「SUNSOFT is Back! レトロゲームセレクション」がSteamとNintendo Switchで発売された。価格は1,980円。
本作はサン電子のゲームソフトブランド「SUNSOFT(サンソフト)」がファミコン向けに発売した3作品を移植したもの。先週は「マドゥーラの翼」をプレイした。
今週はもう1作品、「東海道五十三次」をプレイしてみよう。ファミコン版は筆者が9歳の時に発売された作品で、かなり知名度は高いと思う。ただ筆者自身の経験としては、友達が遊んでいたのを見た記憶がある程度で、小学生にはクリアはほぼ不可能な難しさという記憶が残っている。
お笑いコンビ・よゐこの有野晋哉さんがレトロゲームをプレイする番組「ゲームセンターCX」でも採用されたようだが、17時間かけてクリアできなかったそうだ。
今回は本作をクリアまでプレイしてみようと思う。移植に合わせて、好きなタイミングでセーブできる機能と、時間を巻き戻せる機能が追加されている。これを駆使すれば47歳のオッサンゲーマーでもクリアできるのでは? という実験である。
高低差の活用がポイントになるアクションゲーム
「東海道五十三次」は、花火師のカン太郎が許嫁のももこちゃんに会うため、京都から江戸までの東海道を旅するゲーム。道中にいる敵をかんしゃく玉で撃退しつつ、ひたすら江戸に向かって駆け抜けるという内容である。
サイドビューのアクションゲームで、各ステージを左から右へ進み、ゴール地点にたどり着いたら次のステージに進める。基本的にはこれだけの内容だ。ステージは全部で21。「五十三次なのに21?」と言われそうだが、ファミコンの中でも割と古いゲームなので容量の限界であろう。
筆者は本作の攻略法をほとんど知らない。ステージを先へ飛ばす裏街道、いわゆるワープもあるそうだが、そういう情報もあえて入れずにプレイする。もちろん説明書は熟読しておくが、アイテムがどこかに隠されているという情報がある程度で、さほどヒントにはならない。
早速プレイ開始。主人公はかんしゃく玉を山なりに投げ、敵に当てれば倒せる。敵に当たらなくても一定時間で爆発する。同社のファミコン用ゲーム「アトランチスの謎」の爆弾と似た感じがするが、かんしゃく玉を敵に直接当てても倒せる本作の方が素直な挙動だ。しゃがんでいる間は足元にかんしゃく玉を置け、自分が爆発に巻き込まれても問題ない。
敵は忍者のように飛び跳ねて体当たりしてくるものや、銃や手裏剣などの飛び道具を使ってくるもの、投げつけたかんしゃく玉を剣で切り落として無効化するものなど、なかなか嫌らしい挙動で主人公を追い詰めてくる。一部の強力な敵を除き、雑魚は無限に湧いてくる。ステージの最後に到達すればクリアになるので、無理に倒そうとせず進んでしまうのもありだ。
敵の攻撃は1発でも食らえばミスとなり、残機が減る。今回はミスしてもすぐ時間を戻してやり直せるので、ミス自体は怖くない。ただ敵の攻撃は結構シビアで、雑魚の忍者がぴょんぴょん跳ねる動きも油断ならない。
本作の特徴として、ジャンプで屋根や木の上など高いところに登れる。地上を横移動しかできない敵もいるので避けやすい反面、ジャンプできる敵は足元から突撃してくるので危険もある。降りたり登ったりで安全地帯を探して進んでいく。
攻略のポイントは、道中にあるアイテムをいかに発見できるかだ。フィールド上にはアイテムが落ちてはいないのだが、特定の場所でかんしゃく玉を爆発させるとアイテムが出現するようだ。アイテムは厄介なお邪魔キャラを無効化するなど、進行をぐっと楽にしてくれる。
巻き戻し機能があれば実質ノーミスでクリアできるのか?
しかしながら今回のプレイにおいては、アイテムはほとんど要らない。なぜならミスしても巻き戻せばいいからだ。実際に巻き戻すとどんな感じになるのか、動画で見てみよう。シーンは終盤のステージで攻撃が激しくなってきた辺り。
途中で画面が乱れたような表示になる時が巻き戻している瞬間。巻き戻しは一定時間までしか戻れないという制約はあるものの、やられてすぐに使えば、立て直せる程度の時間までは十分に戻せる。
これをゲーム開始直後から活用し、やられるたびに巻き戻してやれば、ゲームの進行上は一度もミスなく進められるわけだ。まさにチート。さらに万が一、ゲームの進行が不可能になるような状況に陥った時のため、ステージ開始時に別途セーブも取っておく。
ただ攻略自体は自力であり、どんな厄介な敵も自力で倒して進まねばならないことは変わらない。繰り返し挑戦できるというメリットで、果たして本作をクリアできるのかどうか。
実際に本作をプレイしていくと、操作には意外と癖がなく、理不尽なやられ方というのもかなり少ない。ジャンプボタンを押した長さで高さが変わり、ジャンプ中も移動制御が効く。当たり前だと思われるかもしれないが、そうではないゲームも当時のファミコンには多かった。とにかく本作は操作感が普通で、そこが良い。
それゆえに、やられた時の理由がはっきりしており、巻き戻したらその状況に着実に対処できる。巻き戻しが使えることで難易度は格段に下がる。もちろん、巻き戻し回数は数えきれないのだが……。
筆者の本作初プレイは、結局ワープ要素は見つからないまま、全21ステージを地道に攻略した。最終的なプレイ時間は1時間10分ほどで、自分でも驚くほど早かった。やられたら必ず巻き戻して進めたため、ゲームのデータ的にはノーミスでのクリアである。
後半ステージはかなり難易度が高めだったが、何でもいいからゴールに到達すればクリアになるので、なるべく戦いを避けて進んだのが功を奏した。また余裕がある時にかんしゃく玉を投げまくってアイテムを探しておくことで、終盤に余裕のあるプレイもできた。
巻き戻しができたところで敵が弱くなるわけではないので、アクションゲームの腕前はそれなりに求められる。それでも絶望的な難易度ではない。40年近く前、ファミコン版をクリアできなかったという人も、今また気軽に挑戦できる程度の内容だ。
当時を知る人からは「こんなのズルい!」と言われそうだが、今からファミコン版を真面目に遊ぶよりは、思い出のゲームをクリアしてみようと思える方が価値があると思う。先週の「マドゥーラの翼」しかり、難しかった作品にまた触れようというきっかけになれば、当時の開発者もきっと喜んでくれるに違いない。昔の記憶を懐かしみつつ、開発者への感謝も込めて遊んでみていただきたい。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。