石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

東京ゲームショウ2025で何を見る? 筆者が選んだマニアックなおすすめ

今年から始まったオールアクセシビリティコーナーは必見

東京ゲームショウ2025の会場となった幕張メッセ

出展数が限界を迎えつつあるTGS

 東京ゲームショウ(TGS)2025が開幕した。9月25~26日はビジネスデイ、27~28日は一般公開日という例年通りのスケジュールだ。来年からは一般日が3日間に増えてトータル5日間になるそうだが、まずは今年の話をしていこう。

 TGSはコロナ禍でいったん規模を縮小したこともあったが、最近は以前より規模を拡大している。幕張メッセのメインホールとなる1~8ホールに加え、サブホールとなる9~11ホールもフルに使用。今年はサブホールの上階通路にまでブースが出ており、いよいよ空きがなくなってきた。

サブホールすらあふれるほどの出展数で、1日で全て回りきるのはかなり苦労する

 本稿では、ビジネスデイで筆者が見つけた面白いデバイスやコンテンツをいくつかご紹介する。TGSと言えば新作ゲームを体験できる場所というイメージが強いと思うが、世界中から大小さまざまな企業や団体が出展しており、意外な製品との出会いもある。ゲームファンならずとも面白そうと感じられるものもお見せしていきたい。

オールアクセシビリティコーナー

 今年から新設された「オールアクセシビリティコーナー」。公式発表による説明では、『障がいの有無、認知や年齢にかかわらず、すべての人がゲームを楽しめるようにするソフトウェアやツール、サービスを紹介するコーナー』とされている。たった4つしかブースが出ていないが、とても面白い出展内容だった。

 オールアクセシビリティ・ショーケースとして紹介されていたのは、HORIの「Flex Controller」。Nintendo Switch用のコントローラーなのだが、上下左右のボタンとA/B/X/Y/L/Rボタンなどが独立して配置された、特殊なアーケードコントローラーという雰囲気だ。重度肢体不自由な方への補助ツールを開発するテクノツール株式会社が監修している。

オールアクセシビリティ・ショーケース
「Flex Controller」。ちょっと変わった形のコントローラー

 「Flex Controller」は、単体ではSwitchに接続できるコントローラーとして機能するが、本領はここから。筐体前部に並ぶジャックには入力ボタンが書かれており、ここに何かしらのスイッチを接続することで、Switchへの入力に変換できる。

 デモとして用意されたのはパズルゲームの「ぷよぷよ」。足で踏むマット型のスイッチを2つ接続し、それぞれ左と右の端子に接続すると、足を踏む動きでぷよを左右に操作できる。スイッチは信号さえ出せればボタンでも何でもいいので、自由なゲーム操作デバイスを組み上げることが可能になる。

椅子の左右にあるマットを踏むと左右の操作になる。回転は右に用意された大きなボタンを使う

 つまり本機は、Switchに好きなスイッチを繋げるための仲介をするデバイス、ということ。さらにはUSB端子でPCと接続し、PCに接続されたアイトラッキングセンサーで視線を認識し、見ている画面の場所によってゲームを操作するというものもあった。

 担当者によると、『あえて普通のゲームを遊ぶのが面白い』のだそう。障がいの有無を越えて、みんなが同じように遊べる環境を作れるというのが本機の趣旨であり、まさに「オールアクセシビリティ」を体現したデバイスとなっている。

「スイカゲーム」を視線で操作するデモ。PCの前に座り、アイトラッキングセンサーを使って操作できる。「Flex Controller」がPCのセンサー動作を仲介することで、Switchでの操作を可能にしている

 このコーナーにはほかにも、日本電子専門学校と岡山大学による、小児がん患者のリハビリ用VRゲームも。病院から出られない患者にVRで広い世界を体験してもらいつつ、体を動かす操作をゲーム的に求めることで、リハビリを楽しくするという内容。健常者向けにはダンベルも用意されていて、『ゲームの指示に沿って思わず筋トレしてしまう』というノリを体験できて面白い。

 さらには脳波センサーやスマートグラスを使う展示もあり、毛色の違うデバイスを体験できるコーナーとしても興味深い。

普通のゲームとは異なるデバイスを使って体験できる。これだけでもう面白いコーナー

ZENAIM

 ZETA DIVISIONブースでレバーレスコントローラーを発表したZENAIM。会場でも注目度が高いのはアーケードコントローラーだが、合わせてキーボードの新製品「ZENAIM KEYBOARD2」も出展されている。

レバーレスコントローラーの発表会もTGS会場で行われた

 旧「ZENAIM KEYBOARD」から、コーティングを改良して耐久性を高めるとともに、吸音性も強化されている。それでいて価格も下がって、より製品の魅力が上がっている。

 TGS会場に置かれているのは小型キーボードの「ZENAIM KEYBOARD2 mini」だが、ほかにカーソルキーなどを備えたテンキーレスモデル「ZENAIM KEYBOARD2 TKL」も発売予定だ。アーケードコントローラーに注目が集まってはいるが、高精度な独自のショートストロークキースイッチはぜひ体験してみていただきたい。

「ZENAIM KEYBOARD2 mini」も体験できる

ASUS

 今回のTGSで最も注目度が高い製品の1つ「ROG Xbox Ally」シリーズは、ASUSブースに実機が40台と大量に用意されている。

 製品については既に発表されているとおりだが、発売前にいろいろなゲームを実機で試せるのは価値がある。特に「ROG Xbox Ally」でいいのか、上位機種の「ROG Xbox Ally X」が要るのか、迷っている方はぜひお試しいただきたい。

 ちなみにTGSの会場内には、さまざまなメーカーの最新ポータブルゲーミングPCが出展されている。場所は会場各所に散らばっているが、発売前の製品を含む最新機種が一堂に会するイベントはなかなかないので、これを目当てに各社のブースを見て回るのも面白い。

ASUSブースはビジネスデイにも関わらず大盛況
「ROG Xbox Ally」シリーズ両機種を試せる

GRAPHT

 GRAPHTのブースでは、ゲーミングPC環境に役立つガジェットがいくつか出展されている。面白いのがモニターアーム「Aero」で、メカニカルスプリング式でとても軽い動作を実現している。デザイン的にも優れており、コスト的にも他社よりお買い得な範囲に抑えていきたいという。

モニターアーム「Aero」は性能の良さとデザイン性の高さを両立

 また新型ゲームパッドも登場。旧製品となる「Omni」は安価でありながら高性能な製品だったが、新型の「Omni Plus」はボタンにメカニカルスイッチを採用。背面ボタンも搭載し、スティックの手触りもぐっと改善されている。さらに専用の充電ドックまで用意し、先着1,000名には製品に同梱。欲しい機能をしっかり詰め込んだ良質な製品に仕上がっているが、価格が6,980円とかなり安価で驚かされる。発売は10月31日。

「Omni Plus」は高性能ながら安価。置いて充電できるスタンドも嬉しい

 これらの製品も含め、同社の製品はホワイトとブラックの2色展開が基本となっているのも特徴。デザイン的にもユニークなものが多く、製品カテゴリ的にも『それ儲かるの?』というニッチな商品に本気で取り組んでいるのが面白いブランドだ。

他にもいろいろ

 まだまだ紹介したいブースがあるのだが、残りは写真とともに紹介とさせていただく。週末にTGSへ向かわれる方の参考になれば幸いだ。

フラッシュメモリ製品で知られるNextorageが、それ以外で初めて手掛ける自社開発製品。105ANSIルーメンの小型プロジェクター「NX1」だが、サイズやスペックの割にかなり明るいのに驚かされる。今後はゲーミング分野などに独自製品を広げていきたいそうだ。『社名からストレージ屋1本という印象を受けるのが悩ましいですね』と聞いたら苦笑いしていた
Nextorageと同じブースに出展されていたCEARのスピーカー「Cear pave」。ブロック型の左右にスピーカーがあり、信号処理によってステレオの音源をリアルな立体音響に変えてしまう。ゲームに最適な低遅延モードも備えている
オーストリアのMETADOXが手掛けるゲーミング防音マスク「VEKTA」。マイクを内蔵しており、これをかぶって話すことで、外部への音漏れを劇的に減らせる。深夜のゲームプレイ時にボイスチャットを使ったりしても、家族や近隣住民に迷惑をかけずに済む。実際に着けてみると、かなり大声で話さないと会話ができないくらいまで遮音された。USB端子を接続すればオーディオデバイスとなり、好きなヘッドセットを接続できる
HORIの「ワイヤレスホリパッド TURBO for Nintendo Switch 2」(写真右)。発売中の有線タイプ(写真左)とは違い、ジャイロセンサーを内蔵するとともにグリップの角度を変更。重量バランスも調整して、ジャイロ操作の快適性を高めている。アナログスティックに高精度・高耐久のTMRセンサーを採用しているのも特徴。発売は2025年冬としているが、任天堂純正のゲームパッドが著しく品薄なので、注目度が高そうだ
アイ・オー・データ機器のディスプレイに使われる、輪島塗オリジナル台座。石川県の企業として行う、震災・豪雨災害復興支援の一環のようだが、とにかく質感の良さに感動する。TGSに来て伝統工芸品を見られるとは思わなかった
インディーゲームコーナーのうち、上階通路で展開する「SELECTED INDIE 80」で話題の「PVKK:惑星防衛砲指揮官」。ドイツ制作らしいが、「鉄騎」のファンも腰を抜かしそうな巨大操作デバイスを日本に持ち込んだのがすごい
東プレのゲーミングキーボード「REALFORCE GX1」は、「機動戦士Zガンダム」および「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」とコラボ。キラキラな百式モデルはかなり目を引く。キャラクターが描かれた専用リストレストも付属
バンダイナムコエンターテインメントブースより、「ワンス・アポン・ア・塊魂」コーナー。巻き込まれた状態で記念写真を撮りたいが、触ってはいけないそうだ
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。