特別企画
Windows 8.1 徹底解剖 第2回 「Internet Explorer 11」(前編)
細かな不満点を潰して満足度を高めた“触って操れるブラウザー”
(2013/8/8 18:00)
プレビュー版として無償公開されている「Windows 8.1 Preview」をもとに、「Windows 8.1」の新しい点を紹介する本特集。2回目となる今回は、「Internet Explorer」の次期バージョン「Internet Explorer 11」を取り上げる。
- Microsoft、次期Windowsのプレビュー版「Windows 8.1 Preview」を無償公開 - 窓の杜
- http://www.forest.impress.co.jp/docs/news/20130627_605413.html
- 【特別企画】Windows 8.1徹底解剖 第1回 OSに統合された“SkyDrive” - 窓の杜
- http://www.forest.impress.co.jp/docs/special/20130801_610004.html
2つの「Internet Explorer」
「Windows 8.1」に標準搭載される「Internet Explorer 11」は、2つの顔をもつ。
ひとつはウィンドウ枠をもち、“Windows デスクトップ”で動作するモード。マウスで複数のアプリを切り替えながら利用することを前提とした、従来ユーザーにとって馴染み深いモードだ。
もうひとつは「Windows 8」で導入された、常にフルスクリーンで動作するモード。ウィンドウ枠といった余計なユーザーインターフェイス要素を極力廃してコンテンツを前面に押し出し(“Content Before Chrome”)、ユーザーをコンテンツに集中させる(“Immersive”)。タッチパネルを利用した操作に適している点や、[共有]チャームを介したアプリ連携もこのモードの特長と言える。
本特集では「Internet Explorer」の公式ブログ“IE Blog”での呼び方に準じ、前者のモードで動作する「Internet Explorer」を「Desktop IE」、後者のモードで動作する「Internet Explorer」を「Immersive IE」と呼ぶことにする。
「Internet Explorer 11」のコア機能と「Desktop IE」の進化については次回の特集記事に譲ることにして、今回は「Immersive IE」における変更点を紹介していくことにする。一見大きな変更はないように思われるが、細部を子細に検証すると、「Windows 8」の「Internet Explorer 10」でいくつか見られた不満点がいくつも改善されているのがわかる。
それでは“触って操れる”「Immersive IE」に加えられた改善を1つずつ見ていこう。
アプリバー、タブバー、アドレスバー
「Windows 8」の「Internet Explorer 10」に慣れたユーザーが「Windows 8.1」の「Internet Explorer 11」に触れてまず気づくのは、タブバーの位置が変わったことだろう。アプリバーを開く操作でタブバーが現れるのは共通だが、「Internet Explorer 10」ではタブバーが上に、「Internet Explorer 11」ではタブバーが下に表示される。タブのサムネイルも若干小さくなっており、表示できるタブの数が5から6へと増えている(1,280×800ピクセルで、スケーリングの設定が100%の場合)。
また、アドレスバーにフォーカスが当たった場合の挙動も変更されている。「Internet Explorer 10」では“ピン留めページ”“よくアクセスするサイト”“お気に入り”がタイル状に一列表示されていた。一方、「Internet Explorer 11」では“よくアクセスするサイト”のみが表示される。
では、“ピン留めページ”や“お気に入り”にはどのようにしてアクセスするのだろうか。
ここで、アドレスバー右側に並んでいるボタンをよく見てほしい。「Internet Explorer 10」にはあった[サイトをピン留め]ボタンの代わりに、「Internet Explorer 11」では[お気に入り]ボタンが設置されているのがわかるだろう。この[お気に入り]ボタンを押すと、タブバーと“お気に入り”バーがトグルされる(切り替わる)仕組みになっているのだ。
そのため、“お気に入り”へのアクセスが若干面倒になってしまった。「Internet Explorer 10」ならばアドレスバーへフォーカスを移動させればアクセスできるのに対し、「Internet Explorer 11」では一度タブバー(アプリバー)を開いて、“お気に入り”バーへ切り替える必要がある。
機能不足を解消した“お気に入り”
では、なぜわざわざこのような変更が加えられたのだろうか。それは“お気に入り”機能が大幅に拡張されているからだ。
実は「Windows 8」の「Internet Explorer 10」の“お気に入り”では階層化がサポートされておらず、サブフォルダーで“お気に入り”を分類・整理することができなかった。「Desktop IE」で“お気に入り”をフォルダー分けしても、「Immersive IE」ではそれがすべてフラットに並べられるだけだ。
「Windows 8.1」の「Internet Explorer 11」では、この弱点が解消されている。子フォルダーへアクセスしたり、親フォルダーへ戻ることができるほか、メニューでフォルダツリーをたどることも可能。“スタート画面にピン留め”フォルダー(後述)を除き、「Desktop IE」とも同期される。
“お気に入り”バーがタブバーとトグルするように改められたのも、このように“お気に入り”機能が拡張されたため、従来のユーザーインターフェイスを延長するだけでは使いづらくなってしまうからだろう。『せっかく「Windows 8」の「Internet Explorer 10」の使い方に慣れたのに』と不満に思うユーザーもいるかと思うが、ここは“お気に入り”の機能不足が解消された点を評価すべきだろう。
ただし、使っているうちにどのフォルダー階層にいるのか把握しづらくなってしまうデザインには問題がある。プルダウンメニューや親フォルダーへ移動するためのラベルがナビゲーションとして用意されているが、初めて使うユーザーにとってわかりやすいとは言いがたい。慣れれば問題にならないのかもしれないが、せめてパンくずリストのようなナビゲーションが用意されていればよいのにと感じた。実際に運用する際は、あまり“お気に入り”のフォルダー階層を深くしないように心掛けた方がよいだろう。
ちなみに、従来の“ピン留めページ”は“スタート画面にピン留め”フォルダーとして“お気に入り”バーに組み込まれている。また、[サイトをピン留め]ボタンも“お気に入り”バーの右上、[お気に入りに追加]ボタンの右隣に配置されている。“ピン留め”は“お気に入り”の特殊な一形態といった位置づけなのだろう。
拡充されたタブ操作とウィンドウのサポート
さて、画面上から下へと移されたタブバーだが、こちらにもさまざまな改善が加えられている。
たとえば、常にタブバーを表示する機能が追加された。これはアドレスバーとセットになっている。このとき、それぞれのタブは“タイル”表示ではなく、コンパクトな“ラベル”表示になる。
また、“閉じたタブを再度開く”や“タブを複製”、“他のタブを閉じる”、“タブを新しいウィンドウで開く”といった、タブブラウジングでは定番の機能がサポートされたのもうれしいポイント。これらはタブの右クリックメニューなどから利用可能。タッチ操作の場合は、タブをホールド(長押し)すればメニューが表示される。
とくに“タブを新しいウィンドウで開く”機能は、「Windows 8.1」ならではの機能と言えるだろう。「Windows 8.1」ではスクリーンを好みの比率で縦分割し、ストアアプリを同居させておくことが可能。「Internet Explorer 11」は2つ以上のウィンドウが表示できるので、2つのページを見比べるといった使い方も可能だ。さらに、解像度が1,544×768ピクセル以上あれば3分割にも対応する。
さらに、別のPCで開いているタブへアクセスできるようになったのも特筆すべき改善点。たとえば、デスクトップPCで読んでいたページの続きをタブレットPCで読むといった使い方ができる。このほかにも、同一のMicrosoft アカウントでログインしていれば、「SkyDrive」を介したブックマークや認証情報の同期といった恩恵が受けられる。
なお、「Internet Explorer 11」では1つのウィンドウあたり100個のタブが利用できる。使われていないタブは自動でサスペンドされ、メモリなどのシステムリソースをやバッテリーを浪費しないように設計されている。
“サジェスト”でより快適なブラウジング
「Internet Explorer」のアドレスバーは、Web検索や履歴検索のインターフェイスを兼ねている。サジェスト機能にも対応しており、「Internet Explorer 10」では履歴やお勧めサイトのリストをもとに入力中のURLを推測し、キーワードの補完を行うことができた。
「Internet Explorer 11」はその機能をさらに拡張し、よく利用されている検索キーワードをもとにした補完にも対応。これまで以上にすばやくWeb検索が行える。
この機能は入力中のキーワードをMicrosoftへ送信する必要がある。プライバシーを懸念する場合は、[設定]チャームにある[プライバシー]項目から無効化することも可能だ。
“ダウンロード”
さらに、ファイルのダウンロード情報を表示するユーザーインターフェイスが追加された。[ページ ツール]ボタンを押すと現れるメニューで、[ダウンロードの表示]項目を選択すると表示される。ここではダウンロードの進捗状況やダウンロードしたファイルの実行・削除などが可能。「Internet Explorer 10」ではダウンロードの通知バーを誤って消してしまうと、ダウンロードの進捗を確認したり、ダウンロードしたファイルへアクセスするのが面倒だった。
[設定]チャームの充実
[設定]チャームの内容もかなり充実している。
「Internet Explorer 10」はよく言えばシンプル、正直に言えば貧弱なものだったが、「Internet Explorer 11」ではかなり充実したものとなっている。そのいくつかを紹介しよう。
履歴の削除
「Internet Explorer 10」にも閲覧履歴の削除機能は備わっているが、履歴データ(インターネット一時ファイル、Cookie、アクセスした Webサイトの履歴、Webフォームに入力した情報、保存されたパスワード、アドオンによって格納された一時情報)をすべて削除してしまうので使い勝手が悪かった。フォームの入力データやブラウザーに記憶させたパスワードまで消してしまう。
その点、「Internet Explorer 11」は削除対象の項目がコントロールできるようになっているので安心だ。
Do Not Track の設定
「Internet Explorer」では“Do Not Track”(行動追跡をしないようにサーバー側へ通知する機能)が初期状態で有効化されている(OSをセットアップする際に“簡単設定”を選択しなければ、ユーザー側で無効化することも可能)。これは大半のユーザーにとって好ましい設定と言えるだろう。
しかし、「Internet Explorer 10」には“Immersive”なユーザーインターフェイスから手軽に無効化する手段が用意されていなかった(「Desktop IE」の[インターネット オプション]を利用する必要がある)。「Internet Explorer 11」ではこの問題が解決されている。ほかのブラウザーではサポートされていない追跡防止リストの編集なども、“Immersive”なユーザーインターフェイスのみで行える。
まとめと次回予告
「Windows 8.1」の「Immersive IE」を利用すると、「Windows 8」の「Immersive IE」がいかに不自由なブラウザーであったのか気づかされる。
「Windows 8」の「Immersive IE」は設定周りのインターフェイスが貧弱で、少し高度な設定を変更しようと思えば「Desktop IE」への切り替えが必要だが、タブレットPCで指先に神経を使いながら“インターネット オプション”を操作するのは苦痛でしかない。しかし、「Windows 8.1」の「Immersive IE」ならばほとんどのことが「Immersive IE」で完結する。
また、タブ操作が拡充されたのも、使ってみると非常に便利だ。タブを複製してあとで読むために取り置きしておいたり、不要なタブを一気に閉じることができる。ウィンドウ機能は少し使いこなしが難しいが、「Windows 8.1」ならではの機能としては興味深い。
“Immersive”モードに対応するブラウザーはほかにもあるが、現状、もっとも完成度が高いのは「Internet Explorer」だ。今回の「Internet Explorer 11」のリリースにより、その差はさらに広がったと言えるのではないだろうか。
さて、次回は冒頭にも述べたように「Internet Explorer 11」のコア機能と“Desktop”モードにおける変更点を紹介する予定だ。楽しみにしていてほしい。