年末企画

編集部員の“今年のお気に入り”

今年1年間で各編集部員がもっとも気に入ったソフトを紹介

(11/12/26)

 オンラインソフトの情報を、毎日お届けしている窓の杜。編集部では世界中で公開されるさまざまなオンラインソフトの情報を求めて、日夜ネットを徘徊している。そうして見つけたオンラインソフトを紹介し、読者のみなさんと感動を共有できるのが何よりの喜びだ。ここでは、今年窓の杜で取り上げたオンラインソフトのなかで、各編集部員やライターがもっとも気に入った“今年のお気に入り”ソフトをご紹介していこう。

「ARTIFACT ADVENTURE」ほか今年のRPGを振り返る

「ARTIFACT ADVENTURE」「ARTIFACT ADVENTURE」

 今年もゲーム紹介連載“週末ゲーム”の担当編集として、また1ゲーマーとしてさまざまなゲームに触れてきた。面白いゲームなら何でもプレイしたいのでジャンルにこだわりはないが、最近はとくにRPGが面白い。実際、今年の“週末ゲーム”を振り返るとRPGの紹介比率が若干高めだが、とくに印象深かったのは「ARTIFACT ADVENTURE」だ。

 本作をプレイしてまず驚いたのは、やはり開始直後から飛行船を入手して世界中のどこへでも行くこともできるという、定石破りの展開。2周目要素としてなら無いこともないが、1周目からというのは異例で、本作に興味をもつ大きなきっかけとなった。逆に、周回プレイ推奨の作品だが2周目以降への引継ぎ要素などはとくになく、プレイヤーが蓄積した知識だけがアドバンテージという点もゲーマー心をくすぐる。

「Grimoire Hearts」「Grimoire Hearts」

 そのほか今年紹介したRPGのなかでは、「Grimoire Hearts」もハマった作品だ。世界観や設定は王道、寄り道はあるものの基本的に一本道でキャラクターの魅力で引っ張るという、ある意味「ARTIFACT ADVENTURE」の対極にあるような作品。最近では“JRPG”などと揶揄されることもあるが、どんなことでも究極まで突き詰めれば人の心を動かす力になると感じさせてくれる作品だった。

 また、装備の重さが戦闘での立ち回りに影響する「テール島の迷宮」や、戦闘が格ゲーばりのアクションとなっている「SELECTION」、カードゲームのデッキのようにスキルをセットして戦う「地底血花洞」なども印象に残った。今年第3回が開催された“WOLF RPGエディターコンテスト”のエントリー作品などをプレイしても、オーソドックスな2D RPGを下敷きにしつつも独自のアイデアを1つ、2つと加えたものが多く、これからもRPGの可能性は無限だと感じずにはいられない。

(中村 友次郎)

フリーソフトとは思えないほど多機能な音声編集ソフト「WavePad」

「WavePad」「WavePad」

 音声編集ソフトは、有償のソフトからフリーソフトまで多様なソフトが存在している。筆者も昔は有償のソフトを購入していたが、最近は無償でも十分な機能を備えたソフトが多くなり、フリーソフトを使うようになった。しかし、フリーソフトではすべての要求を1つソフトで満たすことはできず、場合によってさまざまなソフトを使い分ける必要があった。

 「WavePad」は、フリーソフトとは思えないほど多くの機能を備えた音声編集ソフトで、筆者のやりたいことをすべてまかなってくれる。とくに、指定位置でファイルを分割する機能や、無音部分を検知して自動で分割する機能は使用頻度が高いためうれしい。また、折れ線グラフを使ったイコライザーは直感的に立ち上げたい周波数をブーストでき、使い勝手が良好だ。

 画面左側のサイドバーには、状況に応じてよく使われる機能が表示され、初めて波形編集ソフトを使う人でも操作に迷わないようになっている。使い慣れてきても、わざわざメニューから機能を辿る必要がないのは作業効率がいい。

 さらに、基本的なエフェクトはほとんど内蔵している上、VSTプラグインにも対応しているので、ネット上で公開されているさまざまなVSTエフェクトを利用可能。ちょっとした録音の編集から、マスタリングまで1つのソフトでこなせるので重宝している。

(長谷川 正太郎)

ゴールデンコンビ結成で“ジェーン依存症”がますます進行「ex_open.js」

「ex_open.js」「ex_open.js」

 “Google依存症”という言葉を聞いたことがあるだろうか。検索、メール、地図など、パソコンで利用するサービスをGoogleが提供するサービスに依存することをそう呼ぶようだ。かくいう筆者も“Google依存症”を患っているユーザーのひとりだが、それ以上に患っているのが“ジェーン依存症”だ。

 (株)ジェーンが公開している2ちゃんねる専用ブラウザー「Jane Style」は、2ちゃんねるを愛する筆者にとって絶対に手放せないソフトだ。また、手軽なコミュニケーションツールとしてTwitterが普及してきたことで、同社製のTwitterクライアント「Janetter」も手放せなくなってきた。今ではこの2つのソフトが常にデスクトップ上で仲良く並んで起動している。

 ところが「Jane Style」と「Janetter」は、標準ではお互いに連携する機能を備えておらず、いつも隣にいるのに見えない壁を感じていた。そこに登場したのが「ex_open.js」だ。「ex_open.js」を使えば、「Janetter」のタイムラインに流れる2ちゃんねるのURLを「Jane Style」で直接開くことが可能となる。夢にまで見たゴールデンコンビがついに結成され、筆者の“ジェーン依存症”は進行するばかりだ。

(加藤 達也)

難解プログラミング言語“Brainfuck”の開発環境「BrainF*ck SDK」

「BrainF*ck SDK」v4.01「BrainF*ck SDK」v4.01

 今年もいろいろな開発環境を紹介してきたが、そのなかでも一際異彩を放っていたのが「BrainF*ck SDK」。可読性のなさで有名な難解プログラミング言語“Brainfuck”の開発環境だ。最新の「BrainF*ck SDK」v4.01では、文字コードを手軽に調べるツールが付属するなど、記事で紹介したときよりもさらにパワーアップしている。ネイティブな実行ファイルへコンパイルする機能がついているのも興味深い。

 “Brainfuck”言語そのものは決して難しくはなく、むしろ単純。“H(文字コード:72)”を出力したければ、“+”を72回打鍵して最後に“.”を加えればよいだけだ。同じ要領で“+”“-”“.”を組み合わせれば“Hello! World.”を出力するのも難しくはない。ただ、それだとコードが膨大かつ非効率的になるので、ポインタを加減して変数を扱ったり、要所でループを活用して、コードを短くしていくことになる。すると、コードはどんどん短くなるが、可読性はそれに応じてますます悪くなっていく。

 しかし、実際に自分の手でコードを書くと、一見意味不明な記号の羅列の中にも一種の“イディオム”があるのだなと、次第にわかってくる。これは、生産性の高い高級言語ではあまり感じることのできない感覚。本ソフトのおかげで、これまでとは違う世界を垣間見ることができた。

(柳 英俊)

ゲーム世代による新しい小説の三部作“ロンド”“ポルカ”“カノン”

「地下99階のロンド -Mistake Lv99-」v1.00「地下99階のロンド -Mistake Lv99-」v1.00

 近年、ライトノベルという“地の文”の割合が比較的少ない小説が売上を伸ばしたり、会話だけで構成された小説がWeb上などで発表されるようになったことから推測するに、小説の“地の文”よりも会話文を重要視する人たちは増えてきているようだ。小説読みの筆者としては“地の文”はとても重要なパートなのだが、いっぽう“地の文”が作品全体を重くして読書のハードルを上げているかもしれないと感じることもあった。

 そんな折、「地下99階のロンド -Mistake Lv99-」以下三部作の表現形式を知ったときは目からウロコが落ちる思いだった。本作品は、イラストやBGM、効果音などで演出された、選択肢のないデジタルノベルだ。特長は、画面右側に、主に会話で構成されたサウンドノベル風の文章が表示されるのと平行して、左側には、2D RPGのイベントシーンのようなグラフィックの演出が表示されること。“地の文”による人物の行動描写や情景描写などを、文章の代わりにグラフィックや効果音などでより直感的に描写することで、よりわかりやすく表現できるのだ。また、2D RPG風の動きのある演出がされることで、文章だけの静かな作品よりも派手な演出が可能になり、飽きにくくなっていることもポイントが高い。

 さまざまな娯楽があふれている現在、読者をひきつけるにはわかりやすさと飽きにくさは重要だ。ゲーマーにはすっかりおなじみとなった2D RPG風の演出を加えることでそれを達成している本作品は、ゲーム世代による新しい小説の形式といえるかもしれない。

(橋本 崇史)

節電意識を高めてくれた「電力チャート」

「電力チャート」「電力チャート」

 今年一年を語る上で、3月11日の東日本大震災と、それに伴う諸問題は避けて通れない。筆者も震災で人生観が変わったうちの一人だが、とくに『物には限りがある』と改めて気付かされた。震災直後にはスーパーやコンビニから商品が消え、輪番停電で街の灯りも消えてしまった。物資の供給はすぐに元に戻ったものの、電力不足は気温の上昇とともに再び悪化した。

 そんな状況のなかで利用し始めたのが、電力各社管内の電力使用状況をリアルタイム表示するデスクトップガジェット「電力チャート」であり、今も使い続けている。当日の供給力、直前の電力消費量・使用率など、必要な情報が小さな画面に詰め込まれているのが特長だ。また、電力会社ごとに個別のデスクトップガジェットが用意されている点もうれしい。

 本デスクトップガジェットを利用していると、電力消費量は曜日と時間帯、そして気温に強く影響されることが手に取るようにわかる。これまで筆者は、我が家の電力消費量を毎月の電気料金でしか見ていなかったため、正直なところ、電力を消費しているという意識があまりなかったが、今では節電意識がかなり高まっている。

(中井 浩晶)

(窓の杜編集部)