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Google、従来型スパコンの13,000倍の速度を実現して検証可能な量子コンピューターの優位性を実証

医療分野で分子構造の解析技術を飛躍的に向上させる可能性も

Google、新しい量子アルゴリズム「Quantum Echoes」の検証可能な量子コンピューターの優位性を実証

 米Googleは10月23日(現地時間)、 2024年に開発した量子チップ「Willow」を使った量子コンピューター上で量子アルゴリズム「Quantum Echoes」を実行し、検証可能な量子コンピューターの優位性を世界で初めて実証した。分子構造などを計算する特定のタスクにおいて、最速の従来型スーパーコンピューターの13,000倍のスピードで高速に動作するとしている。

量子チップ「Willow」

 これまでの量子優位性の実証では、計算は早いものの、その正確性をスーパーコンピューターで検証することが困難だった。今回は単に“スーパーコンピューターよりも早い”だけでなく、計算結果が正しく、別の量子コンピューターでも同じ答えを再現できることを初めて実証した。科学的なツールとして実用化する上での大きな一歩となる。

 「Quantum Echoes」は、量子システム(Willowチップ上の量子ビット)に信号を送り1つの量子ビットに小さな変化(摂動)を加え、その後その操作を正確に逆方向に戻すことで、返ってくる“エコー(こだま)”を観測する仕組み。エコーは構成的干渉という量子の性質によって信号が増幅されるため、高精度な測定ができる。

「Quantum Echoes」の仕組み

 具体的な応用として、医療のMRIの基礎である「核磁気共鳴(NMR)」という分子構造の解析技術を飛躍的に向上させる可能性があるという。実証実験では15個の原子を持つ分子と28個の原子を持つ分子を解析し、従来のNMRで得られる情報と一致しただけでなく、さらに従来のNMRでは測定できなかった原子間のより詳細な位置関係なども明らかにした。

 今後は、薬の候補となる分子が病気の原因となるタンパク質などにどのように結合するかを精密に理解したり、電池の性能を左右する材料や新しい機能を持つポリマーなどの分子構造を正確に評価したりといった活用が期待される。

 同社は現在、エラーに強い安定した論理量子ビットの実現を目指しており、今回の成果はその実用化に向けた重要な通過点だとしている。

Quantum Echoes: Towards real world applications