レビュー

裏山へ薬草を取りに行くだけ、のはずが……!? RPG序盤の定番テーマを大胆に解釈したフリゲ2作品「薬草伝説」「麗捨山」を紹介

裏山に薬草を取りに行くゲーム専門の投稿イベント“裏山薬草ゲームフェス”参加作品

 4月から5月はじめにかけて、ゲーム投稿イベント“裏山薬草ゲームフェス”が開催された。『裏山へ薬草を取りに行く』というRPG序盤イベントのお約束をテーマにしたフリーゲームを募集するというユニークな企画で、主催はフリーゲーム制作サークル“なごみやソフト”の司令氏。RPGやアクションゲーム、さらにはトランプを使うアナログゲームなど、定番のテーマをさまざまな形で解釈した33もの作品が集まった。

 参加作品はすべて企画サイト上に概要やゲーム画面が掲載されているので、気になる作品があればはぜひプレイしてみてほしい。

 本記事では参加作品の中から、筆者がピックアップしたRPGを2作品ご紹介する。

薬草を巡り、時代が大きく動き出す……。激動の裏山を描く大河ファンタジー短編「薬草伝説 LEGEND OF HERB」

「薬草伝説 LEGEND OF HERB」

 薬草を求めて裏山へ赴く冒険者達を描くRPG。公称プレイ時間は1~2時間の短編作品となっている。

 舞台となるのは“ニヴルヘイム村”の裏山。『裏山に薬草生える』という噂が大陸全土を駆け抜け、多くの猛者達が裏山へ挑むが未だ帰ってくるものはない。そんな中で主人公達も、命を賭けた薬草採取へ向かうこととなる……。

 “大薬草神殿の騎士団”や“薬草の巫女”といった設定に、人々の薬草や裏山への畏怖が感じられる台詞の数々など、とにかくやたらと壮大なスケールが特徴。大袈裟でどこかズレた世界観がもっともらしく表現され、BGMや文字グラフィックによる大仰な演出も相まってシュールなおかしみを生み出している。

ニーチェはそんなこと言ってません
フェンリルって繁殖期とかそういうのあるの!?

 ゲームとしてはフィールド探索型の進行にターン制コマンドバトルと王道の作り。宝箱を守る敵や隠し通路などが散りばめられており、短めのプレイ時間の中で、強力な装備品を入手して使いこなすRPGとしての楽しさが詰まっている。バフ・デバフの活用がポイントとなる戦闘も程よいバランスに仕上がっているように感じられた。

 トンデモな設定でありつつも登場人物達は至って真剣で、ドラマティックな展開が凝縮して描かれる。大真面目にネタをやるという点において突き抜けた魅力がある作品だ。

戦闘ではバフ・デバフの活用がポイント
壮大な世界観のもと、短編という枠を越えたドラマが描かれる
「薬草伝説 LEGEND OF HERB」
【著作権者】
ノンジャンル人生 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.02(17/05/02)

月錆びの夜、妻のため老狩人は裏山へ向かう――スタイリッシュで切ない掌編「麗捨山」

「麗捨山」

 月に一度の“月錆びの夜”に、妻のため薬草を求めて裏山へと向かう老狩人と、彼を阻む魑魅魍魎との戦いを描くRPG。公称プレイ時間は20分程度の掌編で、短く印象的なシーンや台詞により、スタイリッシュかつ渋い雰囲気を端的に醸し出しているのが魅力だ。

 ゲームは裏山を登りつつ、道を塞ぐ形で固定配置されている敵を倒しながら進行。戦闘はターン制のコマンド選択型で、斬撃と銃撃という2種類の攻撃や、“SP”を消費して発動する“狩猟技”を駆使して戦っていく。主人公は1ターンに2回行動でき、攻撃と回復、バフからの攻撃などその組み合わせは自由。敵の次の行動が表示されたり、行動順が敏捷性のステータスに依存しランダム性がないのも特徴で、戦術的なバトルを楽しむことができる。

 経験値やレベルの概念はなく、ゲーム進行で手に入るさまざまな装備品を組み合わせることで、各種ステータスや使用可能な狩猟技、パッシブスキルにあたる“付与能力”などをカスタマイズしていく。敵に負けてもすぐに再戦できるようになっており、敵に応じて戦闘スタイルを試行錯誤していくのが醍醐味だ。

 短いプレイ時間の中ではっとするような展開も待ち受けており、一途で切ない想いを抱く主人公の辿り着く境地も見どころ。バトルも物語も密度の濃い作品だ。

主人公が2回行動できたり、敵の次の行動が表示されるなど戦術的なバトルを楽しめる
さまざまなステータスや属性耐性が変動する“戦衣”、狩猟技や付与能力を習得できる“魂石”など豊富な装備品でキャラクターをカスタマイズ
「麗捨山」
【著作権者】
きぎぬ 氏
【対応OS】
Windows、Mac、Webブラウザー
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.02(17/04/30)