レビュー

破綻したTRPGセッションの“反省会”を描く短編ADV「邂逅のロールプレイヤー」

“10分で全滅”の責任はマスター?プレイヤー?選択肢で議論が展開する会話劇

 「邂逅のロールプレイヤー」は、破綻したテーブルトークRPGのセッションをテーマに反省会を行う短編アドベンチャーゲーム。作者のWebサイトからダウンロードできる。

 ゲームを開始すると、騎士、戦士、魔女の3人パーティが依頼を受け、ゴブリンを倒しに洞窟へ向かう様子が描かれる。嫌な予感を覚える戦士だが、騎士に押し切られる形で結局戦闘に突入。するとゴブリンが持っていた兵器により、パーティは全滅してしまう。

ゴブリン退治に向かうパーティ。何か言いかけていた依頼人が気になる戦士だが、騎士に押し切られる形で洞窟へ入り、ゴブリンが持っていた兵器により全滅してしまう

 ……と、ここまでが“ゲーム内ゲーム”の内容。そこで場面は転換し、TRPGをプレイする中年男性達の姿が描かれる。久々に再会した彼らはゲームマスター経験の浅い“須々木”が用意したシナリオをプレイするが、情報収集を怠り、マスターである須々木が想定した展開から外れたため、ゴブリンの持つオリジナル設定の魔道兵器により全滅してしまったのだ。

2時間かかったキャラクターメイキングののちセッションは10分で終了。騎士と魔女のプレイヤーはカラオケに行ってしまう

 (作中TRPGの)プレイヤーの一人である“川口”は、『ゲームマスターはプレイヤーを楽しませるもの』という持論にもとづき、須々木に反省会を持ちかける。(本作自身の)プレイヤーはこの川口となってさまざまな議題を提示し、選択肢を選んで須々木を説得していくのがゲームの目的だ。

 川口の指摘に須々木が納得すると“罪悪感”を与えることができるが、『プレイヤーの行動次第でどんなことでも起こり得る自由さこそがTRPG』『マスターはプレイヤーに過干渉すべきではない』という須々木の持論にも一理あり、選択肢によっては逆に川口が罪悪感を抱くことも。それぞれの罪悪感に応じて画面上部の両端に表示されているロウソクが消えていき、これによってエンディングが分岐する。プレイ時間は全エンディングを見るまで30分ほど。

議題の提示や反論への受け答えなど、選択肢により議論の方向が変わっていく
須々木と川口、それぞれの“TRPG論”も見どころ

 TRPGへのこだわりが強い須々木との掛け合いは会話劇としても面白く、中年ゲーマーの悲喜こもごもを感じさせる展開も。対コンピューターではなく人対人のやり取りで進むTRPGだからこそ、その進め方にも一方的に正しい解はなく、交わされる議論は“TRPGあるあるネタ”としても興味深い。TRPGが好きな人、TRPGについて語るのが好きな人、あるいはTRPGに興味のある人なら、それぞれの議題について自分なりに考えてみるのも面白いのではないだろうか。

ソフトウェア情報

「邂逅のロールプレイヤー」
【著作権者】
架架 氏
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.01(16/03/02)

(中村 友次郎)