【第28話】
違法ダウンロードの刑事罰化と関連ソフトの人気
(12/10/09)
まず最初に、先週掲載された窓の杜の月間記事アクセスランキングをご覧いただきたい。これは2012年8月27日から9月30日までのアクセス数を集計したものだが、トップを獲得したのは、5カ月以上前の2012年4月19日に掲載された「動画ゲッター」の紹介記事である。月間記事アクセスランキングでは通常、集計期間内に掲載された記事が1位になるのが普通であり、集計期間外に掲載された記事が今回のように人気を集めるのはとても珍しい。
「動画ゲッター」の人気がどのように変化したのか、窓の杜の記事アクセスランキングをもとにもっと突っ込んで分析してみてると、興味深いことがわかってくる。窓の杜が「動画ゲッター」を初めて取り上げた2012年4月第4週の週間ランキングでは、その記事が4位にランクインしたものの、同月の月間ランキングではランク外だった。その後の2012年5月から7月の3カ月間は、「動画ゲッター」の記事がランキングに登場することもなく、そこまで人気のあるソフトとは言えなかった。
ところが、2012年8月の月間記事アクセスランキングで突如、「動画ゲッター」の記事が4位に現れる。しかも、同月の週間ランキングには一度も登場していないので、まさに突然のことだ。続く2012年9月の記事アクセスランキングでは、第3週と第4週を合算した週間ランキングで7位、そして月間ランキングでついにトップに躍り出る。このランキング結果は、「動画ゲッター」の記事が数カ月にわたってコンスタントに読まれたことを意味する。過去の記事が突発的に人気を集めることはしばしばあるが、「動画ゲッター」の記事のように途切れなくロングランヒットした記事は、筆者の知る限りでは記憶にない。
では、「動画ゲッター」の記事がこれほど人気を集めた理由は何かといえば、違法ダウンロードの刑事罰化であることは疑いようがない。違法ダウンロードの刑事罰化に関する法律が可決・成立したのは2012年6月20日のことで、「動画ゲッター」の記事が注目され始めた時期ともおおよそ一致する。そして、違法ダウンロード刑事罰化の規定が施行された2012年10月1日へ近づくにつれて、「動画ゲッター」への注目度が急上昇していったと考えられる。
もしかすると、動画をダウンロードするためのソフトが2012年10月1日を境にインターネット上から消えるだろうと危惧した人が、駆け込み需要で「動画ゲッター」を探し、窓の杜の記事にも辿り着いたのかもしれない。実際、同日には「動画ゲッター」の配布が一時的に停止されていたことを、窓の杜編集部は確認している。また「動画ゲッター」の更新履歴によると、施行日直前の2012年9月30日付けで、違法ダウンロードのことを警告する仕組みが追加されており、配布の一時停止とも関係があったようだ。
違法ダウンロード刑事罰化の規定では、違法配信だと知った上で音楽や映像をダウンロードすれば違法となり、さらにそれが有償コンテンツだと知っていれば刑事罰の対象になるとしている。「動画ゲッター」は主に、YouTubeをはじめとする動画共有サイトの動画をダウンロードの対象とし、その利用自体は違法でも処罰対象でもない。ただし、Flash形式を採用する動画共有サイトの動画は本来ダウンロードできないものであることを認識した上で、「動画ゲッター」で動画をダウンロードするなら十二分に注意しなければならない。
もっとも、違法ダウンロードが刑事罰化されたにも関わらず、「動画ゲッター」のようなダウンローダーがかえって注目されてしまうのは、好ましくない状況なのかもしれない。しかし、合法的にダウンローダーを利用することが目的であれば、違法ダウンロードに関する法律を深く知ることにもつながるので、ソフト自体が悪なのではなく、それを生かすも殺すもユーザー次第だ。そのことだけは、しっかりと心に留めておきたい。