#モリトーク

第58話

Blink時代の幕開け

 先週21日、Google社がWebKit採用の最終バージョンである「Google Chrome 27」を、Opera社がWebKit採用の初回バージョンである「Opera 14 for Android」を正式にリリースした。両社の動きは相反するように思えるが、どちらも“Blink”を迎えるための準備であり、Webブラウザー界にとっては重要な分岐点となるだろう。これが意味することを理解するためには、少し振り返る必要がある。

「Opera 14 for Android」

 今年2月、それまで徹底的に独自路線を貫いてきたOpera社が、「Opera」のレンダリングエンジンを自社製品の“Presto”からオープンソースの“WebKit”へ切り替えることを発表する。正確に言うと、Google社が開発するWebブラウザー「Chromium」に搭載されるWebKitであり、「Chromium」の開発協力も含まれる。

 今年4月、今度はGoogle社が新Webレンダリングエンジン“Blink”の開発を発表する。BlinkはWebKitの派生版に当たり、「Chromium」つまり「Google Chrome」に採用されるレンダリングエンジンだ。また一方で、「Opera」の開発に関わるBruce Lawson氏がGoogle社の発表を追うように、Blinkの登場を歓迎する主旨のコメントを自身のブログに掲載する。

 同氏のコメントは『It's great to be able to talk publicly about Blink』と始まっており、Opera社がWebKitへの切り替えを決断した時点で、Blinkの登場も見越していたことをほのめかしている。つまり、Opera社が「Chromium」のプロジェクトに参加したことによって、Google社がBlinkの開発を決めた可能性もゼロではないだろう。

 「Google Chrome」はv28からBlinkを正式に採用することが確定しており、先週24日に公開された「Google Chrome 28」のベータ版で実際に導入された。「Opera 14 for Android」は「Google Chrome 26」相当の「Chromium 26」をもとに開発されており、そのレンダリングエンジンはBlinkではなくWebKitとなっている。ただしOpera社は、「Opera」と「Chromium」を同期させるとしているので、「Google Chrome 28」の正式版が公開されたあとに、Blink採用の「Opera」もリリースされるはずだ。

 ところで、「Sleipnir」も「Chromium」のWebKitを採用するWebブラウザーである。「Sleipnir」を開発するフェンリル社は今年4月の時点で、Blinkの採用にも積極的な姿勢を示していた。そして、「Google Chrome 28」のベータ版が公開される一日前に、Blinkを採用した「Sleipnir」のプレビュー版をリリースしたのだ。まさか「Sleipnir」が実質的な第一号になるとは、だれも予想しなかっただろう。時代を変えるかもしれないBlinkが、ここ日本で解禁されたことを誇りに思いたい。

「Google Chrome 28」ベータ版
「Sleipnir 4 for Windows」Blink Engine Preview Build

(中井 浩晶)