#モリトーク

第84話

Sleipnirを象徴する三種の神器

 「Sleipnir」はメジャーバージョンアップのたびに大きな進化を遂げる。先日公開された「Sleipnir 5」だけでなく、「Sleipnir 3」でも「Sleipnir 4」でもコンセプトが変化しており、ユーザーの声に応えつつも、改革を恐れない。

「Sleipnir 5」

 ネガティブに言えば、旧バージョンからのユーザーは変化の幅に戸惑うかもしれない。しかし、高速リリースアップデートが当たり前になったWebブラウザー界は、できるだけ変化を抑える安定期に突入しており、「Sleipnir」の存在はとても貴重だ。

 先週の第83話では、Webレンダリングエンジン“Blink”への一本化をきっかけに「Sleipnir」が生まれ変わったこと、その変わらない姿勢をお伝えした。その際、「Sleipnir 5」の新機能を具体的に取り上げられなかったので、同じくBlinkを採用する「Google Chrome」および「Opera」と比較したときの優位点を中心に紹介したい。

 まずは、「Sleipnir」の代名詞とも言えるマウスジェスチャー機能だ。「Sleipnir 5」のマウスジェスチャー機能は「Sleipnir 4」のそれと同等であり、ソフト全体のユーザーインターフェイスが一新されたものの、肝となる操作性は維持されている。「Google Chrome」にはマウスジェスチャー機能が搭載されておらず、「Opera」のそれは開発途上ということもあって簡易的なものだ。

「Sleipnir 5」のマウスジェスチャー機能

 そのため、マウスジェスチャー機能だけでも「Sleipnir 5」を選ぶ理由になりうる。しかも、スマートフォンのタッチ操作を再現する“TouchPaging”は「Sleipnir」独自のマウスジェスチャー機能だ。カスタマイズ性も高く、ロッカージェスチャーをはじめとする各種クリック操作にさまざまな機能を割り当てられるほか、“TouchPaging”を使わない場合はカスタマイズ性がさらに高まる。

 拡張機能を導入すれば、「Google Chrome」や「Opera」でも高度なマウスジェスチャー機能を利用できるが、「Sleipnir」のそれに匹敵する拡張機能にはなかなか出会えない。

 ブックマーク機能もまた、「Sleipnir 5」を選ぶ理由になるだろう。「Google Chrome」が登場したとき、Webページの描画エリアを広くしようとする流れの中で、ブックマーク用のサイドバーも省略されてしまった。しかし近年、モニターの高精細化が急速に進んだことで、デスクトップの作業領域に余裕が生まれた。

「Sleipnir 5」のブックマーク機能

 「Sleipnir 5」には、「Google Chrome」や「Opera」に存在しないサイドバーが搭載されている。また、フォルダだけでなくラベルでブックマークを管理することも可能なので、ブックマークを多用する人にとって最良の環境であろう。もちろん、ツールバーでのブックマーク検索にも対応している。

 一時期、「Opera」がブックマーク機能を非搭載にする方針を打ち出したが、結局は廃案になってしまった。やはり、Webブラウザーにはブックマーク機能が不可欠であり、その使い勝手がWebブラウザー全体の操作性を決めると言っても差し支えないだろう。

無効化することも可能な「Sleipnir 5」のフォント描画機能

 最後に紹介したい「Sleipnir 5」の新機能は、人によって評価が分かれるかもしれない。「Sleipnir 5」にはフォント描画を改善する機能が搭載されており、文字が太く滑らかに描かれる。それを美しいと感じる人もいれば、煩わしいと感じる人もいるだろう。

 この機能は、本コラムの第7話でも取り上げた「MacType」のそれとほぼ同じ原理であり、「MacType」を「Google Chrome」や「Opera」のために利用しているなら、その機能が完結する「Sleipnir 5」をぜひ体験してほしい。

 一方で残念な点もある。「Sleipnir 5」ではRSSリーダー機能が廃止されてしまった。今年7月に“Google リーダー”が終了し、ローカルで動作するRSSリーダーとしても「Sleipnir」は重要なオンラインソフトだった。もし今後のバージョンアップでそれが復活するなら、上述した3つの機能と合わせて、最強のBlink搭載Webブラウザーと言えるかもしれない。

(中井 浩晶)