無駄ロボット研究所

爆誕! Excel検算ロボ の巻 ~今話題のRPAで役に立たないロボットを作ってみた

『無駄ロボット研究所』ではRPA(Robotic Process Automation)ツール「UiPath Studio」を使って役に立たない、無駄なロボットを作っていきます。業務を効率化するという本来RPAで実現すべき目的とは真逆のロボットたちをお楽しみください。

 Excelの検算ってホントに面倒ですよね。読み合わせは疲れるし、わざわざ印刷して、電卓で確かめるなんて、時間がいくらあっても足りません。そんなときこそロボットの出番です。今、話題のRPA(Robotic Process Automation)で、エクセル検算を100倍、いや1000倍、効率化しましょう。第1回となる今回は、ここまでできる! というRPAの威力と、RPAをはじめる方法をご紹介します。

見よ! このUiPathの圧倒的な威力

 Excel検算を自動化すると、どうなるか? まずは、その威力を動画で確かめてみてください。

【【無駄ロボット研究所】「UiPath Studio」を使ってExcelの表を「電卓」で検算させてみた - 窓の杜】

 どうでしょう? 動画の表はシンプルなうえ、計算部分も3カ所をわずかしかありませんが、表からひとつひとつの値を確実にピックアップし、その値をすばやく電卓で計算。計算結果をExcel上の値と照らし合わせて、その結果をシートに記録しています。

 何と見事なことでしょうか!

 これなら、会議の席で“この計算ホントにあってるの?”なんて疑いの目を向けられても、自信を持って“はい!”と答えられますね。

 さて、この自動エクセル検算システムですが、Excelのマクロなどではなく、UiPath社が開発した「UiPath Studio」というRPAツールを使って作っています。

 “RPA”は、今や“AI”や“IoT”と並ぶIT業界のトレンドワードです。ロボットというと、メカメカしいモノを思い浮かべがちですが、RPAはロボットといってもハードではなく、ソフトウェアです。パソコンをソフトウェア的に自動操作するロボットになります。

 このロボットは、普段、人間がパソコン上で実行するほとんどの操作をエミュレートできるようになっています。たとえば、マウスのクリックやキー入力、アプリの起動、Webページの表示、画面上のデータの取得、Webページのスクレイピング、PDFの読み取り、さらには各種開発言語のコードの呼び出し、WebサービスのAPI連携など、とにかく非常に多彩な機能を持っています。

 こう聞くと、“難しそう……”と思うかもしれませんが、「UiPath Studio」の操作は、恐らくExcelのマクロよりも簡単です。

「UiPath Studio」の画面

 “ワークブックの全シートを取得”、“代入”、“範囲を読み込み”といった、ブロック形式の、しかも日本語の命令(アクティビティ)を並べていくだけでワークフローを記述できます。このような感じで、実行させたい処理をならべていくだけで、人間とほぼ同等の操作をロボットに実行させることができるわけです。

 もちろん、処理内容によっては、いくつものアクティビティを並べたり、繰り返しや条件分岐を使って判断させなければならないので、複雑になることもあります。縦長で、少々、見にくいかもしれませんが、先のExcel検算ロボのワークフローは以下のようになります。

Excel検算ロボのワークフロー(クリックすると全体を閲覧できます)

 いやあ、長いですね。しかし、やっていることは単純ですし、使っているアクティビティもシンプルなものばかりです。簡単に説明すると、次の図のような処理をしています。

 本サイトの読者の方々の中には、VBやマクロなどのプログラミングに興味がある人も多いかと思いますが、これらの言語の経験が少しでもあれば、UiPathは、非常におすすめです。「Visual Basic .Net(VB.Net)」の関数や書式などをそのまま使えるので、現在のスキルをそのままRPA分野で活かすことができます。

 もちろん、プログラミングの経験がまったくなくても問題ありません。子供向けのブロックプログラミングツールと同じような敷居の低さで、GoogleのVision APIを呼び出したり、Javaのjarファイル内のメソッドを呼び出したりすることもできます。

 実際、筆者は、プログラミングの実務経験ゼロの文系人間ですが、半年ほどで、これくらいのワークフローがサクサク作れるようになりました。今まで、プログラミングに挫折してきた人でも、おそらく「UiPath Studio」なら、続けられるはずです。

「UiPath Studio」Community Editionを入手しよう

 さて、興味を持って頂けたのであれば、早速、ロボットを作るための環境を整えていきましょう。

 まずは、「UiPath Studio」をインストールします。UiPathの製品は、処理を作成するデザインツールの「UiPath Studio」、作成した処理を実行するロボット本体「UiPath Robot」、そしてロボットの実行スケジュールなどを管理する「Orchestrator」という3つのツールで構成されています。

 このうち、ロボット制作に必要なのは、「UiPath Studio」と「UiPath Robot」の2つですが、これらは一体で配布されているので、「UiPath Studio」だけをダウンロードして、インストールします。

 なお、インストール方法やステップバイステップでの操作方法は、“できるネット”でもまとめられているので、こちらの記事も参照してください。

 UiPathのWebページにアクセスし、[トライアルの開始]ボタンをクリックし、“COMMUNITY EDITION”を選択後、必要な情報を入力してダウンロード用のリンクをメールで受け取り、その内容に従ってインストールとアクティベーションを実行しましょう。

「UiPath Studio」のダウンロードページ

 同ページに記載されている通り、Communitiy Editionは、個人および法人が、一定要件の下で無償利用できるライセンスです。利用できる台数や「Orchestrator」を使った管理機能、サポートなどに違いはありますが、機能制限のないフルバージョンを利用できます。

 サポートは受けられませんが、“UiPathアカデミー”と呼ばれるオンライン教育コンテンツを無料で受講できるうえ、日本語のガイドやフォーラムも利用できます。

 “UiPath Go!”というマーケットプレイスもスタートし、他のユーザーが作成したオリジナルのパーツ(アクティビティと言います)もダウンロードできるようになりました。こうしたサービスも積極的に活用するといいでしょう。

Excel検算ロボを動かしてみよう

 さて、準備が整ったら、実際にロボットを作っていきたいと思いますが、まずは冒頭で紹介したExcel検算ロボを動かしてみましょう。

 ダウンロード後、任意のフォルダーに展開し、フォルダーの中にある“Main.xaml”をダブルクリックすると、「UiPath Studio」が起動し、ワークフローが読み込まれるはずです。

 ワークフローの中身については、別途、説明のドキュメントを参照していただくとして、とりあえず実行してみましょう。ツールバーの[実行]ボタンを押すと、「UiPath Studio」が最小化されると同時に、ロボットによってExcelが起動され、電卓によって検算が実行されます。

 このバージョンは、複数シートに対応していないうえ、SUMしか検算できない簡易的なものですが、ワークフロー自体は簡単に拡張できるようにしていますので、やる気さえあれば、いろいろな拡張が可能です。

 当研究所ではサポートサービスは提供していないので、DIYでお願いしたいところですが、興味がある方はアクティビティを追加して改変してみることをおすすめします。

いろいろなロボットを作ってみよう

 さて、いかがでしたでしょうか? 今回のExcel検算ロボは、言わば、本連載の集大成です。この作り方をひとつずつ説明してもいいのですが、おそらく、いや必ず、筆者も読者も途中で飽きてしまうので、やめておきます。

 次回からは、もう少し、シンプルで、それでいてロボ感があり、作っていて気分が高まるようなロボットを作っていくことにしましょう。

 たとえば、“自己オフロボ”とか、“インプレスWatchおみくじロボ”とか、“代返おしゃべりホットキーロボ”とか、どうでしょうか?

 手足となって働く忠実なロボットを、きっとあなたも手にしてみたくなるはずです。