週末ゲーム

第667回

1~3時間で遊べる密度の濃い5作品を紹介!フリゲ短編RPG特集 Vol.3

ボスを倒して仲間にしていく作品など、ゲームデザインやキャラクターが光る作品をピックアップ

 インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく『週末ゲーム』。今回はフリーゲームの短編RPGを特集する企画の第3弾として、プレイ時間が1時間から3時間程度の5作品を紹介する。

 ボスを倒して仲間にできる作品や敵の行動パターンが練られた作品など、ゲームデザインにそれぞれの見どころを備える作品を集めた。イベント中心のシナリオ選択型やノンフィールド型など短編らしい密度の濃い構成も魅力で、物語やキャラクターも各作品ごとに独特の趣があるので、興味を惹かれた作品があればぜひプレイしてみてほしい。

スキルセッティングが鍵となるサイドビューバトルが魅力。双子姉弟の復讐の旅を描くRPG「AshSnow Eve」

「AshSnow Eve」

 限られた枠内でのスキルセッティングが鍵となるサイドビューバトルが特徴のファンタジーRPG。公称プレイ時間は2時間程度となっている。

 主人公は弟のアッシュに姉のスノウという双子の姉弟。謎の怪物“アルゴル”に殺された母の仇を討つための旅が描かれる。ゲームはシナリオを選択してストーリーや戦闘を進めていくというイベント中心の構成で、ひとつひとつのシナリオは短め。加えてノンフィールド型の探索クエストもあり、任意のタイミングで挑戦してキャラクターを強化できる。

 戦闘は敵・味方ともにリアルタイムで増加する“タイムバー”がフルになったキャラクターが順次行動する方式で、通常攻撃やあらかじめ4つまでセットしたスキルなどで戦う。スキルは戦闘勝利時や探索クエストで入手するほか、戦闘中に閃くこともあり、その効果は多彩だ。各スキルには戦闘開始から使えるようになるまで、および使ったあとに再使用可能になるまでのターン数(ウェイトターン)が設定されている。

 スキル使用にあたりMP等のリソースを使う概念はなく、使用の可否は純粋にウェイトターンで決まるため、4つという限られた枠の中でスキルをどう組み合わせて、どのタイミングで使うかがポイントとなる。敵は常に一体で、敵と味方の能力値は画面上に示されており、HP以外の能力値はほとんどの場合一桁であるなど比較的ミニマルなゲームデザインも特徴で、シンプルながら熱い駆け引きを楽しめる印象だ。

 能力値アップやさまざまな特殊効果が常時発動する“アビリティ”もスキルと同様に入手可能で、アッシュとスノウそれぞれ固有のものに加えて、3つまで自由にセットする仕組み。戦闘スタイルや敵に応じたキャラクターカスタマイズもバトルの醍醐味だ。

 シナリオ面では、アッシュを溺愛しつつ事あるごとにからかうスノウといったやり取りが楽しい一方、復讐をテーマとした物語らしいヘヴィな展開も待ち受けており、双子姉弟の絆がさまざまな形で描かれる。ドット絵で表現されるキャラクターも可愛らしく、戦闘時のスタイリッシュなアニメーションやエフェクトも爽快感のあるものとなっている。

マップ移動の要素はなく、シナリオを選択してストーリーや戦闘を進めていく
任意のタイミングで挑戦できるノンフィールド型の探索クエスト。アイテムやスキルなどが手に入る
復讐をテーマに重く殺伐とした物語が描かれる作品だが、アッシュを溺愛しつつ事あるごとにからかうスノウの小悪魔的お姉ちゃんっぷりも魅力
通常攻撃などで溜まる“AP”がフルになると使える必殺技も。派手なエフェクトや描き込まれたドット絵によるアニメーションも見どころ

 また本作の作者により、本作とシステムが共通の作品「エクスシアの翼 -亡国の凶星-」も公開されている。こちらは聖女コロナと、彼女の依頼を受けた傭兵ソイルが主人公。コロナの弟で何故かコロナを付け狙うサロスやソイルの傭兵仲間であるサイモンなど、さまざまな人物達の思惑が絡み合いドラマが展開する。常に強面のソイルと何かにつけて虚勢を張るコロナという二人の関係が、追っ手から逃れながらある場所へと向かう旅の中でどう変化していくのかも見どころだ。

 バトルの面では、タイムバーの進行が速くカウンター系スキルなど熟練の傭兵らしい能力を持つソイルが一人で戦う場面があるなど、「AshSnow Eve」とはまた違った戦術を楽しむことが可能。プレイ時間は3時間程度となっている。

「エクスシアの翼 -亡国の凶星-」

 両作ともに、家族や男女、戦友といったさまざまな関係性をベースに、テンポのよい掛け合いでキャラクターがしっかりと立てられているのも魅力。情感豊かに物語を描きつつ、胸が熱くなる展開もありの作品に仕上がっている。

「AshSnow Eve」
【著作権者】
仔竜 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.13(17/02/18)
「エクスシアの翼 -亡国の凶星-」
【著作権者】
仔竜 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.02(17/02/18)

個性豊かな7人のボスを倒して仲間に!自由な順番で攻略できるバトル中心のRPG「帝国水晶譚序章・仲間を求めて」

「帝国水晶譚序章・仲間を求めて」

 ユニークな能力を持つボスを自由な順番で倒していくバトル中心のRPG。公称プレイ時間は1時間~3時間程度となっている。なお、“序章”と銘打たれているが本作自体は短編として完結している。同一世界観での作品展開が予定されており、その第1作という位置付けのようだ。

 舞台となるのは魔法と科学が存在する世界。科学技術を専門とする帝国“ヴェール”では、魔法生物の脅威に対抗するため少女の姿をとる人造人間“バイオロイド”が生み出されたが、7人のバイオロイドが逃走してしまう。主人公のバイオロイド“リヒャルト”は他のバイオロイドを連れ戻すため、転送装置でそれぞれのもとへと向かう。

 ゲームはダンジョンを踏破し、最奥にボスとして待ち受けるバイオロイドを倒すことで進行。倒されたボスはそのまま仲間になる。各ボスの能力は事前に概要を聞くことができ、ボスと戦う順番は自由に選ぶことが可能。さまざまな特殊攻撃を仕掛けてくるボスを倒して仲間にし、パーティを強化してまた別のボスに挑戦していくというサイクルが楽しく、『このボスを倒すには先にこのボスを倒して仲間にするといいかも……』などと攻略順を考えるのも醍醐味となっている。

 戦闘はコマンド選択型で、敵・味方共にリアルタイムで増える“AP”ゲージが100%になったキャラクターから順次行動する方式。能力の概要が示されるとはいえ、ボスの具体的な行動内容などは戦ってみるまでわからないことも多い。各ボスは専門分野や戦闘スタイルによって個性が確立しており、ダメージ算出方法がトリッキーなスキルを繰り出してきたり戦闘中に戦闘スタイルを切り替えたりと、ボスごとにテーマ性のあるバトルを堪能できる。

 さらに、パーティのうち戦闘に参加するメンバーは4人までだが、戦闘中にもメンバーの入れ替えが可能。購入したり、ダンジョンで入手できる装備品によるキャラクターカスタマイズの要素もあるほか、本編クリア後には強化されたボスと戦うこともでき、多人数パーティでの戦略と戦術を存分に楽しめる。シナリオは導入部分など最小限だが、性格面でも個性的なバイオロイド達とのやり取りも独特の味わいがある。今後の作品展開にも期待したい。

「帝国水晶譚序章・仲間を求めて」
【著作権者】
紅凪 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.02(17/03/05)

薄暗い樹海を魔女がゆく。謎解きやボス戦、リリカルな物語が魅力のRPG「木陰のアンチクリスト」

「木陰のアンチクリスト」

 見習い魔女のチコリーと、その師匠で“無貌の魔女”の異名を持つ魔女ウルティカが“封印の樹海”からの脱出を目指すRPG。公称プレイ時間は1~2時間程度となっている。

 樹海には行く手を阻むさまざまな仕掛けが施されており、謎解きも本作の楽しみのひとつ。いざという時は強行突破も可能なため進行に行き詰まる心配はないが、仕掛けをクリアすればアビリティ(戦闘スキル)の習得やアイテムとの交換に使う“マナ”を入手できる。マナは敵の撃破などでも入手できるが、仕掛けのクリアで得られるマナは量が多めのため、挑戦しがいがある。

 戦闘はターン制のコマンド選択型。レベルアップの概念はなく、アビリティの習得やさまざまな効果を持つ装備品の入手によりキャラクターを強化していく。要所でチコリー達に立ち塞がるボスは行動がパターン化されており、これを把握して戦術を組み立てるのが重要。複数ターンにまたがって仕込んでくる敵の特殊行動に対し先回りで対処するなど、ロジカルかつ白熱のバトルを堪能できる。

 アビリティの使用に必要なMPはターンごとに1ポイントずつ回復するほかウルティカはMP回復ができるアビリティも持つが、MPの最大値が低めのため戦闘中のリソース管理も重要となる。総じて難易度は高めだが、ゲーム開始時にゲームモードの選択が可能で、初心者向けのモードにはボスに負けた際の救済措置などが用意されている。

 マップやBGMにより演出される、物寂しく薄暗い雰囲気も特徴。シナリオ面でも教会の処刑人と対峙するなど異端者としての魔女という存在にフォーカスが当たり、ダークファンタジー的な趣がある。ウルティカに対するチコリーの想いや彼女達を取り巻くもう一組の女性達の思惑が絡み合う、リリカルな物語も魅力の作品だ。

マップごとにさまざまな仕掛けがあり、謎解きを楽しめる
謎かけを解くことで開く宝箱も。進行に必須ではないが、解ければ貴重なアイテムを入手可能だ
レベルアップの概念はなく、マナを消費してアビリティを習得する仕組み
さまざまな思惑が絡み合い、魔女をめぐる物語が紡がれていく
「木陰のアンチクリスト」
【著作権者】
鍵虫 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.03(17/03/05)

装備品はガチャでゲット!バトルやカスタマイズを存分に楽しめるノンフィールドRPG「終電を逃した者達 -FINAL TRAIN Ⅶ-」

「終電を逃した者達 -FINAL TRAIN Ⅶ-」

 さまざまなギミックが用意されたバトルや、ガチャで入手できる武器や装飾品によるキャラクターカスタマイズが特徴のノンフィールドRPG。公称プレイ時間は本編クリアまで2~3時間となっている。

 主人公は飲み会帰りのOLにして魔法使いのユッキー。終電を逃した彼女は賞金100億円という闘技場の参加者募集チラシを拾い、始発までの暇潰しのため参加することに。偶然出会った友人のスタピーと共に、コンビニ近くのワームホールから闘技場へと向かう。

 ……と、出だしからカオス感あふれる展開だが、ゲームを進めると仲間も増えていき、パロディあり、グダグダな雑談あり、何だかんだで熱い展開もありと、まさに深夜の謎テンションを感じるシナリオも魅力。闘技場はステージクリア型で、各ステージでは1回先へと進むたびに敵が出現し、奥にはボスが待ち受けるというバトル中心の構成だ。

 戦闘はターン制のコマンド選択型。キャラクターごとに個性的なスキルが用意されており、中盤以降はパーティの人数が戦闘参加メンバーの数を越えるため、戦闘スタイルや状況に応じたパーティ編成も重要となる。また、普通の防御コマンドがない代わりに、戦闘中の行動で溜まる“TP”を消費し、MPを回復させつつ発動ターンのダメージを半減させ、さらに能力アップの効果も得られる“チャージ”コマンドがあるのも特徴。連戦や長期戦におけるリソース管理も重要となってくる。

 ステージ進行中はいつでも、敵を倒して稼いだお金で武器や装飾品のガチャを引くことが可能。武器によって変動するステータスはさまざまで、上昇値が高い代わりに別のステータスが下がるような武器もある。また、装飾品もステータスを底上げするものや特殊な効果を付与するものなど種類が豊富だ。武器と装飾品の装備枠はそれぞれ3つずつあり、ある武器の欠点を別の武器で補うといった、自由度の高いキャラクターカスタマイズも醍醐味となっている。

 ボスを中心に敵の攻撃は激しめで、加えて戦闘時は対処を工夫しないと大ダメージを受けるようなギミックなども登場。ターンを消費せずに使用できる即時発動型スキルの活用もポイントになってくる。一方、オートバトルが搭載されており全体攻撃スキルも充実しているため、ザコ戦は比較的サクサク進めることも可能。メリハリの効いたゲームバランスに仕上がっている印象だ。

 本編のクリア後にはエクストラステージも用意されており、さらなる強敵と戦うことができる。ランダム入手のアイテムで戦力を強化し数々の敵を倒していくという、ハック&スラッシュの楽しみをガチャ+ノンフィールドというコンパクトな形にまとめ、熱いバトルをとことん楽しめる作品だ。

種類が豊富な装備品による自由度の高いキャラクターカスタマイズが魅力
さまざまなギミックが用意されたユニークなバトルを堪能できる
「終電を逃した者達 -FINAL TRAIN Ⅶ-」
【著作権者】
ほりん 氏
【対応OS】
Windows
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
2.02(17/03/05)