週末ゲーム
第587回
簡単なようで難しい、転がしパズルアクション「TorqueL」
アクション性とパズル要素、映像と音の芸術性まで兼ね備えた飽きない逸品
(2015/2/13 12:56)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、パズルアクションゲーム「TorqueL(トルクル)」をご紹介する。
本作はパッケージ版がイベントや委託ショップで販売されているほか、PLAYISMなどのダウンロード販売サイトでも購入でき、PLAYISMでの販売価格は1,000円(税込み)。Windows版のほか、PlayStation 4版、PlayStation Vita版も発売中。体験版はないが、プロトタイプ版が無償公開されている。
転がして、伸ばす。導入はとても簡単
「TorqueL」は、四角い箱型のプレイヤーキャラクター(の中に入っている人が本体?)を動かして、ゴールへと導くパズルアクションゲーム。左右に転がって動くのに加えて、箱型の四方へ棒を伸ばすことができ、これをうまく伸縮させてマップの仕掛けを乗り越えていく。
操作は左右への移動と四方への棒伸ばしのみ。ゲームパッドではスティックの左右で移動、4つのボタンでそれぞれ棒伸ばしを行う。キーボード操作も可能だが、ゲームパッドでの操作が推奨されている。ただし動作確認済みの“Xbox 360 コントローラー”または“Logicool Rumble Gamepad F510”以外のゲームパッドでは、ボタンと棒伸ばしの方向が合わないことがあるので注意が必要だ。
上記のとおり操作はとても単純で、目的もプレイヤーキャラクターがゴール地点に触れればステージクリアとなるシンプルなもの。あとはステージをどんどんクリアしていくだけで、チュートリアルはタイトル画面のみ。グラフィックスもほとんどがシンプルな線画になっており、あらゆる面で明快なとっつきやすいゲームだ。
しかし、とっつきやすいからといってゲーム内容までもが単純というわけではない。触ってみた瞬間、誰もが『思い通りに動かせない!』と感じるはずだ。
棒の操作が攻略の鍵であり、最大の難所でもある
思い通りに動かせない原因は、棒を伸ばす操作と移動の兼ね合いにある。棒はボタンを押すだけで本体の四方へ伸ばせるので、高い所へ移動したり、幅のある溝を乗り越えたりするのに使える大変便利な存在だ。
ところが、本体は左右への移動の際に“転がりながら”動く。初期位置では上に棒を伸ばすボタンが、本体が一度転がると右向きになり、さらに動けば下になる。棒を伸ばすボタンは本体の面に対応しているので、本体が転がるごとに棒が出る方向が変わる(ように感じる)のだ。
Xbox 360コントローラーを使っていれば、コントローラーのボタンの色と本体の面の色が対応しているので、止まっている状態なら『この面から棒を出したいから……このボタン』と考える間はある。しかしフィールドが動く場所など、すばやい操作を求められることもある。本体を左右に移動しながら棒の操作をしようとすると、どの面に向いているかが瞬時に判断できず非常に難しい。
しかも棒は4本が独立しており、すべて同時に出すこともできる。2本を伸ばして長い棒状になったり、4本すべてを出して×字を描いたりもできる。『今、2つの方向に棒を伸ばしたい!』と思っても、とっさにボタンを2つ押すのは至難の業だ。
さらにプレイヤーを悩ませる要素がもう1つ。棒には質量があり、伸ばすことで本体の重量バランスが変わる。ごく狭い足場に本体を乗せつつ左右どちらかに棒を伸ばすと、伸ばした方が重くなり、そちらに引っ張られて本体ごと落下してしまう。また空中で棒を伸ばすと、重さの中心点が変化して、そのまま回転すると空中での軌道が不規則に変化。重量バランスと重力まで頭に入れて空中での挙動を考えるのは、これまた極めて難しい。
といった感じで、見た目はわかりやすいのに、思ったように動かすのはやたら難しい。ちょっと溝があるだけなのに、それを乗り越えるための操作を適切にやるのが難しいという、えも言われぬもどかしさがある。しかし、深く考えずに勢いで操作してしまっても意外とうまく行ったりもするし、不規則な空中軌道も見ている分には面白かったりして、操作が難しくてもネガティブな感覚を抱くわけではない。
プレイ感のよさは動きの面白さによるところもあるが、本体を転がしていると音楽が流れるという演出が効いていると感じる。ゆっくり動くと音楽も遅くなり、転がる方向を逆にすると音楽も逆再生っぽくなる。DJのレコードを動かしているような感覚だ。本作の楽曲は「リッジレーサー」シリーズなどの楽曲で知られる“sanodg”こと佐野信義氏が提供しており、サウンドの面での気持ちよさも考えられているのがとても伝わってくる。
パズル解読とシビアなアクションの両方が求められる
アクション的には慣れていけば少しずつ上達するし、それが楽しみにもなるのだが、本作のゲーム的な部分はまだ半分。もう1つ、ステージを攻略するためのパズル要素も重要なポイントだ。
ミスになるのは、本体がフィールド上にある赤い部分に触れた時のみ。それ以外の壁に接触・落下したり、障害物に挟まれたりしてもミスになることはない。また伸ばした棒は赤い部分に触れてもミスにはならないので、触れそうになったら棒を伸ばして押し戻すことでミスを避けることもできる。
フィールドには動く床やシーソーのように重さで傾くオブジェクトがあり、これらをうまく活用することでステージを突破できるようになっている。しかし、仕掛けの使い方を見出せなければ、ひたすらミスを重ねることになる。序盤のステージはゴリ押しも効くが、途中からは繊細かつ正確な操作が求められる。最終盤になると、仕掛けを理解することと、シビアな操作に慣れることの両方が満たされるまで延々リトライするはめに。
リトライ回数に制限はなく、何度ミスしても再挑戦できる。ただし全プレイ時間と各ステージの攻略時間が記録されるので、タイムアタック的なことも考え出すとあまりのんびりしていられない。
特定のステージにはゴール地点が複数あり、入ったゴール地点によってルートが変化する。ルートは全部で7つあり、すべてのステージを楽しみたければ、7つすべてのルートを踏破せよ、という設計になっている。
発売当初にはセーブ・中断機能はなく、ゲームを終了したら常に最初からやり直しになっていたが、プレイヤーからの要望に応える形で、本日2月13日に中断機能を追加するアップデートがWindows版に対して公開された。筆者も最初のうちは操作と謎解きの両面で苦労し、クリアするのに1時間ほどかかったステージがあったので、中断機能の実装は大変ありがたい。なお、PlayStation 4/Vita版については後日アップデート予定とのこと。
インディーゲームの代表格、面目躍如の完成度
本作は2013年にプロトタイプ版が公開され、その後PlayStationプラットフォームから発売されることが発表された。ほぼ個人で開発されているタイトルが、開発段階からPSプラットフォームで展開されることが決まり、SCEも大々的にPRしたことで一躍脚光を浴びた。それから発売までは1年以上の開発期間があったが、コンシューマーゲーム業界におけるインディーゲームへのムーブメントの先駆けとなる作品になった。
完成した作品は、元々あったビジュアルとサウンドの芸術的な部分を活かしつつ、操作性とステージの難易度・バリエーションをうまくまとめた完成度の高いものになった。筆者は以前のバージョンも含めてプレイしてきたが、見たことのないステージでは頭をひねり操作に悩み、無数のリトライを重ねてきた。そのたびに新鮮な手ごたえがあり、惜しいところでクリアできない時のうめき声を無数にあげさせられた。
見た目の芸術性だけの作品ではないし、アイデア一発のゲームでもない。かと言って難しさ一辺倒のアンバランスなゲームでもない。全体としての完成度がきちんと整えられているなと感じられる。映像やゲームの説明だけを見ると『こんな単純なゲームに1,000円?』と思う人もいそうだが、遊んでみれば『さすがはインディーゲームの代表格だ!』という価値が感じられるはずだ。
ソフトウェア情報
- 「TorqueL」
- 【著作権者】
- FullPowerSideAttack.com
- 【対応OS】
- Windows 7以降(編集部にてWindows 8.1で動作確認、PlayStation 4/Vita版あり)
- 【ソフト種別】
- ダウンロード販売 1,000円(税込み)など
- 【バージョン】
- 1.0.2(15/02/13)