週末ゲーム
第495回
王道長編RPG「エスファリア戦記」
“ゲージエンカウントシステム”によりサクサク進行、戦闘は行動順制御が決め手のCTB
2012年8月24日 10:25
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、敵とのエンカウント頻度をプレイヤーが制御できる独自システムを搭載したRPG「エスファリア戦記」を紹介しよう。
魔物討伐のため旅立つ青年ウェインの物語
「エスファリア戦記」は、両親の仇討ちとして魔物を討伐する旅に出た青年“ウェイン”と、その仲間達の冒険を描く2D RPG。敵とのエンカウント頻度をプレイヤーが制御できる独自システムや、行動順が重要な意味をもつ戦闘が特徴だ。
舞台は、強大な科学力をもった文明が戦争で衰退し、300年が経った世界。ようやく文明が復興し始めた国“エスファリア”で、かつて両親を魔物に殺されたウェインは王都の剣術大会に出場し、みごと優勝。王国騎士団への入隊を打診されるが、断ってしまう。彼は、騎士団が王都防衛を最優先し魔物を討伐しないことに不信感をもち、またそのせいで自分の村が救われなかったことにわだかまりを感じていた。そんな彼になぜか国のお姫様“フィアナ”が同調し、二人は魔物を討伐するため世界を巡る旅へと出ることになる……。
その後パーティには、幼い頃の記憶がなく、孤島に独りで暮らしていた魔法使いの少女“エリシャ”と、旧世界の謎を追い続ける変わり者の歴史家“オルウェン”が加わり、四人はやがて世界の謎と対峙していくことになる。失われた旧文明、魔物に蹂躙されつつある世界、旅に出る青年と国を出奔するお姫様など展開は王道だが、キャラクターが丁寧に描かれているのが魅力。ウェインより年上でお姉さんぶるが、どこかやんちゃなところもあるフィアナ。動物と意思疎通できるが人と話すのは苦手なエリシャ。理論派で皮肉屋のオルウェン。個性的なキャラクター達によるやり取りが、オリジナルイラストの会話グラフィックつきでストーリーの随所に挟まれ、物語に彩りを添えている。
エンカウント頻度を制御できる独自システムを搭載
戦闘のエンカウントはランダムだが、エンカウントの頻度を制御できる“ゲージエンカウントシステム”を搭載しているのが特徴だ。フィールドやダンジョンでは画面の右上にゲージが表示され、歩くと少しずつゲージが上がっていく。このゲージが上がれば上がるほど敵に遭遇しやすくなる仕組みだが、ゲージは動かずに制止しているとすぐに下がっていくため、適度に立ち止まれば敵とエンカウントせずに探索を進めることができる。ダンジョンの仕掛けを解いているときなど、敵に遭遇して邪魔をされたくない場合に有用だ。
ただし、[Shift]キーを押すなどして高速なダッシュ移動をすると、ゲージは一気に上がってしまう。慎重に進むか、敵と戦うことを厭わず急いで進んでいくかはプレイヤーの判断だ。逆に、特定の敵が落とすアイテムが欲しいときなど、敵と頻繁に遭遇したいときはダッシュ移動が活用できる。
戦闘はCTB、行動順の制御が重要
戦闘はコマンド選択型。敵、味方ともに行動順が入り交じって表示され、すばやいほど行動機会が多く回ってくる、いわゆるCTB方式を採用している。本作では、この行動順の把握と制御が戦闘における重要なポイントとなる。
パーティの各メンバーはそれぞれ剣技や魔法など、“SP”を消費して発動するさまざまなスキルを備えているが、スキルによっては発動前に“ディレイ”と呼ばれる待ち時間が発生し、強力なスキルほどディレイが長い傾向がある。敵の残りHPは表示されるので、効率的に戦うにはやみくもに強力なスキルを繰り出すのではなく、敵の行動順や残りHPを見て行動前にトドメを刺せる適切なスキルを選択する……といった駆け引きが必要。また、回復魔法や回復アイテムにもディレイがあるため、死にそうになっても即座に回復はしにくい。ディレイのない回復魔法もあるがその分消費SPが高いなど、回復にも計画性が必要となっている。
逆に、敵にディレイ効果を与える攻撃スキルも用意されており、これを活用することで戦闘を有利に進められる。中盤以降のボス戦などは、敵の行動を遅らせることが前提のバランスになっており、敵の強力な攻撃をどれだけ抑えられるかという、緊張感のある攻防が楽しめる。
職業により戦闘スタイルが変化。自由なパーティ編成を楽しもう
さまざまなタイプの職業が用意されているのも本作の醍醐味のひとつ。戦闘に勝利すると通常の経験値のほかに“CP”というポイントを入手でき、これが一定数溜まると職業を変更できる。また、各職業には通常のレベルとは別の“クラスレベル”があり、これが5になるとさらに上位の職業が解放される仕組みだ。
職業ごとにステータスが変動するほか、職業は剣士系、格闘系などと系統立っており、各系統ごとに装備可能な武器・防具や覚えるスキルがガラッと変化する仕組み。たとえばフィアナなら、槍を装備でき強力な槍技を覚えるナイト系、杖を装備でき多くの回復魔法を覚える神官系などが用意されている。
CPを消費して一度変更した職業には、その後は追加コストなくいつでも変更することが可能で、さまざまな戦闘スタイルを気軽に試すことができる。さらに、複数の職業のクラスレベルを上げると、“複合職”が登場することも。パーティの職業編成は自由だが、回復役となる職業とディレイ技に秀でた職業をそれぞれ1つは押さえておくのが定石だ。
徐々に明かされていく世界の謎など、王道で熱い展開が見所
中盤からはシリアスで重めの展開が続くが、希望を失わず、悲しみを乗り越えて戦い続ける四人の姿がさまざまなイベントを通して描かれる。また、旧世界はなぜ衰退したのか、魔物とはそもそも何なのかといった世界の謎に迫っていき、魔物殲滅とは別の道を模索し始めるウェインの成長も見所だ。とはいえシリアス一辺倒ではなく、ウェインの故郷の村に温泉があることを利用したお楽しみイベントなどもあり、こうした隠し要素を探すのもちょっとした楽しみとなっている。
プレイ時間は15時間から20時間程度の長編だが、ゲージエンカウントシステムにより不要な戦闘は飛ばすことができる上、レベルもサクサク上がるため作業感はなく、筆者は最後まで熱中してプレイできた。また、世界の各地には旧世界の遺跡が残されており、ストーリーを進めるにあたり攻略は必須ではないが、旧世界の強力な武器を求めてチャレンジするのも楽しい。ストーリー、戦闘、探索と長編RPGの面白さを存分に味わえる一作だ。
ソフトウェア情報
- 【著作権者】
- IBUKI 氏
- 【対応OS】
- (編集部にてWindows XP/7 x64で動作確認)
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 1.18(12/07/22)