週末ゲーム

第623回

無数の敵を殲滅する爽快SFシューティング「ヴァルシュトレイの狂飇」

広範囲攻撃と無敵タックルでスコアアタックが熱い。謎が謎を呼ぶ物語も魅力

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、シューティングゲーム「ヴァルシュトレイの狂(きょうひょう)」をご紹介する。

 本作はパッケージ販売、およびゲーム配信サイト“Steam”でダウンロード販売されている同人ゲームで、販売価格は1,944円(Steam、税込み)など。

4人の女性パイロットが戦う縦スクロールシューティング

プレイヤーキャラクターは4人。ゲームを進めると別のキャラクターもアンロックされる

 「ヴァルシュトレイの狂」は、SF世界で宇宙を舞台に戦う縦スクロールシューティングゲーム。西暦2903年、謎の機械構造体からの侵略を受けた人類は、敵の出現位置と見られるリギルケンタウリ近くにあるヴァルシュトレイの調査に乗り出す。エイレーネ連邦国とヴォルガ公国から選ばれた4人の女性パイロットは、宇宙戦闘機AEDRAに乗り込み、“オペレーション・ヴァルシュトレイ”を開始する。

 ゲームは選択したキャラクターの目線で語られるストーリーモードと、ストーリーなしでゲームを遊べるアーケードモードが用意されている。チャレンジモードという項目も用意されているのだが、初期状態では選択できない。最高難度をノーコンティニュークリアしてもこのモードはアンロックされず、条件が不明なため残念ながら筆者は未プレイ。

 ストーリーモードとアーケードモードは、いずれも12ステージで構成されている。各ステージの最後にはボスが登場し、倒せばステージクリア。各ステージはボス戦を含めても数分程度で終わるため、アーケードモードなら1プレイ30分程度で攻略できる。残機がなくなるとゲームオーバーだが、コンティニューも可能だ。

 武器はショットとサブウェポンの2種類が基本。ショットはキャラクターごとに範囲や威力が異なり、パワーアップアイテムを取ることで強化される。サブウェポンはショットと切り替えて使用。最初はレーザーを装備しているが、攻略中にサブウェポンアイテムを拾うことで、別のサブウェポンに変更される。好みのサブウェポンへ任意に切り替えはできないため、変更したくないときはサブウェポンアイテムを拾わないのも重要だ。

 サブウェポンは、直線に貫通するレーザー、複数の敵を自動でロックオンして狙うホーミングレーザー、単発で発射され着弾点で爆発する反物質爆弾がある。初期はこの3つだが、何度かクリアするなどして条件を満たすと、他のサブウェポンも登場するようになる。サブウェポンはいずれも強力で、多数の雑魚を一気に蹴散らせる爽快さがある。

ショットは威力や範囲がキャラクターごとに異なる
サブウェポンは複数種類あり、途中でサブウェポンアイテムを拾うごとに変更される

圧倒的火力で敵を蹴散らすバリオンレーザーとグラバスター

画面のほぼ全域を打ち抜くバリオンレーザー。見た目通りに強力だ

 本作のポイントとなるのが、ショットとサブウェポンに加えて用意された武器である、バリオンレーザーとグラバスターだ。敵を倒すと画面下にある緑色のバリオンレーザーゲージが溜まり、満タンになるとバリオンレーザーを使用できる。バリオンレーザーは画面全体を打ち抜くような広範囲の攻撃で、バリオンレーザーゲージを消費しきるまで連射できる。

 バリオンレーザーで敵を倒すと、敵がハイペリオと呼ばれる星形のアイテムに変化する。これを集めると、今度は赤色のグラバスターゲージが溜まっていく。ハイペリオは接触して回収できるが、ショットボタンを離すと画面内のハイペリオが自機に吸収される。

 そしてバリオンレーザー終了後、自動的にグラバスターが発動。自機が無敵状態になるとともに移動速度が1.5倍になり、周囲にブラックホールが発生して、敵を体当たりで倒せるようになる。グラバスターの持続時間は、グラバスターゲージの量で決まる。さらにグラバスターで敵を倒すと得点倍率が上がり、最大で512倍にもなる。多数の敵が出現するタイミングでグラバスターを発動できれば、大量の得点を稼げるチャンスだ。

 雑魚をショットやサブウェポンで倒してゲージを溜めたら、バリオンレーザーでなるべく多くの敵を倒し、グラバスターが発動したら体当たりで殲滅、というのがスコア稼ぎのポイントになる。バリオンレーザーゲージは割とすぐに溜まるので、どんどん撃っても構わない。

 バリオンレーザーで敵を殲滅した後、グラバスターで体当たりして倒すという圧倒的攻撃力が、合わせて10秒前後続く。しかもゲージさえ溜まれば何度も発動できるので、爽快感も高い。弾幕を避けていくのではなく、敵を撃滅するのが楽しいタイプのゲームになっている。

 バリオンレーザーゲージはもう1つの役割として、自機のシールドエネルギーも担っている。バリオンレーザーゲージが一定量ある時に被弾すると、ゲージを消費して自動的にシールドが発動。一定範囲の敵弾を消しつつ、自機は短時間無敵になる。攻略においては、あえてバリオンレーザーを使わず温存するという作戦も取れる。

 またバリオンレーザーやグラバスターも万能ではない。バリオンレーザーはほとんどの敵を一撃で倒す大威力があるが、自機は無敵状態にはならないため、被弾するとダメージを受ける。バリオンレーザーゲージがあればシールドが発動するが、バリオンレーザー終了間際でゲージが少ない時は一発でミスになる。

 さらに、バリオンレーザーを使用してグラバスターが発動した後は、バリオンレーザーゲージが空の状態になっている。この時も被弾すると即ミスになる。何度かプレイして、ここは敵が多数現れて危険だと思ったところでグラバスターが発動するよう調整するなど、戦略も重要になってくる。極めようとすると頭を使うので、やり込み的にも面白い。

バリオンレーザーで敵を倒すと、敵や敵弾がハイペリオに変化する。回収すればグラバスターゲージが溜まる
グラバスター中は無敵の体当たりで爽快感は抜群。さらに得点倍率も上がる
バリオンレーザーゲージはシールドとゲージを共有する。弾幕を受けて使うか、次のピンチのために溜めておくかも戦略のうち

フルボイスで語られるストーリーにも注目

ストーリーモードでは、プレイするキャラクターの独白という形式で物語が語られる

 本作は爽快感重視のデザインで、シューティングゲームとしては難易度が低め。見た目の弾幕はかなり激しいのだが、バリオンレーザーやシールドで力技の突破が可能なので割と何とかなる。また全体的に弾速が遅めで、かつ自機の当たり判定が極めて小さいため、回避もしやすい。当たり判定は本当にドット単位の大きさのようで、敵弾を避け切れずシールド発動を覚悟していたら、何事もなくすり抜けていた、という状況がよくある(笑)。

 ゲームは3段階の難易度があるが、最も難しいADVANCEDでもさほど厳しくない。弾幕や弾速は強化されるのだが、いくら敵が増えてもバリオンレーザーで殲滅できるので、あまり差を感じないというのが理由だと思われる。むしろ敵が増えた分だけ爽快感が増して楽しめるという側面もあるので、上の難易度も怖がらずに挑戦してみていただきたい。

 もう1つ触れておきたい要素はストーリーだ。ストーリーモードをプレイすると、最初にテキストと音声でストーリーが読み上げられ、これが数分間続く。シューティングゲームを遊びたいのに延々と読み物を聞かされるのは、見るだけの下手なチュートリアルよりも苦痛に感じられる。いったんゲームプレイに入ってからストーリーに移るなど、もう少し見せ方を考えてほしいところだ。

 しかしゲームを進めていき、おおよその世界観が見えてくると、だんだんと面白くなってくる。機械構造体との厳しい戦いに臨むにあたり、彼女らの思うことはそれぞれに違う。軍人として任務を全うしようとする者。ただ仲間を助けるために戦う者。密かに仲間とは違う目的を与えられた者……。それぞれの思いが交錯し、実際に衝突も起こる中で、徐々に明らかになっていく真実と、さらに深まる謎。意外な現実を突き付けられた主人公たちがどう行動するのか、先の気になるドラマが展開される。

 最初からすべての物語を見ることはできず、まずは4人の物語を見ることになる。ある程度クリアすると、追加キャラクターも登場し、さらに物語の真相へと踏み込んでいくことになる。ストーリーはいずれも登場人物の主観で描かれているため、4人+αの物語が展開されることになる。ストーリー部分はフルボイスで作られており、力の入れようが感じられる。

 ゲームとして気になるのは、自機の性能の違いを感じにくいこと。サブウェポンは全キャラクターで共通となっており、ショットや移動速度などの特性が少し異なるだけなので、あまり新鮮味がない。またチャレンジモードは何かしらの条件でアンロックされるのかどうか、ストーリーは完結するのか(筆者はまだ謎が解けるようなエンディングに到達していない)など、不明な点がいくつかある。もしかするとアップデートで対応するのかもしれないが、そのあたりのアナウンスがないのが少々不安だ。

 そういった不満点もあるにはあるが、多数の敵を圧倒的火力で蹴散らしていく爽快感は何にも増して魅力的だ。見た目の派手さや美しさも十分だし、妙に避けやすい弾幕のおかげでシューティングゲームが上達したような気にもなれる。Steamでのオンラインスコアランキングにも対応しており、やり込みも楽しい。シューティングゲームとしての根幹部分はとてもよくできた作品だ。ぜひ今後もアップデートをかけてクオリティを高めていってほしい。

各ステージの開始時には、キャラクター同士の掛け合いも見られる。ストーリーを楽しむとともに、キャラクターの個性も見えて面白い
エンディングでは多数のイラストを交えて物語が語られる。謎が謎を呼ぶ展開で、先が気になる

ソフトウェア情報

「ヴァルシュトレイの狂
【著作権者】
スタジオシエスタ
【対応OS】
Windows 7/8/8.1(編集部にてWindows 10で動作確認)
【ソフト種別】
ダウンロード販売 1,944円(税込み)など
【バージョン】
1.10(15/12/30)

(石田 賀津男)