クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
創作の適正な対価とは
~第7章:作品を発表するときに気をつけること~
2016年9月12日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“独占的利用の許諾って何だろう”の続きとして、今回は“創作の適正な対価とは”というテーマを解説する。
創作の適正な対価とは
具体的にお金をどう稼ぐか? という話になると、なんだかすごく生々しい感じがしますね。
そうですね。『趣味の範囲で創作を楽しむことができれば、お金なんか要らない』というのも、考え方の1 つです。
感想を言ってもらえたり、評価点をつけてもらったり。
それが次の創作への糧になる、という方も多いです。
評価してもらえるだけでも、うれしいですもんね。
悪い評価であっても、誰にも見てもらえなかったり、リアクションが無かったりするよりマシ、という方もいます。
無料で見られるものに対してより、見るためにお金がかかるものに対しての方が、評価は厳しくなりますよね。
対価を得ようと思ったら、それはもう既に趣味ではなく、ビジネスですから。悩ましいのは、創作に費やした時間や労力が、そのまま対価になるわけではないことです。
アルバイトみたいに、時給じゃないですもんね。
そう。買ってくれる人がいて初めてお金になる。
だから、お金を出してでも読みたいと思ってくれるファンがどれだけいるか? という話になるわけです。
僕のファンか……いるかな?
ファンがいないなら、作るしかありません。
ファンを作るには、とにかく創作して公表し、まずは作品と名前を知ってもらうこと。
無名な方がいきなり販売サイトに登録したところで、買ってもらうどころか見つけてもらうことすら難しいです。
世の中には星の数ほど作品があるのですから。
埋もれちゃう!
誰もがクリエイターになれるというのは、そういうことですよね。
だから、著作権は創作によって自然に発生する権利ですが、そのまま何も考えずに権利を抱えているより、どうやって生かすかを考えた方が良いと思います。
埋もれてしまうより、使ってもらう方がいいですもんね。
初音ミクのように『二次利用しても構いません』と宣言しておくのも手です。
例えば『Flickr』という画像投稿サイトでは、任意でクリエイティブ・コモンズ・ライセンスをつけられるので、二次利用可能な画像を探している人が集まるようになっています。
大手のニュースサイトも利用しているのですよ。
画像をアップロードするときに『All rights reserved』や『Public Domain』ではなく、『Attribution』と書いてあるライセンスにしておけば、二次利用には著作者の名前を表示する義務があるので、作品と名前がセットで広まります。
あ、そういうことか!
繰り返しになりますが、創作の対価は費やした時間や労力ではなく、周囲からの評価によって得られるものです。
デジタル化によってまったく劣化しないコピーが簡単にできるようになり、ネットワーク化によって流通も簡単になりました。
他人によるコンテンツの複製や流通を制限することで、希少価値をもたらし対価を得るのが従来の著作権の考え方ですが、これからは発想を転換した方がいいように思います。
使わない権利なんか抱えていても仕方がないですもんね。
次回予告
今回の続きとして次回は“商業流通って実はすごい”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!