特集
「Microsoft WebMatrix」でWebアプリの世界へ踏み出そう! 第2回
「WordPress」のインストールに挑戦! ほかにインストール可能なWebアプリも紹介
(11/09/08)
マイクロソフトによるまったく新しい動的なWebアプリの開発環境「Microsoft WebMatrix」(以下、「WebMatrix」)の魅力を紹介する本特集。第1回では、「WebMatrix」の機能とインストール方法について解説した。
一言でまとめると、「WebMatrix」は“Webアプリのインストールから開発・テスト・アップロードまでを行うために必要な機能をひとまとめにしたソフト”だと言えるだろう。
第2回となる今回は、そのなかでもとくに“Webアプリのインストール”機能にフォーカスする。人気のブログエンジン「WordPress」のインストールを例に、その手順を紹介するほか、「WebMatrix」でインストール可能なWebアプリの紹介も併せて行う。たとえば、
- Webアプリを使って自分のWebサイトを作ってみたい人
- とにかく手軽にさまざまなWebアプリを試してみたい人
- Webアプリを紹介するために、ローカルPC上で動作デモをしたい人
- Webアプリのプラグインやテーマを開発するための環境を手軽に構築したい人
といった読者には、ぜひご一読をお願いしたい。
定番のブログエンジン「WordPress」をインストールしてみる
「WebMatrix」を利用すれば、インストール支援ソフト「Web Platform Installer(以下、Web PI)」と連携して、Webアプリをわずか数ステップでインストールできる。必要なコンポーネントも自動でダウンロード・インストール・設定してくれるので、依存性の問題に悩まずに済むのもうれしいところだ。
今回はそのなかでもブログエンジン「WordPress」を例に挙げ、実際にインストールを行ってみる。
「WordPress」は、おそらく世界中で最も利用されているブログエンジンで、名前を聞いたことのある読者も多いだろう。サードパーティによって開発されたプラグインやテーマも豊富で、自分でブログサイトを立ち上げたいというユーザーにはもっともお勧めできるブログエンジンだ。
さて、「WordPress」はPHP製のWebアプリで、データベースには「MySQL」が利用されている。そのため、PHPとMySQLのインストールが必要だが、「WebMatrix」ならば簡単に“WIMP(Windows+IIS+MySQL+PHP)”環境を構築できるため、ユーザー側で事前に何かを用意する必要はない。インストール作業も簡単で、ウィザードに従って進めていくだけだ。
たったこれだけのステップで、Webサーバーからデータベース、スクリプト言語の実行環境、Webアプリのインストールまでが行えるのだから驚きだ。途中、データベースのアカウント設定などが必要だが、それ以外はウィザードの[次へ]ボタンを押していくだけでよい。「WordPress」の実行に必要な「PHP」や「MySQL」も自動でダウンロード・インストールしてくれる。
なお、このままでも一応「WordPress」は動作するものの、パーマリンクに日本語が含まれている場合に、404エラーが発生する場合がある。その場合は、以下の修正プログラムをインストールしよう。
- レンタルサーバーのWebサーバーが「Apache」でも大丈夫?
「WebMatrix」で利用されるWebサーバーは、正確には「IIS(Internet Information Service)」ではなく、開発用の簡易サーバー「IIS 7.5 Express」というもの。
「IIS 7.5 Express」は「IIS」から派生しており、いくつかの機能が制限されている。しかし、その違いを意識する機会はあまりないだろう。「IIS 7.5 Express」は、管理者権限がなくても手軽に開始・終了できるので、開発に利用するには「IIS」より便利。「WebMatrix」では「IIS 7.5 Express」が80番ポートを利用しない設計になっているので、すでに「IIS」などのWebサーバーが運用中の環境でも、ポートの衝突が起こりにくい。
ただ、「Apache HTTP Server」(以下、「Apache」)との違いが気になるユーザーもいるかもしれない。確かに、レンタルサーバー(ホスティングサービス)の多くでは「Apache」が利用されており、「IIS」との動作との違いは気になるところだ。
結論から言うと、「WebMatrix」向けにパッケージングされたPHP製のWebアプリを動作させる限り、その違いが気になることはないだろう。また、Webアプリをレンタルサーバーへアップロードする場合にも、FTP接続が利用できるため安心してほしい。
ただし、ASP.NETベースのWebアプリは動作しないほか、「Web配置ツール」を利用したアップロードには対応していないので注意。
種類 IIS(Windows) Apache(Linuxなど) 主要ホスティングサービス ExpressWeb など さくらインターネット、ロリポップ!、XREA、CORESERVER など PHPアプリ ○ ○ ASP.NETアプリ ○ × アップロード方法 FTP/Web配置ツール FTP なお、「WebMatrix」を利用したWebアプリのアップロードは、次回に詳しく紹介する予定だ。
- 「PHP 5.3」を利用したい
「WebMatrix」では、標準で「PHP 5.2」を利用したPHP製アプリの実行が可能。しかし、「PHP 5.3」を採用したレンタルサーバーを利用しているといった理由で、「WebMatrix」でも「PHP 5.3」を利用したいというケースは少なくない。
実は、「WebMatrix」では「PHP」のバージョンを切り替えることも可能。「PHP」のバージョンは“サイト”画面にある[設定]画面から切り替え可能。初回利用時は、「PHP 5.3」のインストールが必要だが、これも「WebMatrix」がコンポーネントの依存性を解決して、自動でダウンロード・インストールしてくれるので楽ちんだ。
もっとある! 「WebMatrix」で簡単にインストールできるWebアプリ
「WebMatrix」でインストール利用可能なWebアプリケーションは、現時点で約60種類を数える。いずれも、先述の「WordPress」とほぼ同じ手順で、「WebMatrix」の“Web ギャラリー”からインストールできる。また、マイクロソフトが運営するWebアプリのライブラリサイト“Windows Web App Gallery”から直接インストールすることも可能だ。各Webアプリのページにある[Install]ボタンを押せば、「Web PI」を利用したインストールが始まり、「WebMatrix」での管理が可能になる。
以下に、そのうちのいくつか編集部でピックアップしたものを挙げておく。
Drupal(PHP/MySQL)
MozillaやNASAのWebサイトといった多くの有名サイトで採用されるなど、世界的なシェアをもつ有名CMS。モジュールを追加することで機能を拡充可能な設計になっており、個人向けWebサイトから大規模な企業のWebサイトまで、さまざまな用途に利用されている。
「WebMatrix」で利用する場合は、「Drupal 日本語版パッケージ」の利用がおすすめだ。
Geeklog(PHP/MySQL)
動作速度とセキュリティを高いレベルで両立させたブログエンジン。CMSとしての利用にも十分の機能を備える。管理画面は管理者にだけWebサイトのコンテンツの一部分として表示される仕組みになっており、思い立ったらすぐにその場でコンテンツを追加・編集できる。さらに、日本の携帯3キャリアに対応するほか、日本語のドキュメントが充実しているのも特長。
concrete5(PHP/MySQL)
Webページ上のコンテンツを直接編集したり、ドラッグ&ドロップで自由に配置できるのが特長のCMS。これらは“ブロック”と呼ばれる部品単位で行う仕組みで、できあがりの状態を把握しやすい直感的な編集が行える。下記リンクにあるレビュー記事も参照してほしい。
Umbraco CMS(ASP.NET/SQL Server)
ASP.NETベースの多機能CMS。ASP.NETの公式サイトにも利用されるなど、とくに欧州で実績がある。インストール時に“ブログ”や“ビジネス”など、用途に応じた“スターターキット”を選択するだけで、目的に応じたコンポーネントのみを導入できるのも特長だ。最初はコア機能のみを選択して、あとから機能を追加することもできる。
管理画面“http://(ドメイン)/umbraco/”だけでなく、実際の表示画面“http://(ドメイン)/”でのコンテンツ編集が可能(“Edit in Canvas”機能)なのも特長だ。
ただし、公開して利用できるのは「IIS」系のホスティングサービスに限られるので注意。
Orchard CMS(ASP.NET/SQL Server)
Microsoft製のオープンソースCMS。各機能がモジュール化されておりインストールや停止・削除が簡単に行えるほか、コンテンツの表示・非表示をレイヤー単位で制御する機能を備えるなど、後発であるためか設計が非常に洗練されている。
プラットフォームはASP.NETで、ビューエンジンには「PHP」よりも簡潔な“Razor”(第4回で解説の予定)が採用されており、.NET開発者にとって親しみやすいのも特長だ。ただし、公開して利用できるのは「IIS」系のホスティングサービスに限られる。
なお、窓の杜編集部ブログにてv1.0のインストール手順を紹介しているので参考にしてほしい(現在のバージョンはv1.2)。
OpenPNE(PHP/MySQL)
SNSを構築するためのWebアプリ。個人で“mixi”のようなWebサイトを運営したい場合に、本ソフトを利用するとよいだろう。
たとえば、オンラインゲームのユーザー交流サイトや、同窓生限定のSNSなどに利用されている場合が多い。
EC-CUBE(PHP/MySQL)
オンラインショップサイト(ECサイト)の構築が可能なCMS。国産のWebアプリとなっており、日本の携帯電話からの閲覧に対応するほか、日本語で書かれた技術情報も豊富で、心強い。
SugarCRM(PHP/MySQL)
オープンソースで開発されている顧客管理ソフト(CRM)。顧客情報のデータベース管理や、顧客へのメール配信、問い合わせメールの処理、商談の管理などが可能になっている。
「WebMatrix」で利用する場合は、日本語化済みの「SugarCRM 日本語版パッケージ」を利用するとよい。
- 「Web PI」「Web Matrix」向けのWebアプリパッケージを作成する
もしオープンソースのWebアプリの開発を管理をしており、“Web Application Gallery”への登録を希望する場合は、登録を申請することも可能。「Web PI」や「Web Matrix」からも簡単に利用できるようになるので、主にWindowsユーザーへのさらなる普及が期待できる。詳しくは以下のWebページを参考にしてほしい。
なお、“Web Application Gallery”への登録にあたり必要となるのは、インストールに必要な情報が記述されたXMLファイルのみで、Webアプリのパッケージ本体を提出する必要はない。
次回はインストールしたWebアプリの公開(発行)に挑戦
今回は、「WebMatrix」を利用したWebアプリのインストール方法と、インストール可能なWebアプリの紹介を行った。実にさまざまなWebアプリを、とても簡単にインストールできることを実感していただけたのではないだろうか。
次回は、今回インストールを行ったブログエンジン「WordPress」をレンタルサーバーにアップロードして、実際に運用するまでの“発行”について解説する。併せて、「WebMatrix」がもつ“検索エンジン最適化(SEO)”機能を利用して、Webサイトを改善する方法についても紹介するので期待してほしい。