特別企画

「EmEditor Professional」v10徹底解説

大幅に強化された“比較”機能をはじめ各所に手が加えられさらなる熟成が進む

(10/07/15)

「EmEditor」v10「EmEditor」v10

 Windows用のテキストエディターといえば数多くのソフトが存在するが、そのなかでも長年にわたりバージョンアップを繰り返し、今や定番テキストエディターと言えるのが「EmEditor Professional」(以下、「EmEditor」)だ。テキストエディターとしての使いやすさと機能の豊富さ、そしてプラグインやマクロにより機能を自由に拡張できる点が特長だ。

 前バージョンとなるv9では、スニペット機能が大幅に強化されたほか、CSV/TSV編集機能、部分編集機能が追加されるなど、主に編集機能の強化が著しかった。

 それに比べると今回のv10は比較的地味ではあるが、テキストエディターとしては欠かすことのできない比較機能の強化、検索ダイアログの細かい使い勝手の改善などが図られている。もちろん、テキストエディターの本分である表示・編集機能もより洗練されている上、新しい機能の追加もなされている。そこで、本特別企画ではv10の新機能および更新点を“比較”“編集”“表示”“検索”の4機能に絞ってご紹介する。

一から書き直された“比較”機能

2つのテキストの比較2つのテキストの比較

 v10でもっとも目を引く変更点は、2つのテキストの比較機能だろう。これまでも比較機能は備えていたものの、サイドバーに表示するタイプのプラグインとして実装されいた。このため機能が限定されており、使い勝手もよくなかった。

 そこで本バージョンでは思い切って比較機能を担当する“Diff”プラグインを廃し、新たに「EmEditor」本体の機能として比較機能が一から新設計されている。

 新しい比較機能は、メインメニューの[比較]項目から利用できる。エディターのウインドウ2つを左右に並べて比較結果を確認できるのが特長で、デスクトップ全体を大きく2分して画面を広く利用ながら比較結果を表示できる。そのため、従来のようにサイドバー内で比較作業を行うよりはるかに閲覧性がよい。

 また、片方のウィンドウをスクロールすると、もう一方のウィンドウも同期してスクロールさせるといった機能も備えているほか、比較作業が終われば元の作業状態へ戻すことも可能。比較対象のテキストで異なる部分を色分け表示する際の色使いも、従来より淡く目に優しくなっている。

比較機能の利用例(動画)

 さらに、分割方法やスクロールの同期の有無、比較作業の速度・精度のバランスなどを細かくカスタマイズすることもできる。カスタマイズといえばとかく複雑なものになりがちだが、[比較]-[オプションを指定して比較]メニューからは、ウィザード形式で手順に従ってわかりやすく設定できるのも心憎い配慮だ。

1. 比較するファイルを選択1. 比較するファイルを選択

2. 比較作業のオプションを指定2. 比較作業のオプションを指定

3. 同期スクロールの設定やエディターの配置方法を選択3. 同期スクロールの設定やエディターの配置方法を選択

4. オプションの保存。[比較]-[***と***を比較]メニューを利用する際に、ウィザードを経由せずに保存したオプションを利用して比較可能になる4. オプションの保存。[比較]-[***と***を比較]メニューを利用する際に、ウィザードを経由せずに保存したオプションを利用して比較可能になる

更なる熟成を重ねた“編集”機能

箱型編集機能の強化、連番挿入機能の追加

 v8から搭載された箱型編集機能は、本ソフトの特徴の1つだろう。[Alt]キーを押しながらマウスドラッグすることで、テキストを矩形選択し、複数行へ同じ文字列を一括挿入するといったことができる機能で、CSV/TSVデータなどの編集に活躍する。

 v10の箱型編集機能では、それがさらに強化。テキストの行末の右のほうで箱型選択を行うと、複数行の末尾へ一気に同じテキストを挿入可能になっている。各行の文字数が異なる場合にも、各行の末尾へ同じテキストを挿入できるというわけだ。

 たとえば、古いHTML文書では、“p”タグや“li”タグの閉じタグが省略されていることが多い。しかし、本機能を利用すれば簡単に閉じタグを一括挿入可能。

複数行の末尾へ一気に同じテキストを挿入可能に(動画)

 また、同じテキストを挿入するシチュエーションだけでなく、連番を挿入したいという状況にも対応するため、本バージョンでは複数行へ連番を一括挿入できる“番号を挿入”機能が追加されている。

“番号を挿入”機能で連番を挿入(動画)

“スペルチェック”機能の搭載

外国語のスペルチェック機能外国語のスペルチェック機能

スペルチェック機能の設定画面スペルチェック機能の設定画面

 そのほか、新機能としては外国語のスペルチェック機能が挙げられる。

 設定画面の[スペル チェック]タブで機能をONにすると、綴りが間違っていると思われる単語の下へ波線が引かれ、右クリックメニューから候補を選択して修正できる仕組みで、日本語の文中に現れる英単語でも正しく利用できる。

 また、ソースコードの記述などで用いられる“CamelCase”も認識可能なのは便利。“CamelCase”とは、“GetDiviceID”“SetButtomText”などといった風に、単語の先頭を大文字で記述して連結し、ひとつの複合語として記述する記法。このような場合でも、“Divice”や“Buttom”といった誤表記を検知して訂正できるので、プログラマーなどに便利だろう。

 なお、標準では英語の辞書が同梱されているが、スペルチェックのエンジンには「OpenOffice.org」や「Firefox」と同じものが用いられている。そのため、これらのソフト用の辞書をダウンロードして利用することも可能。さらに、設定画面ではスペルチェックの適応箇所も細かく制御できる。スペルチェック機能に関するマクロの関数も追加されており、今後どんな補助機能が生まれるか楽しみだ。

“表示”機能も進化、テキストもバイナリも

“アウトライン”プラグインの改良

“アウトライン”プラグイン機能が改良、見出しの内容を正規表現などを使ってカスタマイズ可能に“アウトライン”プラグイン機能が改良、見出しの内容を正規表現などを使ってカスタマイズ可能に

“アウトライン”プラグインの設定画面“アウトライン”プラグインの設定画面

 一定の規則に従い表記された見出しをツリー表示できる“アウトライン”プラグインは、プレーンテキストをわかりやすく構造化できるため、長い文章を書く際には欠かせない機能だ。とくに文章を書くことを生業にする人のなかには、アウトラインの表示にはこだわる人が多いのではないだろうか。

 v10では、この“アウトライン”プラグイン機能が改良されており、アウトライン画面で表示される見出しの内容を正規表現などを使ってカスタマイズできるようになった。これにより、見出し語の識別用に付加された記号などを省いて、見出しをアウトライン画面へ表示するといったことが可能。

 たとえば、HTML文書をアウトライン表示する場合、従来は“<h1>”“<h2>”といったタグまでアウトライン画面へ表示されていた。しかし、新しい“アウトラインプラグイン”を利用すれば、タグを除去できるほか“■”“●”といった好みの記号で置き換えることも可能だ。また、アウトライン上での位置とドキュメント上での位置をリアルタイムに同期する機能も追加されている。

バイナリ表示モードでアスキー表示も可能に

16進数表示の右側にアスキー表示が追加16進数表示の右側にアスキー表示が追加

 また、v8で搭載されたバイナリ表示機能もブラッシュアップされており、v10では16進数表示の右側にアスキー表示が追加された。16進数表示のバイナリエディター部分とアスキー表示部分は連動しており、バイナリエディター部分で編集を行うとアスキー表示部分もリアルタイムで更新される。これでまた一歩、本格的なバイナリエディターに近づいたと言える。

“検索”機能の改善

 そのほか、細かい改善ではあるが検索関連の機能も改善されている。

“検索”ダイアログ

“検索”ダイアログ“検索”ダイアログ

 たとえば、[検索]ダイアログでは[カスタマイズ]ボタンが追加。このボタンを押すと[カスタマイズ]ダイアログの[検索]タブを一発で開くことができる。

 また、“一致する文字列を数える”チェックボックスをONにすると、検索後にステータスバーへ検索文字列と一致した部分を数え上げて表示できるようになる。これまでも、[置換]ダイアログで検索文字列と置換文字列に同じ文字列を指定して置換するといったテクニックで実現できたが、そんな小細工が不要になったのはうれしい。

“ファイルから検索”ダイアログ

“ファイルから検索”ダイアログ“ファイルから検索”ダイアログ

 また、[ファイルから検索]ダイアログでは、“ファイルの種類”欄の右に[>]ボタンが追加された。このボタンを押すとプルダウンリストが現れ、“ファイルの種類”欄へ現在開いているファイルの名前や拡張子を簡単に入力できるようになっている。

最後に

 以上、「EmEditor」v10の新機能をご紹介してきたがいかがであっただろうか。今回のバージョンは新しく追加された機能が比較的少なかったが、それでもこれまでのバージョンで不満に感じられた部分が確実に解消されているのがわかる。これを機会に、もっとも完成されたテキストエディターの1つである本ソフトに触れてみてほしい。

 なお、「EmEditor」には30日試用可能な体験版が用意されているが、v10より試用制限に関して若干の変更が行われているので注意。連続して利用できる時間が30分に制限されており、制限時間が過ぎるとエディターが終了する。再起動を行えばカウンターはリセットされ、また30分間試用できる仕組み。テキストの編集中でも終了してしまう場合があるが、本ソフトのリストア機能により、再起動時に編集内容は復元されるので安心してほしい。

【著作権者】
Emurasoft, Inc.
【対応OS】
Windows 2000/XP/Server 2003/Vista/Server 2008/7/XP x64/Server 2003 x64/Vista x64/Server 2008 x64/7 x64
【ソフト種別】
ダウンロード販売 4,200円(税込み)
【バージョン】
10.0.0(10/07/01)

(柳 英俊)